ARM+FPGA エンベッディッドビジョンシステム

Vision Components社の最新のスマートカメラはARMプロセッサとFPGAを組み合わせたZynqモジュールを標準で搭載している。

システムオンチップに内蔵されたFPGAにプログラミングを行うことにより、画像処理速度を大幅に高速化することが可能である。ZynqモジュールのSOC技術により、最大20倍の性能向上を実現し、マシンビジョンに新たな可能性をもたらす。

はじめに

インテリジェントカメラとも呼ばれるエンベッディッドビジョンシステムは非常にコンパクトかつ軽量で、高度な柔軟性をもっている。画像処理のエキスパート Vision Components 社は、コンピューティングパワーを最適に活用する画期的な方法を提供している。

ザイリンクスのZynqモジュールが搭載されたスマートカメラVC Zシリーズには(図1)、VC Linuxのファームウェアが標準で搭載されている。

図1 スマートカメラVC Zシリーズ

デュアルコアARMプロセッサとFPGA(自由にプログラム可能な回路)で構成されたシステムオンチップ(SoC)は、特定の画像処理タスクをFPGAで実行することにより、様々な顧客のプロジェクトにおいて最大で20倍の高速性能を達成した。

FPGAプログラミング

FPGA回路構造は、通常、エンドユーザに馴染みのないハードウェア記述言語で構成されているが、ザイリンクスツールVivado HLSにより、CまたはC++を使用して、使い慣れた開発環境でFPGAのプログラミングが可能である。

プログラムされたすべての機能は、内蔵のシミュレーション環境で事前にテストを行い、スクリプトをデバッグすることが可能であり、トラブルシューティングが大幅に簡素化され、開発時間が大幅に短縮することが可能となっている。

Vision Components社は、VC Libソフトウェアライブラリを無償にて提供しており、コードのコンパイルを容易にする。

C言語でプログラミングされた300以上の関数と、色処理、各種のフィルタルーチン、パターンマッチングなどのプログラムが用意されており、産業用アプリケーションにおける標準的な画像処理機能をARMプロセッサに実装し使用できる。

画像処理を高速化するために必要かつ適切な場合には、FPGA上でルーチンを実装することが可能である。Vision Components社は、今後数年間でFPGAプログラミングがマシンビジョンの主要な要素となることを期待しており、ユーザフレンドリーな製品開発に引き続き取り組んでいく。

交通監視アプリケーション

ARMまたはFPGAルーチンを使用しているかどうかにかかわらず、画像処理機能を備えたスマートカメラは、交通監視や製造現場など多くの分野において高度に洗練された検出アプリケーションの作成を可能にする。

たとえば、Vision Components社では、ニュージーランドからブルガリアにいたるまで、世界中の多くの国においてすでに設置されているALPR(Automatic License Plate Recognition)用のシステムソリューションをOEMで開発した。

自動ナンバープレート認識システムCarrida Camは、セキュリティと監視システムを小型のスマートカメラで統合した消費電力僅か3Wで動作するスタンドアロン型のスマートシステムである(図2)。

図2 高い検出率を誇るスタンドアローンカメラと統合が容易なALPRソフトウェア

Carridaソフトウェアエンジンは、損傷したプレート、汚れたプレート、歪んだプレートなどの実際の検出対象において96%以上の読み取り精度でナンバーを認識する。最高速度200km/hで走行する車に対しても最小12画素の高さの文字を認識し、確実に動作する。

3Dアプリケーション

 Vision Components社は、3Dビジョンソリューションを提供している。1つのCPUボードに2つのリモートセンサヘッドを備えたカメラによりステレオ画像の取得が可能である。

また、イメージセンサとラインレーザーを組み合わせたレーザー三角測距センサを使用して、複雑なプロファイルを検査しプロットすることが可能である(図3)。

図3 3Dアプリケーション用のレーザー三角測距センサ

これらのシステムは、対象物の輪郭を撮像することで、位置、寸法、体積などの幾何学的特性を確実に識別することができる。スキャナは最高400Hzのスキャン速度と15~250μmの分解能を実現している。

バンドパスフィルタ、ライン抽出、プロファイル前処理、ダイナミック露出調整により、正確なプロファイル検出が保証される。

Vision Components社について

業界初のインテリジェントカメラの発明者であるMichael Engelによって1996年に設立されたVision Components GmbHは、マシンビジョンの分野におけるスマートカメラのリーディングサプライヤーである。

PCなしでも動作可能なリアルタイム画像処理を行うスマートカメラの開発・製造を行い、20年以上にわたり、世界25ヵ国以上に製品の供給を行ってきた。エンベッディッドビジョンソリューションは、様々な産業機械やプラントに容易に統合することが可能である。

ARMプロセッサとVC Linuxファームウェアを搭載したモデルまたは独自のVCRTオペレーティングシステムを搭載したDSPベースのモデルの、用途に応じた画素数のCMOSイメージセンサ、ハウジングの有無を標準で選択することが可能であり、また用途に応じたカスタム品にも対応している。

Vision Components社は幅広い用途に合わせてカスタマイズされたマシンビジョンソリューションを開発している。

標準的なアプリケーションとしての品質検査と自動化用途、さらにはナンバープレート認識、モーションキャプチャ、デコード、測定、位置決めなど、多くのアプリケーションに対応するフリーソフトウェアライブラリを提供している。

※映像情報インダストリアル2017年10月号より転載

問い合わせ
Vision Components GmbH 日本事務所
E-mail:sales@vision-components.jp
http://intelligent-vision.jp/

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