近年、情報機器の急速な発展やスマートシティ、自動運転車に代表されるIoTの推進により多種多様な高機能機器が増加し、それら部品の小型・高性能化が進んでいる。
そして、確かな「ものづくり」による部品の長寿命化と品質の維持が重要な鍵となっている。そのような状況下、部品の微小な変動事象を捉える必要性が増している。
熱解析においても熱変動が速く、表面積が小さくなった部品の温度計測は従来機器では難しく、「極小エリアの温度を非接触で高精度に計測したい」というニーズが高まっている。
赤外線サーモグラフィカメラ(以下、サーモカメラ)は、対象物から離れたところから非接触で、温度分布をリアルタイムに画像表示し可視化できるため、特定箇所の発熱測定だけでなく、発熱源近隣部品の熱影響や蓄熱を捉えることが可能である。
本稿では、微小で熱変動の速い部品の温度計測が可能なサーモカメラ「R550Pro」を紹介する。
サーモカメラのサンプリング速度
サーモカメラには、冷却型と非冷却型がある。冷却型は超高速(数百キロHz以上)での温度計測が可能であるが高額で質量が重い(3kg以上)。
また、冷却器のメンテナンスに費用や時間がかかる。これに対し非冷却型の製品価格は1/4程度であり、また冷却器が不要のためメンテナンスフリーで保守費用もかからない。
さらに、質量が軽く(1.5kg以下)、持ち運んで簡単に撮影することが可能である一方、サンプリング速度は劣る。
非冷却カメラのサンプリング速度は、VGA(640×480 画素)で 30Hz、QVGA(320×240 画素)で60Hzである(当社従来機)。小型電子部品は熱変動が速く、非冷却型サーモカメラではその現象を捉えることが難しくなってきている。
ポータブル機VGAクラスで120Hzを実現
2018年8月に発表した「R550Pro」(写真1)は、非冷却型ポータブル機としてクラス最速の120Hzサンプリングを実現したサーモカメラである。これまで高価格な冷却型ハイスペック機でしか捉えられなかった高速な熱変動を観測することができる。
主な特長
1)120Hzサンプリングで瞬間の温度変化を計測
ポータブル機で最速となる120Hzサンプリングを実現したことで、以下事象の確認・解析を可能にする。
・小型デバイスの高速熱変動
・デバイス過負荷試験における温度評価・解析
・ レーザ溶接や抵抗溶接時のスパッタ挙動確認(写真2)および近隣への熱影響解析
2)120万画素の高解像度により欠陥検出率が向上
640(H)×480(V)画素で0.025℃(at30℃、S/N改善時)の温度分解能を実現。僅かな温度差が鮮明となり、非破壊検査における欠陥検出確度を高めた。
また、複数枚超解像処理による最大120万画素(1,280×960画素)の高解像度により、微小デバイスを搭載した基板の温度分布をより細かに撮影することができる。
さらに、500万画素の可視画像と熱画像の比較を容易にする合成モードを標準装備し、研究成果発表や報告書の作成に役立つ(写真3)。
3)外部トリガーによるパソコンへの自動動画記録機能搭載
本体に外部トリガー信号を入力することで、PCの解析ソフトウェアが自動的に記録を開始。I/O機器を使わずにシステム構成できるため、より簡単に試験装置や現場設備と連動したデータの収録ができる。金型監視をはじめとする製造ラインの温度監視に貢献する(図1)。
4)豊富なレンズオプション
2倍望遠レンズ、2倍視野拡大レンズ、3倍視野拡大レンズ、21μm近接拡大レンズ、52μm近接拡大レンズをラインナップしており、遠方の温度監視から微小部品の熱解析まで幅広い分野・製品に対応する(写真4)。
おわりに
本稿では、非冷却型ポータブル機で120Hzの高速サンプリングが可能なサーモカメラ「R550Pro」を紹介した。これまで冷却型ハイスペック機でしか捉えられなかった高速な熱変動の計測がリーズナブルに実現できる。
当社は今後も見えなかった領域の可視化拡大を追求し、安心・安全で確かな“ものづくり”に貢献していく所存である。
■問い合わせ
日本アビオニクス株式会社
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