南フランスのプロバンスを拠点とするハイテク企業で、極小光学技術に強みをもつシリオステクノロジーズ(以下:シリオス社)が市場に送り出した画期的な新製品のマルチスペクトルカメラについて紹介する。
COLOR-SHADES ®(カラー・シェーズ)技術
シリオス社は、近年、画素ごとに構成されたマルチスペクトルフィルタの製造を可能にするCOLOR-SHADES ® (カラー・シェーズ)技術を開発した。
この技術を用いて、市販されている画素サイズ5.3µmの130万画素モノクロCMOSイメージセンサに同社のCOLOR-SHADES ® 技術を融合しマルチスペクトルカメラを実現した。
シリオス社がリリースした小型軽量マルチスペクトルカメラ「CMS-C」「CMS-V」「CMS-S」の3機種は、COLOR-SHADES ® マルチスペクトルフィルタを、市販されている画素サイズ5.3µmの130万画素モノクロCMOSイメージセンサにハイブリッド・アセンブリしたマルチスペクトルセンサを搭載している。
このCOLOR-SHADES ® マルチスペクトルフィルタは、カラーRGBベイヤ配列のカスタム版のようなもので、CMOSイメージセンサに入射する光をそれぞれの画素ごとにフィルタリングする役割を担う(図1)。
小型軽量マルチスペクトルカメラ
CMSカメラを使って撮像すると、1つのシーンから8枚の「単色」画像(FWHM:20~60nm)と1枚の白黒画像(パンクロ)が出力される(図2)。
前述の3機種のカメラ製品は、それぞれターゲットとするアプリケーションによって波長範囲が特定されており、本体が色分けされている(図3)。
CMS-C(本体カラーは赤)は、色の測定、校正または識別が想定される主な用途で400~700nmの波長範囲で使用。CMS-V(緑)は、550~800nmの波長感度をもちクロロフィル・サンプリングによる植生および精密農業に向いている。
CMS-S(青)は、650~900nmに波長感度がありセキュリティや防衛用途向けに提案している。 本稿ではCMS-Vのクロロフィル検知の使用例を簡単に紹介する。
CMS-Vカメラでの撮像例
図4に示すスマートフォンで撮像したRGB画像では、緑色のパッドに乗せた葉っぱが同じような見た目で判別しづらいが、CMS-Vカメラで撮像すると図5や図6のように容易に判別が可能になる。
順を追って動作を説明すると、CMS-Vからは撮像した画像が図7のように生データで出力される。
この生データにはマルチスペクトルフィルタを通じて入射してきたすべての範囲のスペクトル情報が10bitで格納されており、この生データから各波長の情報を抜き出すことができる。
それぞれのバンドごとに抜き出すと図2のようになる。それらを疑似カラー合成した画像が図5である。これは細かな違いはあれど、スマートフォンのカメラでカラー(RGB)画像を表示するのと同じ仕組みである。
CMSカメラには評価用ソフトウェアが付属しており、NDVI(植生指数)を画像化する機能も付いている(図6)。
図8は屋外の様子をRGBカメラで撮像した画像である。このシーンをCMS-Vカメラで撮像すると図9のようになり若葉や立木、草などが強調される。
図10はスペクトルギャップを画像化したもので、リファレンスとなるスペクトルに近いものが赤色で、遠いものが青、そしてその中間が緑色で表示される。
さいごに
CMSカメラは重量59gときわめて軽量であり、ドローンなどに搭載して撮像することにも適している。USBケーブル1本で電源供給とデータ転送を行えるため携帯性にも優れており、扱いやすいことも特徴の1つである。これらのお手頃価格の標準品とは別に、シリオス社ではお客様のニーズに合わせてマルチスペクトルセンサの開発も可能である。
※映像情報インダストリアル2018年10月号「クロニクステクニカルセミナー2018」特集より転載
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