短波長赤外センサを用いた
ハイパースペクトルカメラの紹介

昨今のマシンビジョンでは、可視光外の領域をビジュアル化し、目的物の化学情報を得ることによって対象物の選別を行う方法が徐々に浸透しつつある。これはセンサのカバーする波長領域が年々広くなり、さらに魅力的な価格帯になっているからである。

その中でも1,000nm以上をカバーする短波長赤外(Short-Wavelength InfraRed:以下、SWIR)センサの発展は著しく、マシンビジョン用カメラに搭載されるセンサの選択肢も広がっている。

当社は去年InGaAs(Indium Gallium Arsenide:インジウムガリウムヒ化物)センサを使ったプリズム式2板ラインスキャンカメラを製品化した。本稿では、ハイパースペクトルの簡単な説明および、弊社SWIRラインスキャンカメラの適用事例を紹介する。

ハイパースペクトルカメラとは?

図1はマルチチャネルカメラの技術推移だが、右側に行くにつれ、波長方向の分解能および広い波長帯域をカバーする。

図1 波長分解能とその通称

一番右側に位置するグラフが本来のハイパースペクトルの定義になるが、昨今ではチャネル分解能とは無関係に長波長(図2)をビジュアル化する手段をハイパースペクトルイメージングと呼ばれることが多い。本稿では後者の定義を用いる。

図2 従来センサとハイパースペクトル領域

なぜハイパースペクトル?

図3は米、米に付着する幼虫、および木片群だが、通常のRGB画像だとその違いを見分けるのが難しい。

図3 米、害虫、および木片

そこで1,150nm近辺、1,400nm近辺に着目すると、それぞれで光の吸収度の違いがあり、得られるスペクトルグラフにも違いが出る(図4)。

図4 各物質のスペクトル

この画像を、あらかじめ用意したLookUp Tableを利用し、スペクトルごとに色付けして違いがわかるようにするのがハイパースペクトルイメージングである(図5)。

図5 図3のスペクトル分解イメージ

時代は1,000nm以上に

図2にあるとおり、従来のCCDおよびCMOSセンサは可視光+αの領域をカバーしていた。しかし先の例のように、1,000nm以上になると別材料のセンサが必要になってくる。

昨今は非常に多彩なセンサが紹介されているが、弊社ではCMOS、CCDの延長線上に位置するInGaAs材質を採用した。InGaAsは理論的に1,000~2,500nmあたりまで感度がある化合物で、およそ900nmあたりまでカバーするCCD、CMOSカメラと併用または置き換えするのには最適である。

また、昨今では浜松ホトニクス社のようにInGaAs材質の光学素子に加えて読み出し部分をシリコンで構成する「ハイブリッド」センサも登場し、マシンビジョンのアプリケーション(高画素数、高スピード)にも十分有用になっている。

JAI「WA-1000D-CL」

弊社製SWIRラインスキャンカメラ、WA-1000D-CL(図6)を紹介する。

図6 WA-1000D-CL

詳細は表1にあるとおりだが、主な特長として次が挙げられる。

• プリズム分光による2ch構成
• 1,024画素(高画素)
• 高感度
• ハイスピードスキャニング(39kHz/ライン)
• 広カバー帯域(図7

表1 主な仕様

図7 WA-1000Dの分光特性

ハイパースペクトラルカメラ ブロック図

アプリケーション例

有機物と無機物を区別したい場合、化学基に着目する。OH(H 2 Oの一部)、CH、NHなどの化学基は1,400nm近辺の光を吸収するため、WA-1000Dのセカンドチャンネルで観察すると暗くなることがわかる(図8)。

図8 WA-1000Dのアプリケーション例(その1)

一方、従来の900nmあたりの画像だと判別しづらい。 また、砂糖、塩などはよく使われる応用例だが、WA-1000Dのファーストチャンネル(1,200nm近辺)とセカンドチャンネル(1,450nm近辺)の画像データを差引することによってよりクリアな違いが観察できる(図9)。 

図9 WA-1000Dのアプリケーション例(その2

このようにJAI製SWIRラインスキャンカメラWA-1000Dは900~1,700nmに高感度をもつチャンネルを2つ有することにより、より多くのアプリケーションに対応することが可能になっている。

※映像情報インダストリアル2017年2月号より転載

問い合わせ
株式会社ジェイエイアイコーポレーション
TEL:045-440-0154
http://www.jai.com/

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