近赤外線発光色素による 可視化アプリケーション

近年では、食の安全が求められ異物の混入防止や青果物においては腐敗などの検査のニーズが高まっているなか、近赤外線領域では、食品表層の水分量の変化を可視化させ樹脂片、ガラス片などを食品に対しては白く見せ、果物では、当てキズや水腐れ部分を果実表面に対し黒く見せることで、異物や障害部位を特定するような事例はよく見かける技術となっている。しかし、食品内部における樹脂異物検出については、未だ十分に検出できていないのが現状である。

そこで、DICが開発した近赤外線発光色素を事前に食品製造工程内で使用される樹脂等に練り込むことで、破損した樹脂が、間違って食品に混入した際でも、発光する波長の近赤外線を照射することで、自らが発光し居場所を教えてくれるといったシステムを提案している。また、使用している近赤外線の波長は、比較的食品を透過しやすいこともあり、食品表層や内部に入り込んだ異物も検出することができる特徴をもち、その可視化アプリケーションと適用事例を紹介する。

開発経緯

食品中の異物の検出装置としては、現在磁力線やX線を利用した装置が普及している。これらの装置は、金属や小石などの異物検出には優れるが、プラスチックやゴムなどの比重の小さい材料に関しては、一部検出が難しいことから、これらの材料の混入を検知するための新しい検出技術が求められている(図1)。 混入しやすいプラスチックやゴム製の部品や消耗品については、金属粉や磁性粉を含有したものが市販され、既存の金属探知機やX線検査装置での異物検出が可能になってきている。


図1 異物混入内容の内訳(平成28年度)
出典:なごや食の安全安心情報ホームページ―名古屋

しかしながら、小さな異物の検出は難しいのが現状である。さらには、金属粉や磁性粉を含有することで、プラスチック自体の物性や耐久性の低下が懸念される。今般、共同で開発を進めているシステムでは、「近赤外線発光する色素」と「近赤外線発光を検出する装置」を組み合わせることにより、従来難しいとされてきたプラスチックなどの検出が可能になると期待されている。近赤外線は、人体や食品に対しても影響が少なく安全性が高いことに加え、物質透過性が高いことから、透過光を検出するシステム(近赤外分光法)がすでに食品検査などに利用されている。そのため、食品内部に混入した異物の検出にも適用できる可能性が高いと想定される。

近赤外線発光色素の特徴および検出イメージ

近赤外線とは、可視領域よりも長い波長で、かつ赤外線の中では最も波短い領域のであり、700~2,500nm程度の領域の電磁波である。人間の目には見えない領域であることから視認することはできないが、太陽光にも含まれており、赤外線通信やリモコン等で使われていて、安全な光として考えられている。汎用のイメージセンサで撮像することも可能であり、暗視カメラなどにも用いられている。 物質透過性が高いことから、近赤外分光法を用いた非破壊の食品検査や医療や診断にも幅広く応用されている。中でも、特に波長の短い 700~1,000nmは、生体の窓と呼ばれ、ヘモグロビンや水の影響が少ない領域であり、近年、医療や生体イメージングにも積極的に利用されている(図2)。 


図2 検知システム概要

われわれは、この波長領域でプラスチック類に相溶性が高い近赤外線発光色素を開発し、近赤外線発光樹脂コンパウンドを利用することで、様々な部材に加工できることを確かめた。図3には、ポリカーボネートに発光色素をコンパウンディングしたペレットの近赤外発光の様子を専用の装置で撮像したものである。発光色素がないものはまったく発光していないが、色素を含有したペレットが強く発光している様子が見て取れる。


図3 色素の有無による樹脂発光例
a:可視照明+カメラで撮像 b:近赤外線照射+近赤外線カメラで撮像

この発光は近赤外領域であるため人には直接見ることはできない。 近赤外線発光色素の含有量は1%以下で十分な検出感度が得られることから、金属粉や磁性粉を含有したプラスチック製品に較べると樹脂の物性低下はほとんどない。また、異物が自ら発光するため、非常に小さな異物にも対応できることがわかっている。可視光領域とは重ならない領域の波長で検出していることから、食品の色にはほとんど影響を受けずに異物を検出することが可能となる。

近赤外線カメラによる発光樹脂の検出事例の紹介

異物検知を行う装置構成として、近赤外光の発光光源、近赤外発光検出装置が必要となる。発光光源としては、たとえばLEDやレーザーダイオード、フィルタで調整したハロゲンランプ等を用い、発光検出装置としては分光器やハイパースペクトルカメラ、光学フィルタを用いて発光樹脂の光のみを検出可能とした産業用カメラ、フォトダイオード式のセンサ等を用いることができる。この装置構成は、適宜用途や測定対象物、ユーザが必要とするデータ等の要望に合わせて組み合わせることが可能となる。図4に発光による異物検出事例を紹介する。


図4 近赤外線発光樹脂異物画像検査装置と発光事例

近赤外カメラによる検出については、以下のURLで動画配信を行っているので、そちらでもご参照いただきたい(https://youtu.be/JxjW55Zud9s)。発光樹脂としては、ポリカーボネートやポリウレタン、ニトリル系樹脂を発光検知した画像を紹介する(図5)。


図5 発光樹脂アイテム1例

市場の動向とその対応

市場からの要望は、画像処理等を搭載し、検出パターンの登録、品種登録など検査装置の高機能化に合わせた初期投資、維持管理するオペレータの育成等負担が多いことから、多くのお客様から、簡単で安価な検出装置が望まれている。そこで、三井金属計測機工では、異物がどこにあるかではなく、発光するものが検査領域にあるかないかを検出するカメラと判定できるユニットも開発している(図6)。


図6 近赤外線発光樹脂異物検査センサユニット

応用とユーザメリット

現在、食品工場への導入を目指し、近赤外発光樹脂を利用した異物検出システムのアプリケーションを拡充している。発光色素をより多くのアイテムに対応させることが、装置導入費用対効果に繋がるため、図7に示すアイテムについて順次開発検証を実施している段階にある。


図7 その他検証中の樹脂アイテム

さいごに

今回紹介したカメラ以外にも、小さい発光異物をより深い場所から検出したいといったお客様からのご要望に対し、三井金属計測機工では近赤外線分光方式による、発光色素の吸収波長と発光波長を解析することで発光異物を検出できる技術もご提案。近赤外発光樹脂は、食品中の異物検査以外にも3Dプリンタ造形物への応用、手術ナビゲーション用の医療用具を含め、様々な分野への応用展開が期待される材料である。アプリケーションの1例として、3Dプリンタ造形物へのQRコード埋め込みなどが挙げられる(図8)。何かお困りの際や応用展開をされたい場合は、ぜひお声掛けいただきたい。


図8 他分野での応用展開
(QRコードの埋め込み画像は、神奈川工科大学、上平研究室提供)

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