室内で屋外走行シーンを実輝度再現する
「HALDiS ® 」を用いた自動運転/ ADASカメラ検証

自動運転車の実現・普及に向けては、幾多に及ぶ安全性の評価・検証・認証が要求される。株式会社オクテックは、「室内で屋外環境輝度を再現する」ための「HALDiS® 」等を開発し、製品化している。

本稿では、株式会社オクテックの製品の役割・機能を説明し、自動運転の実験を室内で可能とする実輝度ソリューションを紹介する。

オクテックについて

株式会社オクテックは、「室内で屋外環境輝度を再現する」ための、各種ソフトウェア・ハードウェアを開発・提供する2002年創業の国内企業である。光学や交通、情報工学等、学際的に研究・開発し、日本発の製品として国際的に展開している。

開発の背景

自動運転の実現に向けては熾烈な開発競争が世界的に繰り広げられている。同時に、自動運転技術が原因となる死亡事故が数件発生し、安全性を高めることも急務の課題となっている。

自動運転技術に関連する事故の例として、2016年5月に発生した、テスラ社の車の運転手が死亡した事故が挙げられる。オートパイロットモードを作動させたテスラ車が、フロリダ州「国道27号線」を走行中に、信号のない交差点を横切っていたトレーラートラックに衝突した。

NTSB(国家運輸安全委員会)が発表した報告書によれば、テスラ車に搭載されていた車載カメラが、トラックを正確に識別できなかったことが事故の一因であるという。

また、2018年3月中旬、アメリカアリゾナ州で自動運転の実験を行っていたUber社の車が、道路を横断している女性をはねて死亡させた。

NTSBの報告書によると、歩いていた女性の認識が遅れていたことが判明し、車載カメラの性能と「交通環境の認識」精度の、向上と検証が重要であることが再確認された。同時に、公道で実際の車を用いた自動運転実験のリスクと難しさが浮き彫りとなった。

上記のように事故が複数発生し、大きな社会的問題も招いているため、車載カメラで歩行者や他車両等を検知する「交通環境の認識」の精度向上およびその検証・認証が、重要な鍵となっている。

しかし、公道やテストコースといった屋外での自動運転車を用いた実験・評価・検証は、上記のように事故を引き起こすリスクがある。

また、実験車や特定の環境を準備するためにはコストがかかってしまうことや、天候や時刻が変化するので、完全に同じ実験環境は存在せず、再現性の高い実験が困難であり、公平な認識精度の比較や認証のための実験が難しいといった課題もある。

そのため、安全性の面だけではなく、コスト面や再現性・公平性の面からも、室内で自動運転の機能を評価・検証できる実験システムが望まれている。

室内で自動運転機能を検証するためには、検証対象の車にあたかも屋外で走行しているかのように錯覚させる、つまり、カメラの前に運転シーンの映像を表示して、歩行者や他車両などの認識精度について検証を行う必要がある。

この室内検証を従来のディスプレイで行った場合、最大でも6,000cd/m 2 程度までしか表示できず、20,000cd/m 2 を超えることがある屋外シーンと比較すると明るさが大きく不足している。

そのため、カメラの挙動も異なり、検証を行うには限界が生じる。カメラを用いずに、認識アルゴリズムに直接画像や輝度データを入力する方法もあるが、この方法であると、カメラの性能限界や光学的特性を含めた検証、カメラが車に搭載された製品化に近い段階での検証は不可能となる。

これらの理由のため、「室内で屋外環境輝度を再現する」ことを自動車業界から望まれていた。オクテックは、屋外の明るさを室内で再現できる高・実輝度表示システム「HALDiS ® 」の開発を開始し、製品化を行った。

また、「HALDiS® 」に入力するためのコンテンツを作成する実輝度動的記録・解析システム「o-T-Record」、実輝度走行環境シミュレーション「o-T-Sim」の開発・製品化も行った(図1)。

図1 オクテック実輝度ソリューションの関係図

次章より、それぞれの製品の特長や関連性について詳しく解説していく。

高・実輝度表示システム「HALDiS®

弊社の高・実輝度表示システム「HALDiS® 」は、屋外環境を、実際の明るさで、動的映像表示することが可能な装置である。

このシステムで、屋外交通シーンを映像表示し、映像の前にカメラを設置して撮影することで、交通環境の認識精度やアルゴリズム検証が室内で可能となる(図2)。

図2 「HALDiS®」を用いた室内カメラ検知検証のイメージ

「HALDiS® 」は大きく分けて2つの特徴をもっている。

1つ目の特徴は、最大300,000cd/m2 の高輝度で映像表示が可能なことである。一般向け液晶ディスプレイの最大表示輝度は150~300cd/m2 、商業用でも最大6,000cd/m2 であるため、「HALDiS®」は、従来型表示システムの数十~数千倍の明るさで表示可能である。

2つ目の特徴は、入力データと同じ明るさ・色の映像表示ができる「実輝度表示機能」をもつことである。相対値表示をする従来のモニタとは異なり、撮影した屋外環境やシミュレーションの結果を1対1の明るさ・色で絶対値再現できる。

上記2つの高輝度・実輝度の特徴により、20,000cd/m2 を超えることもある屋外の走行シーンを、正確な明るさ・色で、室内で映像表示することができる。従来までは、屋外走行実験に限られていた車載カメラの性能実験が、室内で安全、効率的に可能となる。

また、室内で屋外シーンの明るさを再現できる特性によって、ヘッドアップディスプレイ(HUD)などの先進視覚アシストシステムの視認性の室内評価や、没入感の高いドライビングシミュレータも実現できる。

加えて、入力データと同じ明るさで表示が可能なため、車体デザインや光学設計CADデータを用いたボデーやランプの実輝度実色表示レビューをすることで、開発時間の長期化につながる試作品製作過程を削減し、コストの圧縮につなげることができる。

実輝度動的記録・解析システム「o-T-Record」

「HALDiS® 」で、屋外シーンの明るさを室内再現するためには、そのコンテンツである絶対値の輝度分布データを入力する必要がある。そのため、弊社は実輝度動的記録・解析システム「o-T-Record」を開発・製品化した(図3)。

図3 「o-T-Record」を用いた測定イメージ

高解像度、高周波数、高ダイナミックレンジで走行環境シーンの輝度分布を動的に記録・閲覧できるシステムである(図4)。また、HALDiS ®(高・実輝度表示システム)に本システムで記録したデータを入力することで、撮影したシーンを同じ明るさで、室内動的表示することができる。

図4 「o-T-Record」で測定された輝度分布例

「o-T-Record」を用いて、輝度分布をデータベース化することで、場所・時間・天候を問わず走行シーンの「HALDiS® 」を用いた再現ができる利点がある。

たとえば、夜間に昼間のシーンの輝度再現や、外国で撮影した輝度分布データの国内での再現表示、霧や雪などの珍しい天候の繰り返しの検証実験が可能となる。

実輝度走行環境シミュレーション「o-T-Sim」

「o-T-Record」は、通常の走行シーンの輝度分布データを動的に取得するシステムであるが、撮影が難しいシーンも存在する。たとえば、自動運転車は事故を回避することを求められており、事故直前のシーンで実験を行う必要性がある。

しかし、事故直前シーンを撮影するには、撮影環境のセッティングにコストがかかる問題や、実際に事故が発生するリスクといった安全面の問題がある。

弊社では、上記のような撮影が難しいシーンを再現するために、自動運転検証用途の実輝度走行環境シミュレーション「o-T-Sim」を開発・製品化した(図5)。

図5 「o-T-Sim」のシミュレーション結果イメージ

「o-T-Record」と連携し、実環境の輝度分布と比較することで、太陽・空等の環境パラメータの調整および検証を行っていることが、「o-T-Sim」の大きな特徴である。

「o-T-Sim」のシミュレーション結果を「HALDiS® 」に入力することで、リアルタイムに実輝度表示することができる。

自動運転車をローラに乗せ、交通情報の認識・運転判断を行うAIからの車両制御情報を「o-T-Sim」が受け取り、その情報に応じた走行画像を生成し、「HALDiS® 」で表示する(図6)。

図6 Vehicle-in-the-loopの検証イメージ

自動運転車が検証ループに入った(Vehicle-in-the-loop)の検証になり、より実際の走行環境に近い実験が可能となる。

まとめ

「HALDiS® 」「o-T-Record」「o-T-Sim」それぞれ製品の特長・役割を説明し、自動運転の実験を室内で可能とする実輝度ソリューションを紹介した。

今後ますます自動運転の開発競争の激化が予想され、自動運転/ADAS向けカメラの評価・検証・認証のニーズが高まっていくだろう。

オクテックは、コスト削減や開発時間の短縮、再現性の担保が可能となる室内カメラ動的検証環境を提供することで、自動運転車の早期実現や安全性の向上に貢献していきたい。

※映像情報インダストリアル2018年8月号『自動車産業を支える画像技術』特集より転載

問い合わせ
株式会社オクテック
TEL. 03-3723-9701
E-mail:info@octec.jp
https://octec.jp/

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