高度な産業用画像処理に最適な CoaXPress 2.0

CoaXPress(CXP)は、産業用画像処理規格として近年策定されたもので、レイテンシー(遅延)の少ない高速データ転送が可能である。

約10年にわたり多くの高度な用途で採用されてきたCoaXPressだが、その新版としてさまざまな改良が加えられたCoaXPress 2.0がまもなく発表される予定である。本稿では、新版と旧版の規格を比較し、その特長について紹介する。

高速データ転送を可能にするCoaXPress

生産の自動化や光学検査における産業用画像処理では、データ転送速度の向上が注目されている。センサの性能によってデータ転送速度が左右されていた時代とは異なり、今では高いフレームレートに対応したCMOSセンサの普及も進んでいるが、GigEやUSB 3.0では十分な速度が得られないことが大きな問題になっている。

しかし、近年登場したCoaXPressなどの高速インタフェイスを導入すれば、最新のイメージセンサの可能性を引き出し、各種用途で最高の性能を発揮することができる。

1)CoaXPressの歴史
 CoaXPressでは、75Ωの同軸ケーブル(RG11、RG6、RG59など)が採用されている。これらのケーブルのなかには、既存のアナログシステムに使用されているものもあり、デジタルカメラへの移行の際に再利用することも可能だが、その品質によって許容長さが大きく変わる。

プラグについては、以前までアナログシステム用のBNCプラグが一般的だったが、その後よりコンパクトなDIN1.0/2.3プラグに取って代わるようになった(図1)。

図1 DIN1.0/2.3プラグ(左)とBNCプラグ×4(右)

2)CoaXPress 1.1.1の特長:ケーブルと速度
 CoaXPressの1チャンネル当たりの最大転送速度は6.25Gbpsで、チャンネル数に制限はない。前述のとおり、最大ケーブル長はケーブルの品質によって変わるが、転送速度にも大きな影響がある。一般的なケーブルを使用した場合の数値を表1に示す。

表1 転送速度によって異なる最大ケーブル長

カメラへの電源供給が可能な同軸ケーブルもあり、その場合はケーブル1本でシステムを運用できる。また、CoaXPressのプロトコルは少ないレイテンシー(遅延)で高いリアルタイム性を実現しており、複数のカメラを搭載した高度なシステムでも大量データ通信が可能である。

3)CoaXPress 2.0の特長
インタフェイスのさらなる高度化に向けてCoaXPressの改定作業が順次進められているが、まもなく発表予定のCoaXPress2.0には、4つの技術革新が見られる。

そのうちの1つが超高速データ転送に対応したCXP-10とCXP-12の追加である。最大12.5Gbpsという産業用画像処理業界において、屈指の速度を実現している(表2)。電源供給も可能なCoaXPressケーブルを使用すれば、1本のケーブルで高フレームレート対応の高解像度センサと大量のデータをやり取りできる。 

表2 最大転送速度12.5Gbpsを誇るCoaXPress 2.0

2つ目の技術革新はプラグの統一で、バヨネット式のBNCプラグの利便性とDIN1.0/2.3プラグのコンパクトさを兼ね備えたマイクロBNCプラグ、そしてHD-BNCプラグを新たに採用している(図2)。プラグを統一することでプラグの選定が簡単になり、シンプルなシステム構築が可能になった。

図2  マイクロBNCプラグ搭載のフレームグラバ
(1チャンネル)

3つ目はGenTL規格への準拠である。これにより互換性が向上し、さまざまな種類のカメラ、フレームグラバと従来の画像処理ライブラリを組み合わせて使用できるようになっている。

そして最後の1つは、選択肢の増加によるメリットを最大限に享受できることである。データ通信機器の多様化と低価格化が進み、トランシーバやFPGAの分野でも新たな進展があった結果、最近では複数のメーカから長い耐用年数を誇るコストパフォーマンスの高い製品を入手できるようになっている。

CoaXPress 2.0を利用したマシンビジョンシステムの構築例

 図3は、CoaXPress 2.0システムの構築例を示したものである。コンパクトなUSB 3.0対応カメラやGigE対応カメラと比べると、CoaXPress対応カメラはサイズがやや大きめである。これは高速センサを内蔵していることが一因で、その結果としてセンサから発生する大量の熱を放散させる必要がある。

図3 CoaXPress 2.0システムの構築例

まもなく発表予定のCoaXPress 2.0は、カメラ背面の配線がシンプルになっていることも大きな特長で、同軸ケーブルで電源供給とトリガを行うため、I/Oケーブルが不要になるなど、従来とは異なり、システムに接続するデータケーブルの数が少なくて済む。

また、新たに採用されたマイクロBNCプラグは耐用性が高く、多くのケーブルを必要としないため、システムを簡単かつスムーズに構築できる。ただし、CPUとホストコンピュータにかかる負荷を軽減するため、どのシステムにもフレームグラバかインタフェイスカードを搭載しなければならない。

どちらを選ぶかは、予算や技術要件によって異なる。フレームグラバの場合は、前処理や画像処理といった高度な機能も内蔵している。

CoaXPress 2.0を導入するメリット

本項では、CoaXPress 2.0を導入するメリットについて詳しく解説する。

1)高いデータ転送速度(大量通信が可能)
最大転送速度12.5Gbpsを誇るCoaXPress 2.0は、業界屈指の高速インタフェイスである。

2)十分なケーブル長(長距離通信が可能)
 インタフェイスとしてUSB3.1 Gen1やCameraLinkを採用した場合、最大ケーブル長は10mに限定されるが、CoaXPress 2.0に移行すれば、高速通信でも最大40m、低速通信なら延長ケーブルを使用して100m以上のケーブル長を確保できる。

3)プラグアンドプレイ対応(接続が簡単)
 1本の同軸ケーブルでデータ転送と電源供給の両方を行うことが可能なCoaXPress 2.0であれば、カメラとコンピュータを簡単に接続できる。また、GenIcam規格やその他の一般的なビジョン規格にも準拠しているため、カメラソフトウェアをスムーズにセットアップできるなど、ソフトウェアの運用面から考慮しても大きなメリットがある。

4)正確な同期(高度な制御が可能)
 フレームグラバとカメラを上手く組み合わせれば、複数のカメラを搭載したシステムでもレイテンシー(遅延)を抑え、カメラを正確に同期させることができる。

5) 豊富な選択肢で低コストなシステムを簡単に構築可能
 CoaXPress 2.0を導入すれば、構成機器の選択肢が増え、ケーブルの数も削減できるため、コストパフォーマンスが大幅に向上する。特にCXP-12では、少ないコストでより多くのデータを転送できる。

CoaXPressシステムは、高フレームレート対応の高解像度カメラを複数台使用して同時撮影を行う場合に特に適している。

たとえば、産業用途でベルトコンベヤ上を高速で移動している対象物を撮影し、さまざまな観点から検査を行う場合、正確な分析を行うためには、全カメラに対する精度の高いトリガと各機器の同期が必要不可欠になる。このような場面は、半導体や生産の自動化、医療、スポーツ、動作分析などの分野でよく見られる。

CoaXPress導入チェックリスト

次の①〜⑦の項目で1つでも「はい」があれば、CoaXPressの導入をおすすめしたい。

① 高解像センサの速度を最大限に発揮したいと考えているが、使用中のインタフェイスの性能が障害となっている。
② 柔軟性のない大型ケーブルが必要なインタフェイスを使用しているため、広いスペースを確保しなければならない。
③ 速度に影響を与えることなく、ケーブル長を伸ばしたい。
④ 最新の高解像度イメージセンサを搭載したカメラを使用したい。
⑤ データケーブルを使用して複数の高解像度カメラを正確に同期させたい。
⑥ アナログカメラからデジタルカメラに移行したい。
⑦ 撮影時にCPUにかかる負荷を軽減したい。

まとめ:CoaXPressが切り拓くデータ通信の未来

発表当初から約10年の時間をかけてCXP-1からCXP-2へと進化し、1チャンネル当たり最大6.25Gbpsの転送速度で市場に存在感を示したCoaXPress規格は、その後CXP-6まで性能が向上し、コストも削減された結果、業界で定評の高いCameraLinkに匹敵する競争力を有するまでになった。

さらに、2倍の転送速度でカメラの帯域幅を倍増させることが可能なCoaXPress 2.0もまもなく発表される予定であるなど、CoaXPressは前述した通りその性能、シンプルさ、信頼性により、高速撮影が求められる高度な用途においてさらなる威力を発揮することが期待されている。

※映像情報インダストリアル2019年3・4月号より転載

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