USB3 Vision規格対応! Baumer社製産業用カメラシリーズ

近年、産業用カメラの技術進化といえば、CCDからCMOSへの移行、それに伴う高解像度化と高速化、そして、画像入力ボード(フレームグラバ)を必要としない汎用インタフェイスへの対応が挙げられるであろう。

特に、パソコンの周辺機器接続用のシリアルバス規格として馴染み深いUSBは、5Gbpsの高速転送を可能としたVer3.0(現在3.1)の登場以来、その製品化に拍車がかけられている。

本稿では、産業用カメラとしては世界最多ラインナップ(他社圧倒の200以上)を誇るBaumer社製産業用カメラから最新のUSB3カメラシリーズの各機能、特徴をはじめ、システム構築に必要な撮像制御用ソフトウェア(無料)について紹介する。

USB3とUSB3 Vision 規格

これまでの産業用カメラは、主に製造・医療・食品業界における外観検査やロボット制御等のマシンビジョン分野で利用されることから、カメラとしての画質性能はもちろんのこと、画像の高速転送や搬送系との連動など外部制御機能に対する要求が強く、マシンビジョン用デジタルインタフェイス規格(CameraLink規格および、より高速転送を可能とするCoaXPress規格)をベースに製品化が進められてきた。

カメラとPC間の接続には、当該規格対応のフレームグラバを使用し、フレームグラバがもつ外部信号制御やバッファリング機能を利用することで、フレーム抜けなどないリアルタイムな撮像制御が可能となっている。

一方、コンピュータに標準搭載されている周辺機器接続用のUSBや、外部ネットワークとの通信接続用のEthernetといった汎用IFも高速化が進み、2013 年1月に規格化された USB ver3 にてCameraLink規格と同等の5Gbp達成を皮切りに、産業用カメラの新しいIFとして採用され始めた。

製品化に際しては、前述のCameraLinkがマシンビジョン用デジタルIF規格として制定されていたのに対し、汎用 IF についても規格化がなされ、EthernetについてはGigEVision規格、USBについてはUSB3 Vision規格が制定されている(図1)。

図1 マシンビジョンデジタルインタフェイス規格

規格は、デバイス認識と通信確立、デバイスのレジスタアクセス、画像データの転送、非同期イベント通知の4項目からなり、メーカ側では、それぞれの仕様を満足する撮像デバイスはもとより、カメラ用ドライバ、撮像制御用ソフトウェアを開発提供している。

Baumer 社製USBカメララインナップ(図2、3)

 産業用カメラの最多ラインナップ(他社圧倒の200以上)を誇るBaumer社製品からUSB Vision対応産業用カメラを紹介する。Baumer社製品は、世界最高水準の画像品質と堅牢な耐久性、そして各インタフェイスともその限界速度を達成する高速化技術にも定評があり、特にUSBカメラでは、最高速度891fps(VGA)を実現しており、汎用インタフェイスカメラの可能性を引き上げている。

図2 Baumer社製産業用カメララインナップ(解像度×インタフェイス対応表)

図3 Baumer社製USBカメラシリーズと製品ラインナップ

<CXシリーズ>
CXシリーズは、超小型ボディに最先端CMOSテクノロジの粋を尽くした高性能産業用CMOSカメラである。最先端CMOSセンサのSONY社製「Pregius」、ON Semiconductor社製「PYTHON」をベースに、画像品質に有効なグローバルシャッタ機能、高感度耐性-高ダイナミックレンジ機能を搭載、大容量の内部バッファにより安定した高速転送(VGAサイズ時891fps)を提供している。

解像度は、VGAサイズから12Mサイズまでと幅広く、レンズは業界標準のCマウントを採用。外部入出力もシーケンサとの親和性の高いマルチプルIOを搭載しており、耐圧性、耐熱性に優れたメタルハウジング仕様とM3マウントの全面配置による、柔軟且つ迅速なシステム設置を可能としている(図4)。

図4 Baumer社製産業用カメラ「CXシリーズ」

• センサ:SONY社製CMOS「Pregius」、ON Semiconductor社製CMOS「PYTHON」
• 解像度:VGA~12Mピクセル
• フレームレート:最高891fps(VGAサイズ時)
• 帯域:モノクロ(8bit/10bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG10)
• レンズマウント:Cマウント
• インタフェイス:USB3
• 外部入出力:デジタルIN×1、デジタルOUT×1、GPIO×2(マルチプルI/O)
• 電源:M8コネクタ
• サイズ(横×縦×高さ:mm):29×29×38~36×36×49
• 重量(g):90~120
• 環境:耐熱 5~65度/保護等級 IP40

<VisiLineシリーズ>
VisiLine シリーズは、最新の CMOS センサCMOSIS社製「CMV」とUSB3インタフェイス技術を組み合わせたハイグレードモデルである。同社最多導入実績により培われた徹底した熱管理と堅牢な回路設計をもとに、HDR、色補正、FPN補正などの最新機能を加え、最上の画像品質を提供している。

センサはCCDとCMOSの両タイプ、撮像帯域はモノクロとカラー、さらに、マルチプルIO機能を標準装備するなど高品質高機能なモデルを取り揃えている(図5)。

図5 Baumer社製産業用カメラ「VisiLineシリーズ」

• センサ:SONY社製CCD「ICX」、CMOSIS社製CMOS「CMV」
• 解像度:VGA~1.2Mピクセル
• フレームレート:最高376fps(VGAサイズ時)
• 帯域:モノクロ(8bit/12bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG12/YUV)
• レンズマウント:Cマウント
• インタフェイス:USB3
• 外部入出力:デジタルIN×1、デジタルOUT×1
• 電源:M8コネクタ、PoE
• サイズ(横×縦×高さ:mm):33×33×48
• 重量(g):125~150
• 環境:耐熱5~50度/保護等級 IP40

<PXシリーズ>
PXシリーズは、感度標準値において1μm2辺り1,000mV以上の高い感度特性をもつSONY社製CCD「EXview HAD CCD II TM 」搭載し、僅かな濃淡差を高階調で再現する16bitADC搭載超高感度カメラである。

解像度6M/12Mピクセル、帯域深度は、8/12/16bitを備え、EXview HAD CCD II TM がもつ4タップ高速転送により、高解像度6Mピクセルで最大フレームレート25fpsを達成するなど高速性にも優れている(6)。

図6 Baumer社製産業用カメラ「PXシリーズ」

• センサ:SONY社CCD 「EXview HAD CCD II TM 」
• 解像度:6M/12Mピクセル
• フレームレート:最高25dps(6Mサイズ時)
• 帯域:モノクロ(8bit/12bit/16bit)
• レンズマウント:Cマウント
• インタフェイス:USB3
• 外部入出力:デジタルIN×1、デジタルOUT×3
• 電源:M8コネクタ
• サイズ(横×縦×高さ:mm):45×45×47
• 重量(g):153
• 環境:耐熱5~65度/保護等級 IP40

<MXシリーズ>
MXシリーズは、高性能VisiLineシリーズをベースにした基盤タイプの産業用カメラである。組み込みシステムに最適な高性能フレキシブルボードで、組み込み系システムなど様々な設置スペースに搭載できる。センサ回路部(28.5×28.5バル8.3)[mm]とシステム回路部(43.4×43.4×8.2)[mm]を分離し、柔軟なフレキシブルケーブルで接続した最小の基盤構成で提供している。

センサ部は、SONY社製CCD「ICX」および、CMOSIS社製CMOS「CMV」、システム部は、VisiLineシリーズと同様に、オーバーラップトリガ機能、トリガ信号のデバウンサ機能、高速転送に有効な大容量内部バッファ、マルチスキャン転送機能、マルチプルIOなどを標準装備している(図7)。

図7 Baumer社製 産業用カメラ「MXシリーズ」

• センサ:SONY社製CCD「ICX」、CMOSIS社製「CMV」
• 解像度:VGA~4Mピクセル
• フレームレート:最高160fps(VGAサイズ時)
• 帯域:モノクロ(8bit/12bit)、カラー(BayerRG8/BayerRG12/YUV)
• レンズマウント:Cマウント
• インタフェイス:USB3
• 外部入出力:デジタルIN×1、デジタルOUT×1
• 電源:M8コネクタ、PoE
• サイズ(横×縦×高さ:mm):センサ部:28.5×28.5×8.3/システム部48×48×8.2
• 重量(g):30
• 環境:耐熱5~65度/保護等級 IP40

Baumer社製産業用カメラシリーズでは、インタフェイスにGigE、CameraLink対応のほか、その他シリーズも充実しており、マシンビジョン開発者に対し、十分な選択肢を提供している。

USBカメラの撮像制御

CameraLink規格対応の産業用カメラであれば、フレームグラバメーカが、撮像用ライブラリを提供しているが、USB3 Vision(および、GigE Vision)規格対応カメラにおいては、規格の中で、GenICamと呼ばれる共通のプログラミングインタフェイスが制定されており、開発元となるカメラメーカが、当該規格に対応した撮像用APIや、撮像用ツールを提供している。

Baumer社製品では、カメラ撮像用の開発用ツールキットとして「Baumer GAPI(カメラの状態確認に便利なビューアツール「CameraExplorer」含む)を無償提供している(図8)。

図8 Baumer社製ソフトウェア「Baumer GAPI」

「GAPI」は、汎用性の高いPC(X86/X64系)プラットフォーム用および、組み込み主流のARM系プラットフォーム用が準備されており、インタフェイス別に最適化されたドライバとあわせ、非常にシンプルなコーディングが可能となっている。

「CameraExplorer」は、カメラをパソコンのUSBコネクタに接続するだけで、自動認識し撮像が開始できるため、初回の動作確認や、プログラミング前の状態確認などに適している。

また、撮像後に行う画像処理においては、パワフルでハイエンドな画像処理ライブラリMatrox社製画像処理ライブラリ「MIL10」などとの親和性も高く、ストレスなく、高品質で高速なシステム構築が可能である(図9)。

図9 Matrox社製 汎用画像処理ライブラリ「MIL10」

さいごに

製造ラインの検査計測を主な用途にもつマシンビジョン関連製品は、その性質上、安定稼働を第一に、実績ある従来技術の継承と最新技術の精査選定を繰り返し、常に現行技術を凌駕するという流れを踏んできた。

そして、われわれは、新たに生まれてくる技術に次代の先進性を感じながら、これからも、より良い素材を選定し、新しいモノづくりを進めていく。本稿で紹介した製品、用法が、貴社システム・製品の一素材、一案としてご活用いただければ幸甚である。

※映像情報インダストリアル2018年5月号より転載

※ Baumerおよび、製品名は、ドイツBaumer社の登録商標。
※ Matroxおよび、製品名は、カナダMatrox社の登録商標。
※ SONYおよび、製品名は、SONY社の登録商標。
※ CMOSISおよび、製品名は、CMOSIS社の登録商標。
※ ON Semiconductorおよび、製品名は、ON Semiconductor社の登録商標。
※ デジタル伝送規格は、AIA(Automated Imaging Association),JIIA(Japan Industrial Imaging Association),USB-IF(USB Implementers Forum,Inc)各規格資料参考。
※本稿中の仕様は、予告なく変更する場合がある。

問い合わせ先
キヤノンITソリューションズ株式会社
TEL:03-6701-3450
E-mail:imag-info@canon-its.co.jp
https://www.canon-its.co.jp/solution/image/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください