ハイパースペクトルカメラとアプリケーション

ハイパースペクトルカメラは分光器とカメラを組み合わせた技術である。分光情報と位置情報を同時に取得できるため、人には見えない現象を可視化し、マッピングを行うことができる。人の目に代わる技術の1つとして注目を集めている。

ハイパースペクトルカメラとは

ハイパースペクトルカメラとは、分光技術を用い、画像情報と波長情報を同時に取得することができるカメラである。通常のRGBカメラが赤青緑3色の波長情報を得るのに比べ、ハイパースペクトルカメラは数百バンド以上の波長情報を得ることができる。そのため、従来の製品と比べ人間の目では区別がつかないような微妙な色の違いを区別することができる。また、近赤外光を使用することにより、色ではなく、分光情報から物質の成分情報を特定したり、識別したりすることができる。ハイパースペクトルが活躍している分野は工業・農業・分析・バイオ・リモートセンシングなど多岐に渡り、その目的も異物検査・品質管理・成分分析・環境調査など様々である。これまでの主な用途としては、研究分野での応用がほとんどであったが、小型化、高分解能化が進み、スピードも向上してきたため、今後はますます組み込みやラインへの導入が期待される。下記では、実際にハイパースペクトルカメラが活躍している事例を紹介する。

アプリケーション事例

1)食品工場異物検査
図1、2は実際に食品工場のラインにハイパースペクトルが導入されている事例である。該当工場では1ラインにつき4名の人員で食品中に混入した異物を取り除いていたが、それでも取り残しがあった。そこで人員削減、除去率向上を図るために様々なカメラの導入が検討され、最終的にはハイパースペクトルカメラが採用された。ライン上に流れてくる食品群の分光特性と位置情報を同時に取得し、異物と判断したものを後ろに構えているアームで吸い取って除去している。


図1

図2 オートメーション化例

カメラは24時間稼働しており、1日の出荷量5,300kg対し、精度は実に約99%を誇る。このように実際の食品工場においてもハイパースペクトルは効果を発揮している。ハイパースペクトルカメラはまだまだRGBカメラなどと比較すると単価の高い製品であるが、導入することにより非常に高い効果が期待できる。上述の工場では今まで80人いた作業員が50人にまで削減されている。

2)プラスチックリサイクル工場での選別
図3はそれぞれプラスチックをデジタルカメラで撮影した画像とハイパースペクトルで撮影した画像である。


図3 プラスチックの識別

PETや PPなど複数の樹脂が混ざっているが、透明なためRGBカメラや人間の目では違いがわからない。しかし、PIKA NIRで撮影すると樹脂ごとのスペクトルの違いから分類することができる。 実際に、PIKA NIRはプラスチックのリサイクル工場で樹脂の分別用途で導入されている。工場ではリサイクル資源としての価値を高めるためにプラスチックをさらに細かく分類する必要がある。前述の食品工場の事例同様こちらも以前は目視で分別が行われていた(図4)。


図4

しかし現在ではハイパースペクトルカメラを複数台使用し、分光情報を取得することで分別し、同時に取得した位置情報をもとにエアジェットではじいている(図5)。


図5

製品ラインナップ

現在弊社では、下記2社のハイパースペクトルカメラを取り扱っている。

1)RESONON社Pika(パイカ)シリーズ
RESONON社は、2002年にアメリカのモンタナ州で設立されたハイパースペクトルカメラメーカである。米国の政府系機関プロジェクトや産業用途での導入など数多くの実績をもっており、前述し た 食 品 工 場、 リ サ イ ク ル 工 場 で の 事 例 もRESONON社のハイパースペクトルカメラによるものである。RESONON社のPikaシリーズは小型で波長分解能が高く、また比較的安価なため、スペックとコストのバランスが非常に良い製品である。分光方式は反射型グレーティングを採用しており、ラインスキャンを行うことでハイパースペクトル画像を取得する。またカメラ単体での提供はもちろん、撮影・保存・解析機能がそろった専用ソフトウェア、撮影に必要なアクセサリ類などをすべて含んだコンプリートシステムでも提案しており、ユーザフレンドリーな製品となっている。

基本システムは、室内での撮影に適したベンチトップ、また野外でバッテリ駆動ができるフィールドシステム、またドローンなどのUAVに搭載できるUAVシステムの3種があり、その他ユーザの要望に合わせたカスタマイズも行っている。専用ソフトウェアSpectrononProは現在約60個ほどのアルゴリズムが入っており、代表的なものには「Spectral Angle Mapper」、「NDVI」、「PCA」などがある。またユーザ独自のアルゴリズムを書き加えられる機能もついている。測定波長範囲はNUV(350~800nm)、VNIR(400~1,000nm)、NIR(900~1,700nm)のタイプがある。また2018年にはUV(300~800nm)、SWIR(1,000~2,500nm)を発売予定で、さらに幅広いアプリケーションに対応できるようになる。

2)Norsk Elektro Optikk社(Hyspex)
NEO(Norsk Elektro Optikk)社は、1985年ノルウェーで設立されたメーカである。NEO社はノルウェーで最大の電子工学の民間研究開発会社であり、先進的な研究活動を行うことを目的の1つとしており、航空機搭載のプロジェクトや衛星プロジェクトなど、EUと数多くの共同プロジェクトを行っている。NEO社のハイパースペクトルカメラも、RESONON社のPikaシリーズと同様にラインスキャンライプのカメラである。さらに冷却CCD、MCTセンサの採用、波長の歪み校正やピクセルごとの欠陥の確認、感度補正など、出荷時に様々な検査、校正を行っているため、非常に高精度で信頼性の高いデータが取得できる。

また、NEO社ではリモートセンシング専用のハイパースペクトルカメラ(Mjolnir V-1240)を扱っており、400~1,000nmの波長域を撮影することができる。リモートセンシングの用途では、ハイパースペクトルカメラのほかにジャイロセンサやGPS、データ保存用のコンピュータなど多くの構成部品が必要であったが、Mjolnir V-1240はそれらをカメラに内蔵されており、とても扱いやすいモデルとなっている。重量は4kg未満、消費電力は50W未満であり、PicoITXi7SSDとApplanix APX-15 UAVナビゲーションシステムを備えており、超低ノイズの搬送波位相計測、高いダイナミックレスポンスなど高度なリモートセンシングを行うことが可能である。

ハイパースペクトルカメラの今後

ハイパースペクトルカメラの現状スペックでは、解像度・スピード・価格・サイズなどにおいて他のカメラに劣る面もあるが、上述のアプリケーション事例に見られるようにハイパースペクトルカメラでなければ達成できないことは多々ある。今後、ますます無人化が問われる現代において、ハイパースペクトルカメラは人間の目に代わる、さらには人間の目を超える技術の1つとして活躍の場を広げていくと考えられる。

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