新発想の簡易モーションキャプチャシステム 「6D-MARKER Analyst」

カメラ1台、マーカ1枚で6自由度の位置(座標X, Y, Z)と姿勢(角度Roll, Pitch, Yaw)を画像計測できる簡易モーションキャプチャシステム「6D-MARKER Analyst」を開発した。本システムが一般的なモーションキャプチャシステムと異なる特長を、自動車業界での利用シーンに即して紹介する。

はじめに

 近年、自動車業界の研究開発現場では「電動自動車」と「自動運転」といった自動車の高性能化に伴い、新たな計測ニーズが増加している。

それは「エンジン」から「モータ・バッテリ」部品へ計測対象がガラリと変わっただけでなく、「快適性向上」と「運転支援」といったテーマで「ビッグデータ」や、「人間工学」に基づく計測データ等を使ったこれまでにない検証方法の重要性が増しているためだ。

計測場面が増える中、これまでの高精度なデータ取得に加えて、手軽に数多くの計測データを取得する必要性が叫ばれている。 

そこでフォトロンではカメラ1台、マーカ1枚で6自由度の位置(座標X, Y, Z)と姿勢(角度Roll, Pitch, Yaw)を画像計測できる簡易モーションキャプチャシステム「6D-MARKER Analyst」(図1)を開発し、2018年4月に発売した。

図1 「6D-MARKER Analyst」

「6D-MARKER Analyst」とは

一般的なモーションキャプチャシステムはカメラを複数台固定する必要があるため、高い精度は出るものの設備が大型になるなど制約が多い。

そのためセッティング時間を短縮したい、狭い箇所を計測したい、実車走行試験で計測したい、カメラが振動する場所でも計測したい、導入コストを抑えたいといった多くのニーズがあった。

「6D-MARKER」はARマーカに特殊な加工を施したことで、従来型のARマーカと比較して正面撮影時の計測精度が飛躍的に向上している。

そのためモーションキャプチャに利用できる高い計測精度を実現したことにより、カメラ1台とマーカ1枚から3次元空間内の位置(X, Y, Z)・姿勢(Roll, Pitch, Yaw)を画像計測が可能なシステムとなっている。

また、「6D-MARKER」は挙動を計測する点だけでなく空間の座標原点としても設定することができる。そのためカメラが動いたり、振動で揺れたりする環境でも計測することが可能となっている。

特長1:新発想のARマーカ

「6D-MARKER」(図2)は、画像計測に特化した特殊な加工が施された新発想のARマーカである。

図2 6D-MARKER

四隅に高精度印刷された参照点を画像トラッキングし、マーカ1枚で6自由度の位置(X, Y, Z)・姿勢(Roll, Pitch, Yaw)を計測する。

マーカの上側と右側に配置されたVMP(Variable Moire Pattern)は見る角度に応じて変化するモアレパターンのレンチキュラーレンズで、これにより従来型ARマーカの課題であった正面撮影時の姿勢計測精度が飛躍的に向上している。

また左側と下側に配置されたFDP(Flip Detection Pattern)は見る角度に応じて白黒パターンが反転する部位で、マーカが手前か奥のどちらに傾いているかを画像判定する。

マーカ中央の記号はマーカIDの識別用で、最大32枚の同時計測が可能となっている。このように「6D-MARKER」には様々な工夫がなされているため、従来のARマーカと比較して高い計測精度を1枚のマーカで画像計測できるのである。

特長 2:カメラ1台の簡単、省スペース、可搬型

 一般的なモーションキャプチャシステムや3次元画像計測システムは2台以上のカメラと広い専用スペース、空間のキャリブレーション作業が必要であり、カメラ位置は固定されたものが大半である。

「6D-MARKER Analyst」なら事前設定は簡易的な作業のレンズキャリブレーション設定(図3)のみで、計測に必要な機器はノートPCに接続されたカメラ1台と計測対象に貼るマーカだけなので持ち運びも容易なため、簡単かつ省スペース設置を実現できる(図4)。 

図3 キャリブレーション画面

図4 一般的なシステムとの比較

レンズのフォーカスとズームを固定していれば、カメラを動かしてもキャリブレーションを取り直す必要がない点も優れている。また、マーカを空間の座標原点にも設定可能なので、原点のマーカさえ画角内に入っていればカメラが揺れたり振動したりしても計測することができる。

特長 3:選べる対応カメラと柔軟な計測画面

「6D-MARKER Analyst」は2.3MP(Mega Pixel)のUSBカメラに加えて、ハイスピードカメラのFASTCAM Miniシリーズにも対応している。

2.3MPのUSBカメラは30fps(frames per second)程度の撮影と画像計測に向いており、走行試験でのステアリングの角度計測(図5)やドライバーの運転姿勢の計測に最適だ。

図5 ステアリングの角度計測

ハイスピードカメラを使えば、自動車の衝突試験のダミーヘッド(図6)や、エンジンの振動などの高速挙動も計測が可能である。

図6 ダミーヘッドの姿勢計測

また、対応カメラ以外で撮影された動画データ(AVI/WMV/MP4形式)にも対応しており、キャリブレーション方法は対応カメラとは異なり一手間増えるが、様々な計測シーンでの運用が可能である。

計測方法は一般的なモーションキャプチャシステムや画像解析ソフトのように追跡する点について1つずつ設定をする必要がない。ソフトウェアが自動でマーカのIDを認識するため、カメラの画面内にマーカが映れば自動トラッキングしてくれるので設定が容易である。

また、計測結果のグラフ表記(図7)は任意のマーカIDと6自由度の要素をグラフ表示し、平滑化フィルタやデータ補間をすることも可能となっている。

図7 グラフ表示

また、一般的なモーションキャプチャと異なり、映像の上にオーバーレイして計測点、軌跡、座標軸、ID等を表示することもできる。映像を非表示設定にすれば、3次元空間内で自由に回転、ズームなどができるので、わかりやすい角度で計測結果を見ることができる。

最終的な計測結果のデータは汎用のCSV形式で「画像フレーム番号」ごとに各マーカの「位置(X, Y, Z)」「姿勢(Roll, Pitch, Yaw:回転行列)」を出力することができる。

まとめ

「6D-MARKER Analyst」はこのように手軽に数多くの計測データを取得することや、これまで計測が難しかった走行中の車内や高速挙動のモーションキャプチャを実現できる。

今後も機能拡充やオプション追加などのバージョンアップを検討しており、計測シーンの増える自動車業界のさらなるニーズに応えられるよう尽力していく所存である。

※映像情報インダストリアル2018年8月号『自動車産業を支える画像技術』特集より転載

問い合わせ
株式会社フォトロン
システムソリューション事業本部 営業企画
TEL:03-3518-6271
E-mail:image@photron.co.jp
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