コンクリート内部を非破壊で可視化する最新技術

2017年、コンクリート内部探査用コンパクト電磁波レーダ「ストラクチャスキャンSIR-EZ」シリーズに電線管判別ユニットや超小型アンテナを取り付けることができる多機能型電磁波レーダ「ストラクチャスキャンSIR-EZ XT」が加わった。本稿では、弊社が提供するコンクリート等の最新非破壊内部探査技術を紹介する。

電磁波レーダによるコンクリート内部探査の発展

電磁波レーダ法は、金属以外の物質を透過し、透過した物質と異なる比誘電率をもつ物質の表面で反射するという電磁波の原理を利用したもので、物質内部を非破壊で探査することができる。2008年に米国GSSI社(Geophysical Survey System,Inc.)と共同開発されたコンクリート内部探査用コンパクト電磁波レーダ「ストラクチャスキャンSIR-EZ」シリーズは、優れた高周波アンテナ特性と低ノイズパルス発生器により、多重反射がきわめて少なく鮮明な反射画像を表示することができる特徴を有する(図1、NETIS登録番号【KT-120010-VE】)。


図1 ストラクチャスキャンSIR-EZシリーズ
(左:SIR-EZ 右:SIR-EZ HR)

また高速加算平均処理による優れたS/N比(信号対ノイズ比)により、高深度(EZ;450mm)・高分解能(HR、XT;かぶり:ピッチ=1:0.14)探査を可能にし、現在国内販売台数3,500台に達するまでに成長した。本シリーズは、発売当初よりファームウェアのバージョンアップにより「常に最新機」というコンセプトで設計されており、処理速度の高速化や3D探査モードの追加等により、日々進化を続けている。また性能の進化と併せてユーザ数の増大により、その用途も当初の鉄筋探査から、非金属管、電線管、ガス管等の金属・非金属埋設管の探査、コンクリート床版下の空洞やコンクリート中のクラック、ジャンカ等の探査、舗装厚、床版厚、耐火物厚、トンネル覆工厚等の測定といった様々な用途に拡大し、道路、鉄道、通信、原子力発電所、建築物等での改修・耐震補強工事から橋梁、トンネル、ボイラーの点検検査等に至るまで、様々な分野で利用されるようになってきた。 このような用途、分野の拡大により、ユーザからは、狭所探査や活電線の判別、広範囲な空洞探査・舗装厚測定、簡易で高深度の地中探査等、新たな要望が多く寄せられるようになってきた。

多機能型電磁波レーダ「ストラクチャスキャンSIR-EZ XT」の開発

そこで2017年、電線管判別ユニットや超小型アンテナ等が取り付けられる拡張性をもった多機能型電磁波レーダ「ストラクチャスキャンSIR-EZ XT」(NETIS登録番号【CB-160009-A】)が新たに発表された(図2)。この「ストラクチャスキャンSIR-EZ XT」は、シリーズ最高周波数2,700MHzを使用し、高分解能と高深度の相反する性能を両立させた。


図2 ストラクチャスキャンSIR-EZ XT

特に画面を大型化し、垂直方向データサンプリング数を256から512サンプル/スキャンに倍増させたことにより、表層から底層まで鮮明な画像として表現することが可能となった。あわせて3D探査モードでは、従来のスライス画像だけでなく、X、Y断層画像、3D立体画像といった様々な視点からの表現も可能となった。さらに本機最大の特徴は、様々な外付けユニットによる機能拡張性であり、たとえば、手元操作が可能な「エクステンションポール」(図3)を本体に取り付けることにより、広範囲な舗装厚、床版空洞探査が立ったまま容易に行えるようなった。


図3  舗装厚、床版空洞探査等に用いられる ストラクチャスキャンSIR-EZ XT 「エクステンションポール」

また電線管判別ユニット「AC Line Trac」(図4)は、本体前方に取り付けることにより、交流活電線を判別し、その信号をレーダ2D画像と重畳表示することにより、どの埋設管が活電線であるかを簡単に判断できるようになった。


図4 電線管判別ユニット「AC Line Trac」

この機能は、通常電磁波レーダでは探査できない鉄板下や鉄筋にバインドされた電線を探査することもでき(図5)、稼働中の重要施設工事での電線切断事故や感電事故の防止に貢献している。そして


図5 電線管判別ユニット「AC Line Trac」を用いた探査例

新たに発表されたのが、超小型電磁波レーダアンテナ「キューブアンテナ」(図6)である。これは本体ハンドル部に取り付けることにより、高さ約7.5㎝、入隅から4㎝までの狭所探査が可能となった(図7)。また距離計の位置を変えることにより、円形構造物の探査も可能になった。「ストラクチャスキャンSIR-EZ XT」は、現在も新たなユニットの開発が進行しており、引き続きユーザからの様々なニーズに対応していく予定である。


図6  超小型電磁波レーダアンテナ「キューブアンテナ」((H)7.5、(W)9.6、(D)9.6cm、300g)


図7  超小型電磁波レーダアンテナ 「キューブアンテナ」を用いた探査

高深度探査への挑戦

コンクリート内部探査への電磁波レーダ法の普及とともに、トンネル覆工厚や原子力発電所などの重厚施設での高深度探査の要望を多くなってきた。電磁波レーダ法は、従来より地中埋設管の探査分野においても使用されてきたが、地下水位の高い日本では深度1.5mが探査限界であった。2017年に発表されたGSSI社の地中探査レーダ「ユーティリティスキャンSmart」(図8)は、小型軽量であり、ハイパースタッキングという独自のデータサンプリング方式によりノイズを低減し、最大探査深度4m(土壌条件による)を実現した(図9)。


図8 「ユーティリティスキャンSmart」


図9 「ユーティリティスキャンSmart」のハイパースタッキング機能比較

本機も感度が自動調整であり、細かな設定や調整が不要で、コンクリート内部探査経験者であれば容易に操作が可能となった。これにより狭所から高深度まであらゆるシーンでの非破壊探査が可能となり、電磁波レーダ法の利用分野がさらに拡大されることが期待される。

探査結果の判定技術の向上と支援

一方で探査分野用途の拡大と安全なる工事には、探査機器の性能向上と併せて、探査技術者の判定技術も向上させる必要がある。2017年に新たに発表したコンクリートレーダ用報告書作成ソフト 「レポートエディタPro」および地中レーダ用報告書作成ソフト「レポートエディタGPR」は、Windows10に対応し、鉄筋埋設管判別アシスト機能「ナビゲーションカーブ」(図10)や舗装厚測定機能等の新機能により、複雑な配置の鉄筋や埋設管の深度位置測定から空洞、舗装厚、躯体厚測定まで、スピーディーにかつパワフルに対応することができようになった。


図10 「レポートエディタPro」鉄筋埋設管判別アシスト機能「ナビゲーションカーブ」

現在、本ソフトウェアでは、探査機器と同様、ユーザからの様々なシーンから生まれるニーズを取り入れ、新たなアシスト機能や解析方法を開発中である。あわせて弊社では、これらの機器の取り扱いに関して「KEYTEC電磁波レーダトレーニング」、また探査データの解析に特化した「KEYTEC電磁波レーダ【データ解析力アップ】トレーニング」を全国で年20回開催してきた(図11)。今後も機器の性能向上だけでなく、探査技術者の技量向上に努め、非破壊検査技術の信頼性と安全性の向上に貢献していきたい。


図11 「KEYTEC電磁波レーダトレーニング」風景

コンクリート内の鉄筋腐食を知る技術

これまでコンクリート内部の鉄筋腐食の確認は、実際に鉄筋を削り出し目視で確認するか、自然電位法や交流インピーダンス法等の電気化学的手法を用いて測定しなければならなかった。しかしこの手法は、鉄筋の一部をはつり出さねばならず、コンクリート内の含水率や鉄筋との接触状態により測定値に大きな誤差が生じること、さらに低周波インピーダンスの測定に一点あたり10分以上の時間を要することから、信頼性に欠け、広範囲での探査には向かなかったのが現状である。2016年に発表した完全非破壊型鉄筋腐食探知器「iCOR」(図12、NETIS登録番号【KK-170052-A】)は、コンクリート表面に電極を押し当て完全非破壊でコンクリート内部の鉄筋腐食速度、コンクリート電気抵抗率および自然電位(鉄筋と接触必要)を同時にかつ瞬時に測定することができる。


図12 完全非破壊型腐食探知器「iCOR」

その原理は、従来技術とは異なり、抵抗とコンデンサの並列回路にステップ電流を印加することによって生じる過渡現象を利用したもので、非接触電気パルス応答解析“Connectionless Electrical Pulse Response Analysis(CEPRA)”と呼ばれている。また、コンクリート表面から印加された電流に対する電圧変化を高サンプリングレートで測定し、その変化曲線を近似して短時間で分極抵抗を求めることができるため、1点あたりの測定時間が約10秒と従来法に比べきわめて短い。これによりその場でコンターマップを作成することができ(図13)、従来の鉄筋腐食測定法に比べ、時間・人的資源・費用を大幅に削減することができるようになった。よって本技術は、鉄筋探査と併せて、今後の構造物の長寿命化診断には欠かせない技術と言えよう。


図13 完全非破壊型腐食探知器「iCOR」探査例

今後の展望

弊社では、これまで高性能電磁波レーダ「ストラクチャスキャンSIR-EZ」シリーズを開発し、非破壊によるコンクリート内部の可視化に挑戦してきた。現在、本機で得られたコンクリート内部の鉄筋情報に完全非破壊型鉄筋腐食速度探知器「iCOR」による鉄筋腐食情報やコンクリートの塩化物浸透性情報を重畳することにより、コンクリート内部の構造から診断までを担う統合型の解析ソフトウェア(図14)の開発を進めている。


図14 コンクリート内部情報を重畳表示する統合型解析ソフトウェア

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