今日の製造ラインや物流システムにおける環境は、顧客のニーズを満たすためにますますの自動化が進められている。使用されている設備はロボット装置でも機械装置でも処理能力を維持するためにより速くフレキシブルな対応が求められる。
このことはより多くの監視・管理が必要なことを意味している。しかし、ラインやシステムの監視には2次元認識システムでは十分に対応できなくなってきている。
私たち人間が置かれている環境を3次元で認識するのと同じように、設備もつまり3次元対応で認識可能となる必要が高まってきた。
3次元画像処理により、これまで実現が難しいとされユーザから敬遠されがちな困難なアプリケーションを実現したいとの市場要求に応えるため、センサの専門メーカであるifmでは、簡単に設置および設定が可能な3Dセンサ「O3D」(図1)を開発した。
3Dセンサ「O3D」の特長
O3Dはその核となる部分に特許取得のPMDテクノロジーを採用している。フォトニックミキサデバイス(PMD)テクノロジーにより、タイマー機能を必要としないタイム・オブ・フライト(ToF)方式のセンサチップを開発した。
PMDテクノロジーは、もともと自動車メーカとの合弁事業で開発された。ifmはデジタルPMDチップをイメージセンサに搭載した第一人者である。
私たちifmとPMDテクノロジーの開発者達が手を取り合い、CMOS処理テクノロジーの信号と融合させることで今日様々な消費者向け製品の生産ラインで活用される3Dイメージセンサを提供している。
ifmの3Dセンサシステムの最も重要な要素であるToF原理を利用したPMDテクノロジーは、目に見えない赤外線で検知範囲を照らし、変調源に連結されているPMDセンサが反射光を受信、そして送信信号と受信信号の間の位相シフトを測定する技術である。
この技術により、光の飛行時間、さらには検出対象物までの距離の正確な計測を可能になった。PMDセンサには照明のアクティブ背景抑制機能が内蔵されており、難しい光の状況でさえ高い信頼性を提供する。PMDテクノロジーによりコストを大幅に抑えるのと同時に高い測定精度が得られた。
また、PMDのセンサチップは周囲照明条件、色の変化に対しても優れた耐性を有しており高い信頼性を備えている。ifmのO3Dセンサ分解能は23,000ピクセルを有し、検出対象物からセンサまでの距離を算出する。
これらの 23,000 ピクセルの距離値、また+/-10mmの寸法確認精度を有することにより、様々な物体の検出に対応でき、柔軟性の高い画像処理を実現している(図2、3)。
O3Dセンサ専用アプリ
画像処理システムのソフトウェアは、多くのユーザにとって複雑な領域となっている。生データの画素への処理やパラメータ設定およびパターン認識、各アルゴリズムの開発には、画像処理に対する高度なノウハウが必要とされる。
そこで、複雑なアプリケーションを簡素化することをifmにおける3Dセンサ開発の主要課題として据えた。アプリケーションのためのアルゴリズムをプログラムし、O3Dセンサ専用アプリを開発しセンサに組み込んだ。
専用アプリの調整は素早く且つ容易にでき、およそ3分で最適な測定値の範囲を定義など専用アプリの設定を完了させ、センサの作動を開始することができる。
ユーザは、3D画像処理プログラム構築に対処する必要はなく、専用アプリが内蔵されたO3Dセンサを入手すれば、すぐに実際のアプリケーションで使用することができる。 O3Dセンサに標準で組み込んだ専用アプリには次の2種類あり、実際に市場に供給されている。
1) ボトル抜け監視
2) ボックスの寸法確認
ボトルの抜け監視のアプリでは、製品容器が所定のケースに規定数量入っているか、正しく収められているかを確認および監視することができる。これにより出荷時の欠品やケース損傷の有無などがライン上で検知可能となる。
また、O3Dセンサは検知対象物の色の変化に制約を受けないため、たとえば品種切換え時に容器の色が変更される場合にセンサ自体を取替える必要はなく、ソフトウェアの調整としてセンサ本体の切替えボタンを押すことが唯一必要な作業となる。
これにより素早くセンサ品種切替え対応が実行できるため、高い生産柔軟性を求められる包装機械設備に完璧に対応するソリューションとなる(図4)。
2次包装でのケース完全性監視に加えて、貯蔵および搬送コンベアシステム上での長方形オブジェクトの体積計測が2つ目の専用アプリとなる。このアルゴリズムは、オブジェクトの高さ、幅および長さを決定し、物流センター管理システムWMSまたはERPシステムにイーサネット経由で値を提供することができる。
これにより、体積やストラップの長さなどの物流における重要なパラメータを正確に決定することが可能となり、たとえば自動倉庫システムであらかじめ設定されたパラメータ範囲外にあるオブジェクトが流れた場合、O3Dセンサで不合格オブジェクトを検出することがでる(図5)。
前述2種類の専用アプリによる「ケースの完全性監視」と「ボックスの寸法確認」に加え、3種類目の専用アプリとして「連続的なレベル測定とポイントレベル測定」も市場展開準備の最終段階にきている。この機能では、次のことを行うことができる。
• サイロや備蓄槽、廃棄物貯蔵槽などにおける非透明固体およびその塊の連続レベル測定
• コンベアシステム上の搬送物の充填レベルや帯域割当の監視
測定範囲に定義されたバックグラウンド以上の充填レベルを決定し、粉末、ペーストまたは顆粒などの生産に必要な材料や原材料、食料品、中間材料などのリミットスイッチとして機能しアナログのレベル値を伝送することができる(図6)。
ユーザは前述の専用アプリケーションを使用して、それぞれの目的に合ったカスタマイズされたソリューションを作成することができる。
3Dテクノロジーは機械装置に人間のような3次元で環境を認識する能力を提供し、非体系的な環境でより早く効率的に機能することを可能にするユーザメリットがある。
機能ならびに取り扱いやすさというユーザメリット以上に、O3Dの最大のメリットは恐らく、今日の市場ではコストパフォーマンスが最も優れている3D画像処理センサであると思われる(図7)。
今後のロードマップ
ifm の 3D センサは洗練されたハードウェアをもっており、2つの標準アプリ(ソフトウェア)により2種類の重要なアプリケーションが今日対応可能である。これらに加え、新たなシステムアプリケーションに対応できる専用アプリの開発もすでに計画されている。
次の開発はもちろん、市場の要求に応えるものでなければなないが、現在3Dセンサに備わっている複雑な光条件下での用途に効果を発揮する背景照明抑制機能を始めとした3Dセンサの利点を、将来的には2次元センサにも利用可能にすることが今後の検討課題となる。
■問い合わせ
ifm efector 株式会社
TEL:043-299-2080
info.jp@ifm.com
http://www.ifm.com/ifmjp/web/home.htm
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