プリズム分光を用いた近赤外線から短波赤外線における画像応用

株式会社ブルービジョン(以下、当社)は、プリズム分光を用いた400nmから1900nmの特殊波長カメラならびに専用レンズの製造販売を行っている。

赤外線の特長は、可視光に比較して波長が長いので、被写体の内部まで見えることがある、また特定波長において光の吸収帯をもっていることを利用できる。

たとえば、1450nm付近で物体のもっている水分の吸収量が検査できる、波長帯域が広いので分光イメージングに適した分光波長を選択できる等の特徴をもっている。

本稿では、可視光から1,900nmのSWIR波長帯域(短波赤外線)に有用な入力装置である、分光カメラを紹介する。

開発の経緯

産業分野、特に、印刷検査、ウェブ検査、リサイクリング、農作物検査、薬品検査市場等において、波長に対する被写体の振る舞いを利用して検査を行う、プリズム分光カメラ市場は大きな成長が期待できる。

たとえば、果物の糖度を910nmで評価したり、水分量を1,450nmで評価することが分子分光学の領域であり、画像化することが分光イメージングである。

当社では、もっているプリズム分光カメラ技術を用い、可視域からSWIR(短波赤外線)域をカバーする3機種を開発製造している。

BV-C8220CLは、可視域からNIR(近赤外線)をカバーし、製品の梱包状態検査、異物検出等に使用されている。BV-C3500は、可視光からSWIR光をカバーし、リサイクリング、農作物検査等に使用されている。

BV-C3210は、SWIR域である900nm~1,900nmをカバーし、水分の定量評価、農作物検査等に使用されている。

プリズム分光カメラ

プリズム分光カメラとは、異なった形状のプリズムに多層膜コーティングを行い、個々のプリズムを接着して1個のプリズムクラスタとして使用することである。

プリズムの接着面では波長分離を行い、異なった波長情報をそれぞれのセンサに結像する技術である。図1は、BV-C8220CLの原理図である。

図1 BV-C8220CLの分光原理図

被写体から反射した光線は、レンズを介してプリズムに入射し、可視光とNIRに分離する。可視光は、BAYERセンサに入射し、RGB画像を得る。NIR光は、モノクロセンサに入射し、NIR画像を得る。

図2は、プリズムに入射した光線を3波長領域に分離する場合の構成例であり、当社では、すべての工程を内製化しているので、少量多品種の対応が可能である。

図2 3波長に分離する構成

プリズム分光カメラの優位点は、以下のとおりである。

・測定したい波長を自由に設定できるので、S/N比の良い解析ができる
―センサではなく、プリズムにて波長を決定できる。

・複数の異なった波長の振る舞いを同時に撮像できるので、波長に依存した画像解析が容易にできる。

・Co-site sampling
―1個のレンズにて、複数のセンサを用い、複数の波長画像を取得できる。

・波長単位でセンサを個々に使用するので、原理的にダイナミックレンジの高い信号が得られる。

プリズム分光の応用例として、波長に依存する被写体と依存しない被写体の画像をS/N良く取得できることがある。図3は、1,200nmと1,450nmの画像を同時に取得して、減算画像を得ている例である。

図3 差分画像による水分の検出

1,450nmと1,200nmでは、水分がある場所の吸収率が異なる。反面、背景の画像は波長に依存していない。これを応用して、差分画像を得ると水分のある場所が、S/N良く特定できる。

表1は、プリズム分光を用いた、2波長カメラ3機種の概要である。本製品は、可視光から1,900nmをカバーするために、2種類のラインセンサを用いている。

表1

図4は、BV-C3500の外観図、図5は可視光用センサ、図6はSWIR用センサの分光特性である。当社では、ユーザが使用する、任意の波長撮像のカスタマイズを行っている。

図4 BV-C3500外観

図5 可視光センサの分光特性

図6 SWIRセンサの分光特性

分光画像事例

図7は、BV-C8220CLの撮像例である。反射光で可視光の撮像を行い、表面検査を行っている。また、NIRによる透過光で透視画像を取得し、内部構造に問題が無いか検査を行っている。

図7 BV-C8220CL撮像例

図8は、BV-C3500を用い、スライスされた牛肉を撮像した例である。可視光による表面反射画像にて表面検査を行い、SWIR透過光によって牛肉の内部構造検査ができる。

図8 BV-C3500撮像例

図9は、BV-C3210CLの撮像例である。可視光では両方白い錠剤で分別が困難であるが、1200nmと1450nmのSWIRを使用することにより、大きな信号差として検出を可能にしている。

図9 BV-C3210撮像例
左上:加算画像 右下:減算画像
左下:1,200nm画像 右上:1,450nm画像

左側の錠剤は、1200nmで反射率が高く、1450nmで反射率が低い特長を持っており、2個の錠剤を1450nmで校正すると、減算処理画像の1200nmにて大きな信号値の差となって検出でき、測定が容易になる。

波長可変型光源

本製品は、ハロゲン光源から導かれた光線の波長選択を行い400nm~2,400nmの任意波長を出力するので、分光イメージング用光源として使用できる。

分光イメージングシステムは、物質がもっている、光に対する反応(すなわち任意の波長における物質からの反射光、透過光、吸収光の違い)を計測することである。

製品化目的は、分光イメージングシステム導入時にどの波長が最も特徴抽出に適しているか目処をつけるための光源として製品化された。製品として、3機種をもっている(表2)。

表2
※ ご提案:波長を固定した光源としても受注可能である。

図10が、本製品のシステム概念図と外観である。波長選択のキー部品としてLVF(Linear VariableFilter)を使用し、光が透過する物理的な位置の違いによって透過波長が変化することを利用している。

図10 システム概念図

図11は、LVFと透過光の波長の概念図である。

図11 LVFと波長の概念図

おわりに

印刷物検査、食品検査、分光検査、薬品検査のように可視光からSWIR帯域における波長分析が必要な市場はこれから拡大していくと考える。

当社では、プリズム分光技術を用い、複数の波長画像を1台のカメラで同時撮像ができる、特殊波長カメラに特化した製品開発およびプリズムカメラ用レンズを準備し、検査装置の入力部に特化した製品のラインナップを拡大していく所存である。

※映像情報インダストリアル2019年7・8月号より転載

製品に関する問い合わせ
株式会社ブルービジョン
TEL:045-471-4595
E-mail:sales@bluevision.jp
http://www.bluevision.jp/

販売に関する問い合わせ
ダイトロン株式会社
TEL:03-3264-0326
E-mail:camera-info@daitron.co.jp
http://www.daitron.co.jp/

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