CameraLink PoCL/PoCL-Lite 規格

CameraLink とは、産業用カメラが撮像した映像信号を、画像処理用のフレームグラバボードなどに伝送するためのデジタルインタフェイス規格の1つで、2000 年 10 月に アメリカの産業用画像機器分野の標準化団体である AIA(Automated Imaging Association)により策定された。

CameraLink は、その手軽さと、デジタルインタフェイスの中では高いデータ転送能力をもつという特徴から、現在も根強く支持されており、1本のケーブルで電源給電も 可能とした PoCL(Power over Camera Link)や、PoCL のコンセプトを引き継ぎ、カメラの小型化をねらいとした PoCL-Lite といった規格に発展している。本稿では、CameraLink および、その派生の PoCL、PoCL-Lite 規格について紹介する。

1. CameraLink 規格の概要

CameraLink規格の構成を図1に示す。規格構成としては、大きく信号伝送部とコネクタ、ケーブル部に分けることができる。項目に各構成の詳細を示す。


図1 CameraLink 規格の構成

1.1 信号伝送部

1.1.1 映像信号
映像信号のデータ転送には、アメリカのNational Semiconductor社がフラットパネルディスプレイ向けに開発したChannelLinkという技術を採用している。

ChannelLinkとは、7:1のシリアライザ(Serializer)と、1:7のデシリアライザ(Deserializer)の組み合わせで構成される(このようにパラレル-シリアル変換、シリアル-パラレル変換を行うデバイスをSerializer、Deserializerの頭を取ってSerDesと呼ぶ)。シリアライズされた信号の伝送には、LVDSを使用している。ChannelLinkのデータ転送のイメージを図2に示す。


図 2 ChannelLinkのデータ転送イメージ

CameraLinkでは、一般的に、ChannelLink SerDesが4回路入ったチップセットを使用する。したがって、ワンチップで7×4=28ビットのデータを1クロックで転送できることになる。

CameraLinkでは、このうち24ビットを映像信号データ、残り3ビットを映像信号のアクティブ信号、1ビットをスペアに割り当てている。映像信号データは8ビットごとにPortという単位で区切られており、モノクロ8ビットやRGB24ビットなど、各種映像フォーマットに対応するPortのアサインが標準化されている。

1.1.2 制御信号
CameraLinkでは、フレームグラバボードからカメラをコントロールするための制御線を4組用意している。信号の伝送にはLVDSを使用している。制御線の用途は規定されていないが、主に、ランダムシャッタトリガなどのリアルタイム性が要求される制御用に使用されることが多い。

1.1.3 通信信号
CameraLinkでは、フレームグラバボードとカメラ間で、双方向の非同期通信(UART)を行うための通信線を2本用意しており、全2重の通信が可能である。ただし、規格で要求しているミニマムの通信速度が9,600bpsと、近年のシリアルインタフェイスとしては遅いため、短時間に多くの通信を行いたいアプリケーションでは、通信速度がネックとなる可能性がある。

1.1.4 ビット幅の拡張
前述の映像信号部、制御信号部、通信信号部より、CameraLinkの信号伝送部が構成されるが、CameraLinkでは、ChannelLinkのチップセットを追加することにより、映像信号のビット幅を拡張することができるようになっている。

基本となる構成は、チップセット1つを使用するBase Configuration。2つ使う構成をMedium Configuration。3つ使う構成をFull Configurationと呼ぶ。表1にそれぞれの構成における映像信号ビット幅、および最大転送帯域を示す(映像転送帯域は映像信号クロックを85MHzとして算出している)。


表1 Configurationと映像転送帯域

1.2 コネクタ、ケーブル部

1.2.1 コネクタ
コネクタは26ピンのコネクタを採用している。形状は、スタンダードと呼ばれるMDRコネクタ(住友3M社)と、形状を小型化したミニチュア(MiniCL)と呼ばれるSDRコネクタ(住友3M社)、HDRコネクタ(本多通信工業社)が採用されている。それぞれのピンに対する信号線のアサインは標準化されており、カメラ側、フレームグラバ側ともにどちらの形状のコネクタを採用してもよいことになっている。

1.2.2 ケーブル
CameraLinkのケーブルは、LVDS伝送用の11本のツイストペア線と4本のドレイン線で構成される。伝送する信号のクロックレートは最大で600MHz近くになるため、ケーブルのスキューやクロストークなどの特性については厳しい要求が課されている。

ケーブル長としては、最大10mまで延ばせることになっているが、伝送する信号のクロックレートが速くなると、ケーブルスキューや信号の減衰が信号伝送上の問題となってくるケースがある。伝送特性は、コネクタの形状による差異はなく、ケーブルの構造や長さにより決まってくるため、ケーブル選定の際には注意が必要である。

2. PoCL 規格の概要

従来のCameraLink規格では、カメラ用の電源ケーブルと信号伝送用のケーブルを別に用意する必要があるため、少なくとも2本のケーブルがカメラに接続されることになる(図3)。これにより、システムに組み込む際の配線が煩雑となり、カメラの小型化の障害となることがある。


図 3 従来のCameraLinkシステム構成

PoCL規格では、従来のCameraLinkでGND線として使用していた4本のドレイン線のうち、2本をフレームグラバボードからカメラへの電源供給線として利用することにより、1本のケーブル接続でシステム構築できるようになる(図4)。

PoCL規格は、従来のCameraLink規格の機器と混在しても問題が生じないよう、電源供給線のアサインのほかにいくつかのルールが取り決められた。


図 4 PoCLシステム構成

2.1 カメラへの要求
• 消費電力
カメラの消費電力が増大すると、フレームグラバボード間とのGNDオフセットが生じ、信号伝送に影響を与えるため、カメラの消費電力は4W以下とした。

• 入力インピーダンス
フレームグラバボードがカメラに電源を供給する前に、PoCL機器か従来機器であるかを識別できるよう、カメラ電源の入力インピーダンスを規定した。

• ラベル
PoCL機器にはPoCL機器である旨を示すため、本体にPoCLロゴないし、“PoCL”というテキスト表示を行うこと。

2.2 フレームグラバボードへの要求
• 保護回路
PoCL機器に従来機器が接続されると、電源線が短絡されてしまうため、このような事態が起きてもシステムが故障に至らないよう、保護回路を設けること。

• 検出回路(オプション)
検出回路を設けることにより、接続されたカメラがPoCL機器か従来機器であるかを識別することができる。

• 電源フィルタ
カメラへの電源供給線にはノイズ除去のためのフィルタを入れること。

• ラベル
カメラと同様に表示を行うこと。

• 誤接続アラーム(推奨)
誤接続を検出した場合、何かしらの手段でユーザに通知することを推奨とする。

2.3 ケーブルへの要求
• ドレイン線
4本のドレイン線を絶縁処理すること。ドレイン線の抵抗値はGNDオフセットに影響するため、PoCLケーブルは従来ケーブルに比べ、抵抗値を低く抑える必要がある。

• ラベル
カメラと同様に表示を行うこと。

3. PoCL-Lite 規格の概要

これまでのCameraLink規格、PoCL規格では、たとえモノクロ8ビット出力のカメラでも26ピンのコネクタを使用する必要があり、さらなるカメラの小型化やケーブルの細径化は困難であった。

PoCL-Lite規格では、24ビット割り振られていた映像信号のビット幅を10ビットに、カメラコントロールの制御線を4組から1組に減らし、さらに、カメラからフレームグラバボードへの通信線を映像信号ラインと多重化することで、14ピンのコネクタを採用することが可能になった(図5)(表2)。


図 5 コネクタ小型化によるメリット


表 2 CameraLink/PoCLとPoCL-Liteの比較

一方でPoCL-Lite規格は、信号線を減らしたことにより、CameraLink、PoCLとの信号アサインメントに互換性がない。

規格としては、14ピン、26ピンのコネクタいずれを使用してもよいことになっているが、26ピンのコネクタを使用する場合、従来のCameraLink、PoCLシステムとの混在に注意する必要がある。表3にPoCLとPoCL-Liteシステムが混在した場合の動作について示す。


表 3 PoCLとPoCL-Liteシステム混在時の動作

4. CameraLink 規格の入手方法

それぞれの概要について紹介してきたが、正規のCameraLink規格書は、規格のオーナーであるAIAのホームページ(http://www.machinevisiononline.org)より購入することができる。価格は、AIAに加入しているメンバーは$50。AIAに加入していないメンバーは$75であるが、現在、規格書の無償公開化について検討が行われている(2011年11月現在)。

※「まるまる!マシンビジョンカメラ入門 ~ゼロから学ぶ“基礎の基礎”~」より転載

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