近赤外・遠赤外応用システムの紹介

画像処理・画像識別の分野では、これまで人間が目視で行っていることの肩代わりをし、さらに高速に行うことを目的にしてきた。しかし、赤外領域の光を取り込む装置がより容易に利用可能になってきたことを背景に、赤外の情報を使用して、可視光による認識・検査の補助にする、あるいは今まで可視光だけでは不可能だった情報を得るなどが行われるようになった。本稿では、このような「新しい計測」に使用可能な 1. 近赤外3波長同軸カメラシステム 2. 可視・遠赤外同軸カメラシステム 3. 超高速遠赤外ビジョンパンチルトシステム について紹介する。

近赤外 3波長同軸カメラシステム「TriSpect」

18bitリニア諧調カメラXviiiを3台同軸で配置し、相異なる3波長の光学バンドパスフィルタをつけ、マルチスペクトル画像を同期して得るようにしたカメラシステムである(図1、2)。


図1 TriSpect構造


図2 TriSpect外観

Xviiiは高感度であるため、10nm幅のバンドパス特性により入射光量が少ない場合でも実用に耐える画像を提供できる。また、得られる画像は18bitリニア階調であるため、照明ムラなどにより最明部・最暗部に差が大きい対象でも情報を失わずに取得できる。3つの波長はカスタマイズできるので、マルチスペクトル計測システムとして使用できるほか、3波長の照明を別々の方向から当てることで照度差ステレオ法の計測機として使用できる。また、この構造を踏襲して4カメラ(4波長)システムを提供できる。マルチスペクトル計測の例として図3に3波長の画像からピクセルごとの演算により手の静脈を強調した例を示す。この強調画像が動画で得られること、照明が不均一であっても安定して得られることがTriSpectの特長である。


図3 TriSpectによる静脈強調(3波長画像から合成)

可視・遠赤外同軸カメラシステム「FIRplus」

FIRplusは、遠赤外線カメラと可視光カメラを同期かつ同軸にて撮影できるカメラシステムである。完全にシャッタのタイミングを合わせて同期撮影ができ、また同軸にて撮影することで撮影対象の距離によらず、両カメラの画像を高精度にて重ね合わせることができる。本システムの制御はカメラを接続したパソコンにて行う。遠赤外線カメラと可視光カメラは直角に配置し、その間に設置する波長分離ミラーにて可視光の波長と遠赤外線波長に分離している(図4)。


図4 FIRplusの外観と内部構造

またカメラ間の同期は、遠赤外線カメラ側がマスターカメラとなり、タイミング信号を可視光カメラ側に送り合わせている。画像の重ね合わせでは、カメラの光軸はあっているがカメラ間で解像度や画角が異なるので、ソフト側にてキャリブレーションを行っている。キャリブレーション用ターゲットとして、ニクロム線を格子状に張り巡らせたターゲットを用意し、電流を流してニクロム線の温度を上げることで、両カメラから認識できるように工夫した。可視光カメラだけでは、夜間や逆光などの認識しづらい状況などでも、遠赤外線カメラと組み合わせることで物体の認識率を高めることができる(図5)。今後、自動運転など新しい分野での利用も期待できると考えている。


図5 車載撮影の例
(左上:遠赤外線画像/左下:可視光画像/右:合成画像)

超高速遠赤外ビジョンパンチルトカメラシステム「RELW60」

この RELW60 は、オーストラリアの Ocular Robotics社が開発したRobotEyeシリーズの一部である。RobotEyeシリーズとは、図6に示すようにミラーを内蔵したヘッドを2軸回転することで搭載する光学機器の光軸の向きを変えるシステムである。ヘッドのみを回転して光学機器や電装系などは回転しないため、高速回転、無限回転、高耐久性を実現しており、また耐環境性能もIP65を実現している。これまでに可視光カメラや近赤外レーザー距離計を搭載したシリーズをリリースしてきたが、図6に示すように従来のモデルではミラーから光学機器までの中空部が細いため、カメラ画像を得るにはリレーレンズ系が必要で、計測できる波長域が制限されていた。


図6 RobotEyeの基本原理と新・旧モデルの違い

そこで、さらに大きなモデルを開発してモータの中空部を拡大し、ミラー直下に光学機器を配置できるようにして計測できる光の波長域を拡大した。これによって遠赤外カメラの搭載も可能となり、超高速遠赤外ビジョンパンチルトシステム
「RELW60」が誕生した。RobotEyeの超高速パンチルト性能に加えて遠赤外画像を取得することができるため、高性能な熱源体の追尾するセキュリティシステム、熱源情報を含んだ高精細パノラマを撮影して資源探査やインフラ点検をするシステムなどを構築できる。RELW60のシステム構成は、本体ユニットに電源・通信複合ケーブルを介して電源(24VDC/600W)と制御用PCを接続する。また、RELW60を制御するサンプルソフトウェアとシステムを開発するためのSDK(C++クラスライブラリとサンプルコード)が付属する。RELW60のスペックを表1に示し、選択可能な遠赤外カメラとレンズの組み合わせ(FLIR社のTau2シリーズ)を図7に示す。


表1 RELW60のスペック


図7 RELW60のカメラ・レンズオプション

アプリケーションに応じて有効画素数や画角を選択することができる。カメラの計測波長域は7.5~13.5μm、分解能は14bitで、フレームレートは7.5fpsまたは30fpsを選択できる。そして、図8にRELW60で実際に撮影したパノラマ画像データを示す。


図8 RELW60で撮影した高解像度パノラマ画像

カメラ・レンズはTau2 6407.5fps・60mmを内蔵して、方位角360deg・仰角±35deg の範囲を4deg ずつ向きを変えながら1,620枚撮影し、これらをおよそ22,000×5,000pixelの1枚の画像に貼り合わせた。各撮影はヘッドを停止して行っているが、高い角加速度によって停止状態から向きを変更してまた停止するというシーケンスを高速で実行できるため、全体として高速で撮影できる。また、画像を貼り合わせる際は向きの角度情報を使用するが、高い角度精度によってずれの少ないパノラマ画像を生成することができる。

おわりに

ビュープラスの赤外線関連製品について紹介してきたが、これらのシステムは単に赤外線が検出できるだけでなく、カメラを同軸配置し同期取り込みをすることにより多元的情報が一度に得られる、視野方向を高速に動かすことで対象を追跡したり、パノラマ画像を得られるなどユニークな特長をもっている。これらの特長を活かしたアプリケーションが広がることを期待している。

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