振動や衝撃により発生する光軸ズレを抑制する
FUJINONマシンビジョンカメラ用レンズ

一般的にマシンビジョンカメラ用レンズは、鏡胴内に複数枚のレンズが挿入されており、外からの強い振動や衝撃により、内部のレンズがわずかに動くことで、光軸ズレが起こるという課題があった。

富士フイルム株式会社(以下、当社)はこの課題に対し、特許出願済みの独自メカ設計“光軸変動抑制機構”により、光軸ズレを10μm以下に抑制する「耐振動・耐衝撃設計」モデルをラインナップした。

本稿ではこの「耐振動・耐衝撃設計」について、詳しく紹介する。

開発経緯

近年、CMOSセンサの高画素化と画像処理を行うプロセッサの高速化により、マシンビジョン製品が高性能化している。この進化しているマシンビジョン製品から求められるレンズへの要求性能もますます高まっている。

そのため、以前では問題にならなかった光軸ズレが、高解像画像検査装置や3次元測定装置といった高性能なマシンビジョン製品では深刻な問題になりつつある。

この問題を解決するため、多くのお客様の声を聞き、当社独自のメカ設計“光軸変動抑制機構”にたどり着いた。強い振動や衝撃を受けても光軸ズレを10μm以下に抑制することを実現しまた、その性能を測定・評価する独自の方法を構築した。

この技術は「HF-12Mシリーズ」の焦点距離8mmから35mmまでの全5モデルと、「HF-XA-5Mシリーズ」の焦点距離6mmと50mmの2モデルに採用されている(図1)。

図1 左:HF-12Mシリーズ/右:HF-XA-5Mシリーズ

FUJIFILM 独自のメカ設計“光軸変動抑制機構”

光軸ズレの原因は部品同士の隙間にある。一般的に部品には、公差と呼ばれる設計値と実寸値の許容誤差があるが、“光軸変動抑制機構”ではこの公差を最小限に設計されている。

また、問題となる隙間を埋めるため、接着剤を多く使用しているレンズが存在するが、当社は接着剤を多く使用する手段を採用していない。

なぜなら、接着剤は温度や湿度の影響を受けてしまうが、マシンビジョン装置は使用するカメラや使用環境により高温になる場合があるほか、多湿環境で使用される場合もあるため、レンズ性能に影響を及ぼすリスクを排除したいと考えているからである。

そのため、“光軸変動抑制機構”では当社独自のレンズ構造や特別な部品を使用することで、部品同士の隙間を埋めている。このように設計段階で公差を最小限にし、特別な部品を使用することで光軸ズレを10μm以下に抑制することを実現している。

「耐振動・耐衝撃設計」モデルを支える測定・評価手法

衝撃試験は、固定されたレンズとカメラに対し、最大10Gの衝撃を加える。これをX-Y-Zの三方向で行う。この衝撃の前後で当社の独自解析ソフト「Lens Visualizer」により、光軸ズレの値を正確に測定する(図2)。

図2 衝撃試験の様子

振動試験は、国際標準規格である「JIS 60068-2-6(IEC 60068-2-6)」に準拠し、振動数10~60Hz(振幅0.75mm)、振動数60~500Hz(加速度100m/S 2 )、50 サイクルの条件で振動試験装置により振動を加え、振動を加えた前後の光軸ズレを「Lens Visualizer」により正確に測定する(図3)。

図3 振動試験の様子

当社の振動・衝撃テストでは、①衝撃試験、②振動試験、③再衝撃試験、の順で3つの試験を連続で実施した後、光軸ズレが10μm以下であることを保証値として規定している(図4)。

図4 HF50XA-5Mの試験後の光軸ズレ測定データ(丸枠内が10μm)

市場には、耐衝撃・振動を特徴にするレンズがほかにも存在するが、多くはその測定・評価手法は公開されていない。また、ネジが「緩まない」ことを特徴にしており、明確な「光軸ズレ」を規定していないレンズもある。

当社は測定・評価手法をホームページ上に動画で公開している(http://mvlens.fujifilm.com/ja/technology/#anc02)。

まとめ

当社は、耐衝撃・振動性能の中でも最もお客様のクリティカルな問題である「光軸ズレ」を抑制することにフォーカスし、差別化した製品を提供している。

これはFUJIFILM独自のメカ設計“光軸変動抑制機構”や国際規格を採用した評価手法の確立、それをテスト・測定する独自解析ソフト「Lens Visualizer」といった多くの最先端技術に基づいている。

今後の新製品に限らず、既存製品にもこの「耐振動・耐衝撃設計」モデルを拡げていく予定である。高解像画像検査装置や3次元測定装置に限らず、光軸ズレ問題にお困りの方は、是非当社の「耐振動・耐衝撃設計」モデルを評価いただきたい。

おわりに

富士フイルムは、長年培ってきた光学技術や精密加工・組み立て技術により、放送用レンズや監視カメラ用レンズなど、高画質デジタル時代に対応したレンズを幅広く提供している。

今後、さらなる成長が見込まれるマシンビジョン分野においても、幅広い設置・環境下で一貫して高い解像性能を実現する豊富なラインナップでお客さまのニーズに応えていく所存である。

※映像情報インダストリアル2018年10月号「画像の決め手!産業用レンズ」特集より転載

問い合わせ
富士フイルム株式会社
光学・電子映像事業部
TEL.048-668-2152
E-mail:kenji.hirata@fujifilm.com
http://mvlens.fujifilm.com/ja/

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