アプリケーションに応じた最適な3次元センサの選択

3次元情報を用いた画像処理が求められるようになって、10年以上の年月が経過した。眉唾ものの時代を経て、すでに現在では3次元検査は実用的なレベルであり、マシンビジョンに精通するものにとって現実的な選択肢の1つとなるに至った。本稿では、リンクスの取り扱う3次元製品群の特長を紹介する。

はじめに

3次元情報を用いた検査の普及に最も寄与したものは、やはり3次元情報を取得するデバイスの進化だろう。3次元検査の創世時代では、3次元情報の取得には膨大な時間を要し、得られる計測の質も非常に低いものだった。それが、光源やプロジェクタ、センサなどのデバイスが進化に伴い高精度化され、3次元データの構築もFPGAや撮像素子上で実現されることで高速化の一途を辿ってきた。また、3次元データの構築は、専門的な知識を獲得したものだけが実現できる非常に難易度の高い技術であったが、現在では3次元センサヘッドがこの役割を担っており、ユーザは出力される高さ画像の扱いにのみ習熟すれば事足りる。

すでに3次元センサに習熟している識者には、3次元の画像処理は(ピッキングアプリケーションを除いて)2次元の画像処理よりもずっと簡単だと認識をされていることであろう。3次元手法は原理により得手不得手があり、アプリケーションに応じて最適な手法を選択する必要がある。われわれリンクスも、市場のニーズに合わせて3次元製品を拡充しているが、ユーザにはその特長を正しく理解いただき、最適なアプリケーションに活用いただきたい。本稿では、リンクスの取り扱う3次元製品群の特長を紹介するとともに、アプリケーションに応じた最適な3次元デバイスの選択の指針を示す。

3次元計測の原理

非接触3次元計測は大きく以下の3つの手法に分けられる。速度と計測範囲という指標を用いてこれらを表すと、前者ほど高速だが狭い範囲を、後者ほど低速だが広範囲を計測できる手法となっている(図1)。

➀飛行時間法:Time-of-Flight(TOF)法
➁三角測量法:光切断、縞投影、ステレオビジョンなど
➂焦点法:白色干渉法、共焦点法、合焦点法など


図1 各種3次元計測手法の精度―計測範囲

飛行時間(TOF)法は、光源から出た光が対象物で反射し、センサに届くまでの光の時間の遅れから距離を計測する手法である。数mm~数cmオーダーの精度ながらも、数m~数10mの範囲を計測できるこの手法は、物流管理、ドローンやAGVなどの自動制御、自動ドアの開閉やトイレの洗浄機能など、より民生用途での活用が広まりつつある。これらへの使用に耐えうるために、より密な情報を取るための高解像度化や外乱光耐性などの向上が近年のトレンドである。リンクスでも、VGAの解像度ながら圧倒的な低コストを誇るBASLER社製TOFカメラや、屋外でも使用可能な外乱光耐性をもつEspros社製TOFセンサ「epcシリーズ」を扱っており、今後のさらなる市場拡大が見込まれる(図2)。


図2 BASLER社製TOFカメラ(左)およびEspros社製TOFセンサ(右)

三角測量法は、複数のデバイス(カメラやレーザー)を用いて三角幾何から距離を求める手法だが、FA用途で用いられる3次元手法のほとんどはこの手法を原理としたものであり、この10年で最も洗練が進んだ手法と言うことができる。高速・高精度化が進んだこの手法は、数μm~数10μmオーダーでの計測を数10mm~数100mmの範囲で実現し、FAにおける3次元計測のニーズの広い範囲をカバーすることに成功した。主な手法として、光切断法、縞投影法、ステレオビジョン法があるが、対象物に対してアクティブにレーザーや縞パターンを投影して、カメラを通して変位を測定する光切断・縞投影が現在のFAの主流である。近年ではセンサに画像処理機能まで搭載したスマートセンサ化が加速している。

焦点法は、簡単に言うなれば、Z方向にピントを少しずつ変えながら光学的にフォーカスの合う位置を探索する手法である。このフォーカスの合う位置を見つける手法ごとに、合焦点法、共焦点法、白色干渉法といった手法がある。一般的に後者ほどより精度が高く計測に時間のかかる手法である。この手法の最大の利点はその精度であり、白色干渉法ではナノオーダーでの計測が可能であり、計測精度のリファレンスともなるような手法である。しかしながら計測の範囲は非常に狭く(数mm~数10mm)、計測には時間も要する(数秒~数10秒)技術であるため研究開発などの用途がほとんどである。近年では高速化が急速に進んでおり、リンクスでも、白色干渉法を原理としながらも1秒以下での計測を可能とする Heliotis 社製 3 次元センサ「heliInspectシリーズ」を扱っており、FAにおけるサブミクロン精度の計測という新しい可能性を提供している(図3)。


図3 白色干渉法3次元センサ「heliInspectシリーズ」

リンクスの取り扱う3次元製品群

本稿では、特にFAにおいて広く活用されている三角測量法にフォーカスし、LMI社製「Gocatorシリーズ」およびChromasens社製「3DPIXAシリーズ」の2製品を紹介する。ともに三角測量を原理としながらも、その製品性は大きく異なる。Gocatorは業界トップクラスの精度と速度に加えて、圧倒的なユーザビリティを提供する。3次元センサでありながら、画像処理機能までを本体1つで提供するスマートセンサでもある。一方3DPIXAは、従来の三角測量ベースの3次元デバイスの中で頭一つ抜きんでた速度・精度性能を誇る。また、使用する照明方式によって様々な対象物に対応できるのも大きなメリットの1つだ(図4)。


図4 リンクスが取り扱う各種3次元製品群の位置づけ

1)LMI社製「Gocatorシリーズ」 
Gocatorシリーズは、光切断および縞投影を計測原理とする3次元センサである。計測ヘッドには各種画像処理を行うCPUが内蔵されており、計測だけでなく、その後の画像処理による検査までを本体のみで行うことができる「オールインワン3次元スマートセンサ」である(図5)。


図5 オールインワン3次元センサ「Gocatorシリーズ」

本体にWebサーバが内蔵されており、LANケーブルでPCを接続するだけでブラウザ上からすべての設定、画像処理などのプログラミングを行うこともできる。コントローラ機能も筐体に内蔵されているので別途用意する必要がなく、寸法の計測結果や合否判定結果も直接本体から内蔵されたPLCプロトコルを介して工場設備の機器に出力することも可能である。本体のみで完結してしまうため、圧倒的なコストメリットも同時に提供する。3次元計測の困りごとは「まずGocator」というべき完成度だ(図6)。


図6 Gocatorシリーズの圧倒的なユーザビリティ

自動車の組み立て工程におけるシール材の厚み、幅計測などは光切断タイプのGocatorに最適なアプリケーションの1つだ。堅牢なGocatorはロボットでの引き回しにも問題なく、高輝度レーザーによりシール材塗布直後の3次元形状を安定して捉え、内蔵の計測ツールを用いて筐体の中で幅・高さに対してOK/NGを即座に判断しPLCに出力する(図7)。


図7 Gocatorによるシール材の検査

2)Chromasens社製「3DPIXAシリーズ」
3DPIXAシリーズは、高さ画像とカラー画像を同時に取得するステレオビジョン方式のカラーラインスキャンカメラである。ステレオビジョンでの3次元計測は抜けが多く使い物にならないという知見をもった読者も多いかと思う(筆者もその1人であった)が、本製品は良い意味でその感覚を裏切るものだ(図8)。


図8 ステレオラインスキャンセンサ「3DPIXAシリーズ」

ステレオビジョンでは、位置関係が既知の左右2台のカメラで対象物を撮像し、左右の画素の対応関係から高さを算出する手法である。左右の対応を取るにあたって重要になるのが、対象物のテクスチャをいかに可視化するかという点である。3DPIXAでは、最高レベルの画質を誇るTri-linear CCDの高解像度ラインセンサと高分解能の光学系を用いて、対象物の本来もつマイクロテクスチャを捉えることで質の高い3次元計測を可能にしている。たとえば、真っ白なコピー用紙は3DPIXAにとって十分なテクスチャをもつ対象物である(図9)。


図9 ステレオビジョンの計測原理

3DPIXAの最大の特長はその精度と速度にある。水平分解能5μm/pixのモデルでは、高さ方向の分解能はサブミクロンを達成しながらも、35×105mmをわずか1秒でスキャンする速度を誇る。これは従来の光切断方式に比べると、幅方向で5倍ほど、搬送方向で10倍ほど、トータルで50倍ほどの速度性能である(図10)。


図10 3DPIXAのラインナップ

また、高さ画像に加えて、高画質のカラー画像も同時に取得できる。特に外観検査の場合には、3次元データだけで処理が完結できるケースは稀である。異物や打痕に加えて、細線キズや色異常などを検出したいケースでは、3次元センサに加えて結局通常のカメラでも検査が必要になってしまう。3DPIXAではこれらを1台にまとめてしまうことができるため、コストメリットも出しやすい。また、カラー画像と高さ画像は座標系が完全に一致している(全画素がR,G,B,高さの4つの情報をもっていると考えればよい)ため、これらを高度に組み合わせた画像処理はユーザの腕の見せ所だ(図11)。 


図11 カラー画像と高さ画像の同時出力

マシンビジョンにおいては、対象物に応じて適切なライティングを選択するのは当然の考え方であるが、3次元センサの場合には照明が内蔵されており、調整の効くものではない場合がほとんどである。それはそれで扱いが簡易というメリットがあるが、3DPIXAの場合には照明は別途用意するため、マシンビジョンの通常の考え方が適用できる。特に反射の強い金属面などは、明視野・暗視野方式ではハレーションや黒抜けが発生し、結果として3次元データに抜けやノイズが発生しやすい。3DPIXAではチューブタイプの照明により全方向から均一な拡散光を照射することで金属そのものの地を捉えることができ、質の高い計測を実現することができる(図12)。


図12 対象物に応じた適切な照明の選択

3DPIXAの特長を活かしたアプリケーションとして、細線ピンのコプラナリティ計測が挙げられる。たとえば先端径がφ200μmほどの細線ピンでは、従来の光切断では水平分解能不足や先端のハレーションなどの影響で満足な計測結果が得られない。また、密度が高い場合には、隣のピンに隠れてしまいレーザー光が計測したいポイントに照射できないという課題もある。3DPIXAの5μm/pix分解能モデルでは、ピン先端を十分な分解能で解像するのに加えて、ピン先端が左右カメラにとって対応の付きやすい特徴をもっていることも相まって、質の高い計測を実現できる。また、3DPIXAの左右カメラの角度は±5~10度程度となっており、計測不能領域が少ないのも隠れた魅力である。 これを35×105mmの広範囲に対してわずか1秒でスキャンするのだから、インラインでの使用にも十分耐えうる(図13)。


図13 3DPIXAによる細線ピンのコプラナリティ検査

おわりに

FAにおいて広く活用されている三角測量法にフォーカスし、「Gocatorシリーズ」および「3DPIXAシリーズ」の2製品の特長を紹介した。リンクスでは、本稿で紹介した製品の無償計測評価を随時受け付けており、興味のある方はリンクスHPからぜひ問い合わせいただきたい。今後もより高精度に、より高速に、より容易に、より安価になっていく3次元センサの活用シーンは確実に増加していくだろう。リンクスは高機能な3次元デバイスの提供に今後も注力していくとともに、ユーザプリケーションに対して最適な提案に尽力していく。これらがユーザシステムの価値向上の一助となれば幸いである。

株式会社リンクス
TEL:03-6417-3371
E-mail:info@linx.jp
URL:https://linx.jp/

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