赤外線カメラ性能およびカメラ紹介

近年、非冷却型遠赤外線ディテクタを搭載した赤外線サーモカメラは、ますます小型化・低価格化が進み、自動車部品や半導体の製造工程における品質管理や、セキュリティ用の夜間監視カメラとして広く普及してきている。さらに、低価格の遠赤外線カメラが市場に供給され、誰もが使用できる環境が整ってきた。また、中赤外線ディテクタや近赤外線ディテクタにおいても低価格高性能化が進みR&D部門から製造部門での活用が広がってきた。本稿では、この赤外線カメラの紹介とその性能や注意点について紹介する。

非冷却遠赤外線カメラ

非冷却遠赤外線カメラは、ボローメータ型やサーモパイル型(熱電対型)のディテクタを使用したカメラが主流になっている。80×60サイズ程度から小さいサイズがサーモパイル型、それより大きいサイズがボローメータ型と住み分けがされつつある(表1)。


表1 ボローメータ型とサーモパイル型との住み分け

遠赤外線カメラには、NETD(Noise Equivalent Temperature Difference)と言う指標がある。これは、雑音等価温度差と言われるが、この温度差までカメラとして認識可能であると言われている。しかし、メーカ間で統一された測定方法があるわけでない。レンズのF値や被写体の温度およびカメラの周辺温度に非常に左右されるためカタログデータを単純に比較しただけでは、性能比較とならない。

ちなみに日本では、この遠赤外線カメラの評価方法が防衛省規格NDS C0212Bに唯一規定されかつ公開されている情報がある。ネット上「NDS C0212B」で簡単に探すことが可能である。われわれの経験からこの方法で測定するとメーカでの値より悪い性能がでることが多い。このような評価をユーザが行うのは難しいが、簡単にカメラのNETDを予測する方法がある。遠赤外線カメラを机などにレンズを伏せて、表示ソフトで画面内の最大温度および最低温度を測定する。その温度の差を6で割るとNETDに近い値が算出される(図1、2)。


図1 簡単にNETDを測定する方法


図2 弊社シャッタレスビューアでの測定時の画面

これは、防衛省規格にも良く似た評価方法の記載がある。絶対温度精度も、カメラの性能として大きく左右される。温度計で解っている既知の温度を測定してその差を見てカメラを評価することが多いが、実際には、非接触温度計は物体がもっている放射率によって表示される温度が異なる。特に放射率が低いと反射の光を見るためその情報をカメラに入力しなければ正確な温度は測れない。溶けかけた氷の表面は、ほぼ0℃でかつ放射率が95%と高いため正確な温度測定が可能である。

また、黒アルマイト加工したアルミ板を室内に放置すると気温とほぼ同じになる。この黒アルマイトも放射率が95%と高いため、カメラの評価治具として使用可能である。最近では、温度精度項目のないカメラも多く出てきているがこれは、監視用カメラで温度測定を目的に作られていないことが多い。 遠赤外線カメラは、周辺温度変化により正確な温度やNETDが悪くなる現象がある。われわれは、直線性試験を全カメラで行っている。これは、カメラの周囲温度を変化させ、ターゲット温度が正確な温度表示を行っているか、NETDは悪くなっていないかテストを行っている(図3、4)。


図3 環境温度4点に対してのターゲット温度 vs 表示温度


図4 環境温度変化によるNETDの変化

カメラの周辺温度が低下するとNETDが悪くなることがわかっている。また、ターゲット温度が低いと放射エネルギー量が低下するためNETDが悪くなる。一般的に、0℃以下の温度を正確に測れるサーモグラフィカメラは少ない。

近赤外線カメラ

近赤外線カメラは、量子型センサの中でも常温に近い温度で動作し、使い勝手のよい赤外線カメラである。最近では、安いセンサが市場に出てきており、カメラの価格も低下している。しかし、カメラメーカからユーザに提供しているカメラの仕様が少なく、ユーザが少ない情報でカメラを選択するため、本来必要とする仕様ではなく満足しないカメラの選択を行っている場合が少なくない。 近赤外線センサの各メーカ別のホームページ上のカタログスペックを比較すると、各社のセンサで大きな違いが見受けられる(表2)。


表 2 各社センサの比較

表2の仕様の中で、カメラの感度性能を左右するのが、感度波長範囲、QE、Dark Curren(暗電流)、FullWell Capacity(飽和電荷容量)である。FullWell Capacityは、センサ内にあるコンデンサの容量で、露光時間中のInGaAsダイオードから出力される電子を蓄える容量のことである。この容量が小さい程、少ない電子を電圧変換できるため高感度なセンサと言える。QEは、赤外線光を入射した時に、どれだけ電子に変換できるかの効率である。入射フォトン1個に対して電子1個を変換できれば100%となる。暗電流は、センサにまったく光が入っていなくてもInGaAsのダイオードに逆電圧をバイアスかけるため自由電子などの小数キャリアによって流れる電流のことである。

この電流が大きいとカメラ露光時間を長くするとFullWell Capacityの容量を食いつぶして感度の悪いセンサとなる。1Aの電流の1秒間に流れる電子の数は、6.25×10 18 の数になる。SCDのセンサの暗電流:2FA=12,500個/秒の電子の数になる。FullWellの容量を満たすまでの時間は、0.96sとなる。露光時間は、この値の半分以下でなければ、カメラとして成立しない。暗電流以外にROIC(読み出し回路のノイズ)やカメラ側のノイズが発生するためこの値以上に悪くなる(表3)(図5)。


表 3 計算上の最長露光時間の比較


図5 感度の高いセンサと低いセンサの違い

この近赤外線センサは、TEC(Thermo Electric Cooler)と呼ばれるペルチェ素子が内蔵されていることが普通であったが、最近では、このTECが内蔵されないセンサも販売されるようになった。センサFPA温度が変化すると暗電流やQEの特性が変化するためカメラ側で、その制御を行うことが必要となる。この技術は、遠赤外線カメラの補正技術に似ており弊社もこの技術を近赤外線TEC-Lessカメラに内蔵する作業を行っている。 

赤外線カメラの紹介

表4に遠赤外線カメラを表5に近赤外線カメラのラインナップを示す。


表4 遠赤外線カメラ


表5 近赤外線カメラ

参考サイト
SCDホームページ
Sofradirホームページ
浜松ホトニクスホームページ

■問い合わせ先
株式会社ビジョンセンシング
TEL:06-4800-0151
E-mail:info@vision-sensing.jp
URL:http://www.vision-sensing.jp/

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