マシンビジョン分野では、様々なフォーマットサイズのカメラが使用されている。様々な条件によりカメラが使い分けられているが、装置の高性能化の要求に伴い、最適なレンズが求められる場合が増えている。
開発経緯
マシンビジョン分野では、2/3型、1型、4/3型と比較的大きなセンサのカメラが使われている。さらに近年1.1型センサを使用したカメラが販売されている。弊社においても、1型、4/3型に対応したCマウントレンズをラインナップしているが、最適な組み合わせでの性能を提供するため、新たに1.1型シリーズを用意している(図1)。
図1 NEW FCシリーズ
Cマウント
マシンビジョンでは、Cマウントが広く使われている。Cマウントは、16mm映画撮影機用レンズマウントとして規格化されたものである。スクリュー式マウントであるため、比較的安価に製造が可能である反面、大きさの制約から大型センサへの対応が難しい。
弊社ラインナップには、4/3型センサ対応レンズにCマウントを採用しているが、様々な制約のもとで成立している。大型センサ用マウントとして、バヨネット式やM42スクリューマウントなども使われている。しかしマシンビジョン分野においては装置の小型化が必要であり、Cマウントが好まれる傾向がある(図2)。
図2 マウントサイズ比較
新1.1型レンズシリーズの特長
3.1 レンズサイズ
図3に、25mmにおける弊社1型シリーズとの比較を示す。左より、1 型メガピクセル対応HCシリーズ、1.1型12メガピクセル対応FCシリーズ、1型6メガピクセルオーバー対応SCシリーズの3機種である。
高解像対応のため、LM25HCと比較してLM25FCおよびLM25SCは、全長が長くなっている。しかし新しいLM25FCは、光学設計の最適化によりLM25SCと比較して、さらなる高解像化を達成しつつ全長を短くしている。
これは、1.1型対応FCシリーズに共通した特徴である。小型化は、マシンビジョンレンズにおいて装置小型化等につながる重要な要素となる。また1型→1.1型とフォーマットサイズの大型化に対して、最小限の外径サイズ変更にとどめている。
図3 f=25mmにおけるサイズ比較
3.2 視野全域での高い光学性能
図4に、LM25HC、LM25SCおよびLM25FCの無限遠被写体に対するMTFチャートを示す。視野中心を青色、像高h=4.8mmを緑色、像高h=6.4mmを赤色、像高h=8.0mmを黄色、像高h=8.8mm(LM25FCのみ)をピンク色で示している。LM25HCでは、視野中心と比較して像高を持つ位置でのMTF値が低下しているのがわかる。
またLM25SCは近距離優先での設計のため、視野全域でそれほど高くないMTF値となっている。この2シリーズの25mmと比較してLM25FCでは視野全域での高いMTF値を有している。
図4 MTFチャート比較 W.D.=∞
3.3 近距離被写体に対する光学性能
図5に、LM25HC、LM25FCのW.D.=300mmにおけるMTFチャートを示す。LM25HCでは、近距離におけるMTF値が低下しているが、LM25FCでは高いMTF値を維持しており、図3でのチャートと合わせて高い光学性能を維持していることがわかる。
図5 MTFチャート比較 W.D.=300mm
3.4 センサとのマッチング
図6に、LM25HC、LM25SC、LM25FCのCRA(Chief Ray Angle:主光線角度)
を示す。これはレンズ最終面から像面への主光線の入射角度を表している。センサに対する光線の入射角度は、レンズ-センサのマッチングにおいて非常に重要な要素である。
図6 CRA比較
Cマウントの項でも触れたが、サイズ制約から大型のフォーマットに対しては、主光線角度を光軸に対して並行に近づけなければならない場合がある。その角度によっては、センサ性能を生かせない場合も出てくる。
LM25HC では 1 型フォーマットサイズ(像高8mm)において6deg以下となっているが、LM25SCでは4/3型等のラージフォーマットCマウントも視野に入れた設計を採用しているため、主光線角度が10deg超と大きくなっている。
LM25FCでは、1.1型に対応しながらも6deg程度に抑え、センサへの入射角度条件を改善している。これは弊社1.1型新シリーズに共通な特長となっている。
3.5 ガラスモールド非球面レンズおよび特殊低分散ガラス(XDガラス)の採用
小型化・高精細化のために、弊社では積極的に非球面レンズおよび特殊低分散ガラス(XDガラス)を使用している(表1、2)。
表1
表2
おわりに
マシンビジョン分野においては、大小様々なセンサを使用したカメラが販売されており、それぞれのフォーマットに最適なレンズが求められる。当然、小型のセンサに対してそれをカバー可能なレンズ、たとえば1/1.8型に対して2/3型のレンズを使用することは可能であり、性能の比較的よい中心付近を使用するため有利になるという考えも可能であるが、レンズが大きくなってしまうなどの弊害もおこる。
そのため小型化が要求される場面では適さない。弊社では、様々なフォーマットや同じフォーマットにおいても異なる解像力をもつレンズを各種取り揃えることにより、様々なニーズに対応している。
■問い合わせ先
興和光学株式会社
TEL:03-5651-7050
http://www.kowa-optical.co.jp/
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