新型コロナウイルスの感染拡大との戦いは、世界中で最重要事項となっている。国民にワクチンをできる限り速やかに供給するための取り組みが、世界各地で行われている。
しかし、世界中で 1 人 1 回接種するとしておよそ 80 億回分を用意するのは、簡単なことではない。ガラス製容器は、数十億回分ものワクチンを供給できるかどうかの決定的な要因である。世界で毎年約 50 億本が製造されている。
現在容器メーカは、サプライチェーンで文字通りボトルネックにならないように、生産を急ピッチで進めている。しかし、医療レベルのワクチン容器は標準的なガラス管ではない。リム付ボトル、ねじ口びん、アンプルなどは、特殊なホウケイ酸ガラスで製造されており、それに合わせた生産ラインが必要である。
化学干渉によってワクチンに影響が及びかねないので、容器と内部液体との反応を防ぐ必要があります。どれほど微細でも傷、ひび、亀裂があると、バッチ全体が使用できなくなり、充填プロセス中のラインが汚染され、さらには操業停止に至る可能性さえある。
メーカに寄せられる要求は多大なものである。ただ大量の製品を迅速に生産するというだけではなく、とりわけ厳しい高品質の基準を維持する必要がある。同時に、生産能力の増大にも、多大な時間とコストがかかるものである。
そこで登場したのが、バート・ケーニヒスホーフェン (ドイツ) の会社が開発した、ワクチン容器を検査するための、コスト効果に優れ、容易に統合でき、極めて信頼性の高いソリューションである。Isotronic GmbH はガラス管自動検査システム VialChecker を開発した。uEye CP カメラファミリーの IDS 産業用カメラが、寸法および表面検査の画像処理コンポーネントとして使用されている。
用途
ワクチン容器の容量は通常、2~100 ml である。平均して高さは 45 mm、幅は 11.5 mm です。保管や輸送時、さらには高温・低温時にも、必要とされる安定した状態を維持するため、この用途にはホウケイ酸ガラスを使用される。
貴重な内容物向けの小型容器には要件が課せられる。それと同時に、最短の時間で大量のワクチンを今生産しなければならない。必要となるのは、欠陥検出による非常に迅速な品質管理である。それはどのような仕組みなのだろうか。
まず、高解像度センサを搭載した高性能カメラにより、高フレームレートを実現する。そして、IDS uEye CP ファミリーの GigE 産業用カメラと、産業用途のタッチスクリーンモニタ、制御キャビネット、各生産システムへの接続、インテリジェントなソフトウェアを組み合わせる。
VialChecker は、ワクチン容器の寸法および表面を自動検査するオールインワンの検査システムの名前で、2 つのバージョンがある。寸法の適合性は “VialChecker Geometry” で、各容器の表面の欠陥検査は “VialChecker Cosmetic” でチェックする。欠陥の検査は、ジオメトリ検査の一部として使用したり、別のシステムとしてさらに要求の厳しいタスクを実行したりできる。
VialChecker Geometry には 50 を超える寸法チェックが含まれ、最大測定精度 0.01 mm で標準および非標準のガラス管製品のテストを実行する。強力なカメラを活用して、ひび、キズ、欠け、含有物、汚れなどの欠陥を、0.1 平方ミリの精度で検出する。インテリジェントなソフトウェアによって、欠陥の詳細を正確分析し、分類できる。
容器が形成された直後や、パッケージングの直前など、テストは製造プロセスのさまざまな時点で実施される。システムでは通常3~8 台のカメラに対応するので、生産ラインに沿って異なる測定ステーションを設置できる。
「ガラス厚を測定するなど、お客様の要件に応じて、適切なセンサやカメラをシステムに指定または追加します」と、Isotronic の COO である Valentin Mayer-Eichberger 氏は説明する。「9 台以上のカメラが必要な場合、複数のコンピュータを操作に加えられます」 たとえば、横向きに回転するガラス管やガラスの底面を観測して、高解像度画像を提供する。
カメラは回転ごとに 20 枚以上の画像を撮影し、VialChecker は毎分 120 本の容器を非常に高い精度でチェックする。最大精度は寸法テストでは 0.01 mm、外観テストでは 0.1 平方ミリである。
遅延が短いリアルタイムの処理に加えて、システム操作の詳細なログがある。信頼性の高いソフトウェアなので、製品が形状面での仕様に準拠し、欠陥がなく、品質要件に適合させることができる。
要件および検査タスクに応じて、測定ステーションには異なるカメラモデルが必要になる。現在、Isotronic では主に IDS カメラファミリー GigE uEye CPを使用している。
広範なピクセル前処理で機能が最大限に発揮され、120 MB 内蔵画像メモリを画像シーケンスのバッファリングに利用できるので、VialChecker などのマルチカメラシステムに最適である。PoE (Power over Ethernet) で GigE のフル速度でデータを転送し、ケーブル 1 本で 100 m まで動作できる。
推奨されるモデルの 1 つが 2 メガピクセル CMOS センサ搭載の UI-5250CP-M-GL で、IDS のポートフォリオのの中でも最も感度の高いセンサである。モノクロとカラーの 2 種類があり、卓越した光感度という特徴がある。さらに、各種の切り替え可能なシャッターモデルがあり、移動する物体を実物どおりに撮影し、ノイズが極めて少ない録画を実現する。
「ガラス表面の欠陥をすばやく確実に検出するためには、特に重要です」と Valentin Mayer-Eichberger 氏は IDS の uEye カメラを選んだ理由を説明する。このため、複数の特性を同時にチェックしたり、パラメータを変えて露出して AOI を取得したりすることができる。
小型ながら強力で、フレームレート 52 fps を実現し、生産ラインに沿ってさまざまな検査タスクを高速で実施できる。「このシステムでは高速で処理することができ、最大で毎分 120 サイクルを処理できます」と Valentin Mayer-Eichberger 氏は請け合う。カメラの卓越した性能はもちろんであるが、他にも重要な働きがある。
ソフトウェア
IDS カメラは C++ を使用して直接システムに接続される。顧客の企業専用に開発されたソフトウェアアルゴリズムで欠陥を検出し、モニタにエラーメッセージを出力する。
「良品と不良品を報告する測定システムだけでなく、各製品の品質を記録し、経時的に統計を表示するシステムが実現しました。機械の調整担当者はこれを使用してすべてが正しいかをチェックし、容器がうまく調整されていることを確認します」
Isotronic ソフトウェアには、顧客のニーズに合わせて開発された、使いやすくユーザに配慮したインタフェイスが搭載されている。さらに、VialChecker はリモートサポート向けに最適化され、継続的にアップデートとソフトウェア改善が施される。
Valentin Mayer Eichberger 氏は次のように確信している。
これはダイナミックで持続可能なシステムの基礎です。欠陥分類などの要件の厳しいタスクに機械学習を使用します。大量のデータを処理するためのオンサイトまたはクラウドベースのソリューションや、詳細な分析およびプロセス最適化は、サービス範囲の一部です。
たとえば、欠陥が起きる頻度を分析し、工具の摩耗を監視して警告を発することができます。生産監視のクラウドサービスの範囲は幅広いものです。生産の終了時には、品質尺度ごとにグラフを計算します。測定システムの受け入れとして、測定精度の認定書を発行できます。
今後の予定
専門家は、ワクチン容器へのグローバルな需要は、今後 2 年間で 10 ~ 20 億本にまで増加すると予測している。大手ワクチンメーカの1社である AstraZeneca の責任者は、次のようにパンデミックについて早期に警告していた。
「世の中には十分な量の容器がありません」世界中のワクチン容器メーカは、貴重な液体を保護するガラス容器の生産を急ピッチで進めている。この貴重な液体を適切に保護するため、極めて厳しい品質要件を保証する高性能の試験システムがこれまで以上に必要になる。
「さらに、この業界は全般的に成長しており、アジア地域からの需要が伸びています。これはパンデミック以前からの傾向です」と Valentin Mayer Eichberger 氏は語る。VialChecker のようなシステムにとっては、格好の顧客である。ワクチンのサプライチェーンにおいてメーカがボトルネックとならないようにする。
■問い合わせ
アイ・ディー・エス株式会社
TEL:03-6260-0833
E-mail:apacsales@ids-imaging.com
https://jp.ids-imaging.com/
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