10GigE対応! Baumer社製GigE対応工業用カメラシリーズ

近年、産業用カメラの技術進化といえば、CCDからCMOSへの移行、それに伴う高解像度化と高速化、そして、フレームグラバを必要としない汎用インタフェイスへの対応に、過酷な条件下での動作を保証する耐環境性が挙げられるであろう(図1)。

パソコンのネットワーク用IF規格として馴染み深いEthernetも、1、2.5、5、10Gbpsへと産業用カメラの撮像に十分な高速化を実現し、当該規格対応カメラの製品化に進められている。

本稿では、産業用カメラとしては世界最多ラインナップ(他社圧倒の200以上)を誇るBaumer社製産業用カメラから、最新の汎用IFのGigE対応カメラおよびGigEカメラを用いたマシンビジョンシステム構築に有用な最新情報を紹介する。

産業用カメラとデジタルインタフェイス

産業用カメラは、主に製造・医療・食品業界における外観検査やロボット制御等のマシンビジョン分野で利用される。

カメラとしての画質性能はもちろんのこと、画像の高速転送や搬送系および照明系など外部制御機能に対する要求が強く、それら仕様を満足するデジタル IF 規格(CameraLink規格をはじめ、より高速転送を可能とするCameraLinkHS規格やCoaXPress規格)をベースに製品化が進められてきた。

また、産業用カメラを用いたシステム開発においても、コスト的に追加となるが当該規格対応のフレームグラバを使用し、フレームグラバがもつ外部信号制御やバッファリング機能を利用することで、フレーム落ちなどの心配のいらないリアルタイムなシステム構築を可能としている。

一方、コンピュータに標準搭載されている周辺機器接続用のUSBや、外部ネットワークとの通信接続用の Ethernet といった汎用 IF においても、CameraLink規格と同等の高速性能を達成しており、汎用IF対応カメラでの高速なマシンビジョンシステムの構築が可能となってきた(図2)。

図2 Baumer社製産業用カメラの変遷

また、製品化に対しては、前述のCameraLinkがマシンビジョン用デジタルIF規格として制定されていたのに対し、汎用IFは、異なる用途目的で規格化されているため、Ethernetに対してはGigEVision規格を、USBに対しては、USB3Vision規格が制定されている(図3、4)。

図3 デジタルインタフェイス規格

図4 デジタルインタフェイス(ケーブル長×バンド幅)

規格は、デバイス認識と通信確立、デバイスのレジスタアクセス、画像データの転送、非同期イベント通知の項目からなり、メーカ側では、規格対応の産業用カメラはもとより、カメラ用ドライバ、撮像制御用ソフトウェアを提供している。

Baumer 社製産業用カメラシリーズ

産業用カメラの最多ラインナップ(他社圧倒の200以上)を誇るBaumer社製品から最新情報を紹介する(図5)。

図5 Baumer社製産業用カメララインナップ(カメラIF×解像度×フレームレート)

Baumer社製品は、世界最高水準の画像品質と堅牢な耐久性はもとより、各インタフェイスのバンド幅の限界性能を引き出す高速化技術も優れ、10GigE対応カメラでは、業界最速の高解像度1200万画素で92fpsを達成している。高速性にかけては、カメラ内メモリを設け、同解像度で335fpsを実現している。

1)CX/CX IPシリーズ
 CXシリーズは、超小型ボディ(29mm×29mm×38mm)に最先端CMOSテクノロジの粋を尽くした高性能産業用CMOSカメラである。

最先端CMOSセンサのSONY社製「Pregius」、ON Semiconductor社製「PYTHON」をベースに、画像品質に有効なグローバルシャッタ機能、高感度耐性-高ダイナミックレンジ機能を搭載、大容量の内部バッファにより安定した高速転送(VGAサイズ時403fps)を提供している。

解像度は、VGAサイズから12Mサイズまでと幅広く、レンズは業界標準のCマウントを採用。外部入出力もシーケンサとの親和性の高いマルチプルIOを搭載しており、耐圧性、耐熱性に優れたメタルハウジング仕様とM3 マウントの全面配置による柔軟かつ迅速なシステム設置が可能である。

CX IPシリーズは、さらに、PoE、防水防塵(IP65/IP67)、耐振動10G、耐衝撃100G、-40~70℃広動作温度帯を実現した耐環境モデルである。

さらに、シーケンサ機能と4チャンネルまでの出力機能を備え、照明コントローラや外部IOコントローラを使用することなく外部制御を可能とする(図6)。

• センサ:SONY社製CMOS「Pregius」/ ON Semiconductor社製CMOS「PYTHON」
• 解像度:VGA~12Mピクセル
• インタフェイス:GigE、USB3
• 最高フレームレート(VGAサイズ時): GigE(403fps)、USB3(891fps)
• 帯域:モノクロ(8bit/10bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG10)
• レンズマウント:Cマウント
• 外部入出力:デジタルINx1、デジタルOUTx1、GPIOx2(マルチプルI/O)
• 電源:M8コネクタ
• サイズ(横×縦×高さ:mm): 29×29×38~36×36×49
• 重量(g):90~120
• 環境:耐熱-40~70℃/保護等級 IP65/67(IPシリーズ)

図6 「CX-IP」シリーズの特徴

2)LX 10GigEシリーズ
 LX 10GigE シリーズは、最新の SONY 社製「Pregius」と、10GigEインタフェイスを組み合わせた高画質画像の10GigEによる高速、長距離転送可能なハイエンドモデルである。10GigEによる高速性に加え、71dBのハイダイナミックレンジにより圧倒的な高精細撮像を可能としている。

また、標準で、防水・防塵(IP65/67)、温度帯域0~65℃に加え、システム化しやすい、フラッシュコントロール制御および、リキッドレンズ(図7)によるオートフォーカス機能まで搭載するフラッグシップモデルである。

• センサ:SONY社製CMOS「Pregius」
• 解像度:3M~12Mピクセル
• インタフェイス:10GigE
• 最高フレームレート(12M時):64fps
• 帯域:モノクロ(8bit/10bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG10)
• レンズマウント:Cマウント
• 外部入出力:デジタルINx2、デジタルOUTx4
• 電源:M12コネクタ
• サイズ(横×縦×高さ:mm):60×60×99.7
• 重量(g):485
• 環境:耐熱0~65℃/保護等級 IP65/67

図7 CORNING社製「Varioptic lens」

3)QXシリーズ
 QXシリーズは、10GigEの性能を最大限に活かしたBaumerシリーズ最高速カメラである。最新のAMS社製CMOS「CMV」と10GigE技術を組み合わせ、高解像度1,200万画素で92fpsを達成する業界最速の10GigEカメラである。

さらに、カメラ内に2GBメモリを搭載しており、最大169枚までの画像を1,200万画素で最大335fpsで撮像できる。運動・衝撃・衝突実験や、工業用プロセス分析、医療用精細胞分析など高速高精細撮像分野に最適である(図8)。

• センサ:AMS社製CMOS「CMV」
• 解像度:12Mピクセル
• インタフェイス:10GigE
• 最高フレームレート:92fps(カメラ内335fps)
• 帯域:モノクロ(8bit/10bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG10)
• レンズマウント:M58マウント
• 外部入出力:デジタルINx2、デジタルOUTx4
• 電源:M8コネクタ
• サイズ(横×縦×高さ:mm):70×70×99.15
• 重量(g):640
• 環境:耐熱5~65℃/保護等級 IP40

図8 「QXシリーズ」の用途

4)MXシリーズ
 MXシリーズは、基盤タイプの産業用カメラである。組み込みシステムに最適な高性能フレキシブルボードで、組み込み系システムなどさまざまな設置スペースに搭載できるように、センサ回路部(28.5×28.5×8.3)[mm]とシステム回路部(43.4×43.4×8.2)[mm]を分離し、柔軟なフレキシブルケーブルで接続した基盤構成で提供している。

センサ部は、SONY社製CCD「ICX」および、AMS社製CMOS「CMV」、システム部は、オーバーラップトリガ機能、トリガ信号のデバウンサ機能、高速転送に有効な大容量内部バッファ、マルチスキャン転送機能、マルチプルIOなど標準装備している(図9)。

• センサ:SONY社製CCD「ICX」/ AMS 社製「CMV」
• 解像度:VGA~4Mピクセル
• フレームレート:最高160fps(VGAサイズ時)
• 帯域:モノクロ(8bit/12bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG12/YUV)
• レンズマウント:Cマウント
• インタフェイス:GigE
• 外部入出力:デジタルINx1、デジタルOUTx1
• 電源:M8コネクタ、PoE
• サイズ(横×縦×高さ:mm): センサ部:28.5×28.5×8.3
システム部:48×48×8.2
• 重量(g):30
• 環境:耐熱5~65℃/防水防塵 IP40

図9 「MXシリーズ」の構成

GigEVisionの撮像制御

Baumer社製産業用カメラシリーズでは、GigE Visionのほか、USB Vision、CameraLink対応版を提供している。

CameraLink規格対応カメラであれば、フレームグラバメーカが、撮像用ライブラリを提供しているが、GigE Vision規格(および、USB Vision)においては、GEN<i>CAMと呼ばれる標準プログラミングインタフェイスに準拠しており、カメラメーカ側から当該規格に準拠した撮像用APIや、撮像用ツールを提供している。

Baumer社製品では、カメラ撮像用の開発用ツールキットとして「BaumerGAPI(カメラの状態確認に便利なビューワツール「CameraExplorer」含む)を無償提供している(図10)。

図10 開発ツールキット「GAPI」

「GAPI」は、汎用性の高いPC(X86/X64系)プラットフォーム用および、組み込み主流のARM系プラットフォーム用を準備し、インタフェイス別に最適化されたドライバにより、非常にシンプルなコーディングで開発できる。

「CameraExplorer」は、パソコンのUSBコネクタに接続するだけで、カメラを自動認識し撮像を開始するため、初回の動作確認や、プログラミング前の状態確認など効率のよい開発環境を提供している。

また、撮像後に行う画像処理においては、パワフルでハイエンドな画像処理ライブラリMatrox社製画像処理ライブラリ「MIL10」などとの親和性も高く、ストレスなく、高品質で高速なシステム構築が可能である(図10)。

また、搬送している対象ワークを通過のタイミングで撮像を行いたい場合、従来は、対象ワークの通過を知らせる信号をカメラ1台1台、カメラのトリガセンサに合わせて接続を行う必要があったが、ToE(TriggerOverEthernet)機能にて、GigEカメラでも、複数台の同時撮像などの制御が非常に簡単に構築できるようになってきた。

たとえば、Matrox社製GigE対応フレームグラバ「MatroxConcord」には、標準でToE制御を搭載しているため、1つの外部トリガを入力するだけで複数台のGigEカメラを同時撮像が可能である(図11)。

図11 Matrox社製GigE対応フレームグラバ「Concord PoE」

さいごに

製造ラインの検査計測を主な用途にもつマシンビジョン関連製品は、その性質上、安定稼働を第一に、実績ある従来技術の継承と最新技術の精査選定を繰り返し、常に現行技術を凌駕するという流れを踏んできた。

そして、われわれは、新たに生まれてくる技術に次代の先進性を感じながら、これからも、より良い素材を選定し、新しいモノづくりを進めていく。 本稿で紹介した製品、用法が、貴社システム・製品の一素材、一案として活用いただければ幸甚である。

※映像情報インダストリアル2019年3・4月号「I/F別にみる産業用カメラ」特集より転載

※Baumerおよび、製品名は、ドイツBaumer社の登録商標。
※Matroxおよび、製品名は、カナダMatrox社の登録商標。
※SONYおよび、製品名は、SONY社の登録商標。
※AMSおよび、製品名は、AMS社の登録商標。
※ON Semiconductorおよび、製品名は、ON Semiconductor社の登録商標。
※Corning社および、製品名は、Corning社の登録商標。
※デジタル伝送規格は、AIA(Automated Imaging Association)、JIIA(Japan Industrial Imaging Association)、USB-IF(USB Implementers Forum,Inc)各規格資料参考。
※本稿中の仕様は、予告なく変更する場合がある。

問い合わせ
キヤノンITソリューションズ株式会社
TEL.03-6701-3450
E-mail:imag-info@canon-its.co.jp
https://www.canon-its.co.jp/solution/image/

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