赤外線カメラ、 ハイパースペクトル・カメラ
―赤外線イメージングのカメラ2種の特長と適用例―

赤外線イメージングのカメラ2種、赤外線カメラとハイパースペクトル・カメラについて、その特長と適用例を紹介する。

赤外線カメラは、Allied Vision製SWIRカメラGoldeyeシリーズが、センサの冷却機能とセンサの画素欠損がきわめて少ないことにより低ノイズの高画質画像を得る点で大変優れていることを適用例とともに紹介する。

ハイパースペクトル・カメラは、通常の赤外線カメラやカラーカメラでは検出困難な微妙な色の差異を感度良く検出する用途、あるいは、赤外域を用いることにより素材の差異を感度良く検出する用途があることを、SPECIM製ハイパースペクトル・カメラを紹介するなかで適用例をもって示す。

はじめに

「赤外線」の用語は、赤外線放射(infrared radiation)あるいは赤外光(infrared light)として使われ、英語のinfraredが対応する。

赤外線放射あるいは赤外光は、電磁輻射あるいは電磁波の一種であり、可視光(400~700 nm波長域)と電波(radio wave:1mmより長波長域)の間の波長域(700nm~100万nm:1mm)の電磁輻射または電磁波である。

「赤外線イメージング」とは、赤外線(あるいは赤外線放射)をセンサで捉えて対象物の像を得ることであるが、方式の違いによりさまざまなものが商品化され、各種応用分野で活用されている。

本稿では、赤外線イメージングのカメラとして、デルフトハイテック株式会社の取扱商品中から、赤外線カメラとハイパースペクトル・カメラの2種をその有効性、適用例とともに紹介する。

具体的には、赤外線カメラとしてドイツAllied Vision製GoldeyeシリーズのSWIRカメラを紹介し、次いで、フィンランドSPECIM製ハイパースペクトル・カメラを各種紹介する。

赤外線カメラ

赤外線カメラは、赤外線(700nm~100 万 nm:1mm)のいずれかの波長域に感度をもち、濃淡モノクローム画像を出力するカメラである。

本稿で紹介するドイツAllied Vision製SWIRカメラは、感度波長域950~1,700nmのInGaAs(インジウム・ガリウム・砒素)センサにより、被写体を単一色の濃淡モノクローム画像で捉える赤外線カメラである。

低ノイズ・高品質画像が得られることで定評のあるGoldeyeシリーズとして数機種が販売されており、外観とスペクトル感度は、たとえば、Goldeye G-033 TECless、Goldeye G-008 Cool TEC1の2機種について図1、2に示すものとなっている。

図1 赤外線カメラAllied Vision製Goldeyeシリーズのカメラ(外観

図2 赤外線カメラAllied Vision製Goldeyeシリーズのカメラ(スペクトル感度)

このカメラは、950~1,700nm波長域で透明もしくは半透明の物質、たとえばシリコン素材を透過して画像化するアプリケーションなどで活用されている。

実際、シリコン基板の内部クラック(割れ、ひび)の顕微鏡検査においてクラック検出に使われている(図3、4:Radiant Optronics社提供写真。付記説明はデルフトハイテック株式会社による)。

図3 シリコン基板の顕微鏡検査(外観)

図4 シリコン基板中のクラック検出画像

赤外線カメラは、通常、センサの画像ノイズが大きく、そのため、画像ノイズ低減に冷却が効果的で一般によく用いられる。Allied Vision製GoldeyeシリーズのSWIRカメラでは、熱電対による冷却器(Thermo-Electric Cooler:TECと略記)を採用している。

2種類の金属あるいは半導体を接合した熱電対に電流を流すと、熱電対の一端の接合部に吸熱が、他端に発熱が生じる。この現象をペルチエ効果と呼ぶ。ペルチエ効果では、吸熱により冷却が可能となる一方で発熱も生じるので、発熱への対処が技術課題となる。

Allied Vision社ではSWIRカメラの製造経験が長く、センサの発熱マネジメント技術、機構技術によりこの発熱を適切に処理し、ファンレス、小型、低電力で低ノイズの高画質カメラを実現している。

Allied Vision製Goldeye G-033には、冷却器を備えたタイプ(Goldeye G-033 TEC1)のほかに、冷却器なしのタイプ(Goldeye G-033 TECless)もある。

いずれもファンレスのため機械振動部分がなく、機械振動が望ましくない顕微鏡検査等で活用できるなどその適用可能領域を広げている。

Allied Vision社では、画素欠損のきわめて少ないInGaAsセンサを採用しており、GoldeyeシリーズSWIRカメラの高画質の品質を維持しており、品揃えも豊富である。

ハイパースペクトル・カメラ

ハイパースペクトル・カメラは、被写体の各点から出た光(透過光や反射光)を分光してセンサ面で捉える構造となっており、分光方向に並ぶセンサのピクセルごとに異なる波長の光を捉え、それら各波長の光の強度に従って複数(多数)センサ出力をする(図5)。

図5 ハイパースペクトル・カメラの基本構造
実際には、これにスキャナ(走査系)を付加して空間軸 2次元・
波長軸1次元の3次元データであるハイパースペクトルデータ
を得る。

そのため、ハイパースペクトル・カメラでは、たとえば、被写体上の隣接する2点から異なる波長(たとえばλ1とλ2)の光が出た場合、それら2点をそれぞれ異なるセンサで捉えて出力し、それら2点からの光を波長が異なるものとして明確に区別/弁別できる。

すなわち、ハイパースペクトル・カメラは、波長の差異を区別/弁別する能力(波長分解能)を有する。対して、単一のスペクトル感度をもつモノクロームカメラである赤外線カメラでは、波長の差異は区別できない。

波長域の異なる複数センサをもつマルチスペクトル・カメラでは、ある程度の波長分解能を有するとはいえ、詳細な波長の差異の区別/弁別は困難である場合も多くあり、ハイパースペクトル・カメラが波長分解能の点ではるかに優れている(図6)。

図6 ハイパースペクトル・カメラの特長―波長弁別/識別能力が高い

波長分解能が高いと、被写体からの光の微妙なスペクトル波形の差異を区別/識別する能力が高くなる。図7は、キュウリの葉の病変部分を葉緑素の減少を捉えて黒い斑点として画像化した例である 1)

図7 ハイパースペクトル・カメラの活用例
スペクトル分布の差異を検出。それを数量化して濃淡画像化して示している。

図7 右上のグラフの一番上のスペクトル波形が健康な葉の葉緑素のスペクトルであり、下方のスペクトル波形が葉緑素の減少した部分の葉のスペクトルである。

葉緑素の減少度合いはスペクトル波形の微妙な差異としてしか現れない。波長分解能の高いハイパースペクトル・カメラでは、そのような微妙なスペクトル波形の差異を捉える画像データが得られる。

ハイパースペクトル・カメラを採用するにあたっては、目的とする用途・応用において適切な感度波長域のカメラを採用することが肝要である。フィンランドSPECIM社では、感度波長域の異なるハイパースペクトル・カメラを各種取り揃えている。

たとえば、感度波長域400~1,000nmのSpecim IQ, Specim FX10、感度波長域900~1,700nmのSpecim FX17、および、感度波長域2.7~5.3μmのSpecim FX50(新製品)である(図8)。

図8 ハイパースペクトル・カメラの感度波長域の異なる各種製品群

感度波長域400~1,000nmのハイパースペクトル・カメラは、人の可視域400~700nmを含み、人やカラーカメラでは微妙な色味の差異として区別/識別し難い識別対象物の識別に適しているといえる。

たとえば、植物の葉にストレスにより蓄積する赤色色素の検出において、人の眼やカラーカメラでは、3種類の互いに感度波長域の重なり合うセンサで受光するため(図6のマルチスペクトル・カメラと同様)、健康な葉の緑色の光とストレスによる赤色色素の赤色の光が混ざり合い赤色色素が検出し難いのに対し、ハイパースペクトル・カメラでは、波長分解能が高く色味の混ざり合いを避けて赤色色素を感度良く検出することができる(図9:Specim IQによる検出例)。

図9 ハイパースペクトル・カメラの特長
カラーカメラや人の眼で見分け難いスペクトルの差異を検出して可視化する。

感度波長域400~1,000nmのハイパースペクトル・カメラは、可視域に加えて700~1,000nmの赤外域に感度をもつことから、その感度域で対象物表面の素材の違い(差異)を検出できる場合がある。

たとえば、造り物のリンゴと生のリンゴとではその表面素材が全く異なるが、人の眼やカラーカメラで見る限り見分けがつかないが、700~1,000nmの赤外域で素材の差異を捉えて画像化(疑似カラー画像化)可能である。

図10は、ハイパースペクトル・カメラSpecim IQで撮影して得たハイパースペクトル・データをパソコン上の分析ソフトウェア(IQ Studio:Specim IQに付属する)により簡易分析して造り物と本物のリンゴを区別して疑似カラー表示した例である。

図10 ハイパースペクトル・カメラの特長
カラーカメラや人の眼で見分け難いスペクトルの差異を検出して可視化する。

一般の赤外線カメラでも700~1,000nmに感度をもつカメラを使うなら素材の差異を反映する光のスペクトルを捉えられるかもしれないが、可視域における赤色、緑色のリンゴの色の区別も同時に行うことなど、ハイパースペクトル・カメラの方が撮影により得るハイパースペクトル・データのデータ量が格段に多く、スペクトル・データを分析できる点で優位性がある。

Specim FX50は、感度波長域2.7~5.3μmのハイパースペクトル・カメラであり、その感度波長域にスペクトル特徴をもつ素材の検出用途である。

たとえば、黒色プラスチックの選別用途に可能性がある。実際、黒色プラスチックをハイパースペクトル・カメラで撮影して得たハイパースペクトル・データを分析して、黒色プラスチックの選別への活用可能性を示した実験例がある。

図11は、黒色プラスチックを撮影したハイパースペクトル・データを3.2~3.6μm波長域について、スペクトル波形の差異を感度良く検出する主成分分析を施し第1主成分と第2主成分をxy座標として、撮影画像の各画素点のスペクトルが実際のプラスチック素材の種別ごとにどのように分布するかを示したものである 2)

プラスチック素材の種別に依存して第1主成分、第2主成分の各値(各量)が、ある程度分離されており、黒色プラスチック選別の可能性を示している。

図11 ハイパースペクトルの黒色プラスチック選別への活用可能性
(文献 2)Fig.6のグラフから引用

まとめ

赤外線カメラとハイパースペクトル・カメラの2種を、その有効性、適用例とともに紹介した。

具体的には、赤外線カメラとしてドイツAllied Vision製GoldeyeシリーズのSWIRカメラ(Goldeye G-033,Goldeye G-008)をその特長、適用例とともに紹介し、次いで、フィンランドSPECIM製ハイパースペクトル・カメラ(Specim IQ, Specim FX10, Specim FX17,Specim FX50)をその特長、適用例とともに紹介した。

Allied Vision製SWIRカメラは、感度波長域950~1,700nmで被写体を単一色の濃淡モノクローム画像で捉える赤外線カメラである。可視域400~700nmでは不透明な物質を透過して画像を得る特長を活かしてシリコン素材の検査に使われている例を紹介した。

Allied Vision製SWIRカメラGoldeyeシリーズは、センサの冷却機能とセンサの画素欠損がきわめて少なくノイズの少ない高画質を得る点で大変優れており、ファンレス、小型、低電力の高画質カメラを実現して、シリコン素材検査用途等、広く世界中で使われている。

SPECIM製ハイパースペクトル・カメラは、赤外の長波長域のものまで各種取り揃えている。

400~1,000nm感度波長域のもの(Specim IQおよびSpecim FX10)では、可視域において人の眼やカラーカメラで見分けづらい微妙な色の差異をより高感度に検出できる場合があること、赤外域700~1,000nmも含むことからその波長域にスペクトル特徴をもつ素材の検出が可能であることを示した。

赤外域2.7~5.3μmに感度をもつSpecim FX50の紹介においては、黒色プラスチックの選別への活用可能性を示す実験例を紹介した。現場の用途により良く適合するカメラの導入をご検討中の方に参考にしていただければ幸いである。

参考文献
1) Yan-Ru Zhao, Xiaoli Li, Ke-Qiang Yu, Fan Cheng, Yong He:Hyperspectral Imaging for Determining Pigment Contents in Cucumber Leaves in Response to Angular Leaf Spot Disease, Scientific Reports, Volume 6, id. 27790, 2016.

2) Wolfgang Becker, Kerstin Sachsenheimer and Melanie Klemenz:Detection of Black Plastics in the Middle Infrared Spectrum (MIR) Using Photon Up-Conversion Technique for Polymer Recycling Purposes, Polymers 9, 435, 2017.

※ 詳細な情報は、弊社ホームページ(www.dht.co.jp)またはメーカ・ホームページ(www.specim.fi)を参照いただきたい。弊社直接のお問合せも歓迎いたします。

※ ハイパースペクトル・カメラのデータ分析ソフトウェアには,Specim IQ付属のIQ Studio のほかに、ソフトウェア単体で販売されるスウェーデンPrediktera製 EVINCE, BREEZE, オランダperClass製 PerClass Miraがある。いずれもデルフトハイテック株式会社の取扱商品としてお問合せに応じている。

※映像情報インダストリアル2019年7・8月号より転載

■問い合わせ
デルフトハイテック株式会社
TEL.044-455-0251
E-mail:sales@dht.co.jp
http://www.dht.co.jp/

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