食品検査が“3D”で変わる

点から面そして立体へと測定技術は進化している。ジック社はいち早く、実ラインで運用可能な3D計測技術を開発し、食品検査においても多くの適用事例がある。本稿にてその実用例と3Dセンサ製品群を紹介する。

1.食品業界に広がる3D検査

 食品の消費者は、最初に品質の重要な指標として、製品の形状や色に注目する。多くの食品メーカで、高品質な製品を小売店に提供する過程において、様々な検査が実施されている。

たとえば、内容物の体積、面積、寸法、高さ、数量、形状、異物検知、また包装箱の形状なども検査の対象となる。万が一問題があれば、生産プロセスの欠陥を示唆しているといえるかもしれない。

検査を行うためのデバイスとして、光電センサ、距離計、変位センサ(1D)がよく使われている。色の違いやコントラストによって検査を行う2Dカメラも使われるようになってきたが、そこまで久しくはない。

ジック社ではいち早く2D計測技術を取り入れただけでなく、すでに、3D計測製品を数多く提供している。それらは、自動車、タイヤ、物流、エレクトロニクス業界等、様々な分野で使用されている。

食品業界においても次々に導入が始まっており、点から面、面から立体計測する技術が確立されつつある(図1)。

図1 食品検査は点から面そして立体へ

2.何ができる? 事例から見る3D計測

では、いったい3D計測で何ができるのだろうか。3D計測は色に影響されず、広範囲で対象物を立体的に捉えることができる。今日までに、距離計や2Dカメラを複数台使用して、何とか対象物の立体を捉えようとする試みはあった。

しかし、コスト高になるだけでなく、システムが複雑になることが多く、敬遠されがちであった。3Dセンサはそのような問題を一気に解決してくれる。次にいくつかの適用事例を示す。

2.1 切り身切断プロセスの最適化
 形状および体積の測定により、肉などの食品における切断プロセスを最適化する(図2)。これにより、廃棄物と切断コストが削減される。

図2 切り身切断のための3D計測

全体の体積値から、どこを切断すれば均等な体積をもった切り身ができるのかを、3Dセンサは瞬時にそれを計算し、カッター制御装置に支持を与えている。

あらゆる形状をもった対象物であっても、最適な切断が実現される。また、ステンレス製ハウジングにより、食品業界の衛生要件に適合し、高い頑健性が要求される洗浄にも耐えられる。さらに、コンパクトなハウジングに加え、画像処理、照明、機能も備えている。

2.2 ペットボトルのキャップ検査
ペットボトルの場所を特定し、キャップが正しく取り付けられていることを確認する(図3)。

図3 ペットボトルのキャップ検査

多数のボトルタイプに対応するために、ボトルの一部を参照高さとして、相対的に高さ測定をすることができる。容器自体がコンベア上でわずかに傾いている場合でも正確な結果が得られる。

また、高さだけではなく、ボトル基準面との水平度を観ることによって、キャップが斜めに取り付けられていても検出することができる。

2.3 ホールケーキの品質検査
 焼きあがったケーキがベルトコンベア上を通過する際に、3D形状を高速に取得する。ケーキにへこみや大きな欠損がなく、高さ、体積、球形、直径が正しいことをチェックする(図4)。

図4 ホールケーキの検査

2.4 焼き菓子
 焼き菓子製品は形状だけでなく、焦げ目の程度を検査する必要がある。生産ライン上で不良製品を除去するために、わずか0.3mmの不良さえも高精度に検出する高速排出システムを開発した。

3D形状だけではなく、色に関するデータが取り込まれ、保存済みの参照サンプルと比較される。これらのデータ取得にはジック社の先端CMOSイメージセンサが搭載されたColorRangerが用いられている(図5)。

図5 3D形状と焦げ目度合いの同時検査

「不適切」と判定され場合は、空気ノズルが作動し、圧縮空気によって不良品がベルトから押し出される。同時に、データ保存および統計的な解析が随時行われ、焼き菓子製品の破損や過剰な焦げ目などの生産時の不良の発見が可能となった。

2.5 ピッキングロボットとの連携
 今日の食品材料のピッキングは、生鮮食品や最終的な包装形態でも、高度な自動化が必要とされている。ピッキング用途における適用可能な範囲を拡大するために、世界的なロボット製造メーカとジックは、製造プロセスにおける製品損傷の減少を実現するソリューションを開発した(図6)。

図6 ロボットとのインタフェイス

このソリューションの基盤となるのは、ジックの3Dビジョンテクノロジと先端ロボットテクノロジである。 一般的にベルトで対象物が搬送され、それらがロボットによって仕分けや包装用にピッキングされる。

様々なサイズと厚さの対象物がランダムな位置で搬送されている場合、ロボットが自然変動に対応してそれらを正確にピッキングすることは困難である。

従来の2Dカメラでは、製品の高さと形状が変化すると、正確に位置を特定することは不可能であった。高さを含んだ形状データの情報が不足しているからである。

2Dカメラでは、色のコントラストを用いて対象物を判別するが、3D検出システムでは、高さと体積の測定に基づいて判別する。

対象物と背景のコントラストが低い時や変化する場合、また、搬送ベルトの幅が広くて2Dカメラの位置歪みが生じる場合にも、正確かつ高い信頼性で対象物検出が可能である。

ピッキングプロセスの向上には、対象物の高さの検出が重要な要素になる。なぜなら、対象物に衝突するリスクがなくなり、ロボットが格段に素早く対象物をピックアップできるようになるからである。

さらに、オプションとして体積および凹凸などの欠陥検出も同時に行うことができる(図7)。

図7 サイズの測定(オプション)

3.3D製品ラインナップとジックのソリューション

ジック社は、あらゆるお客様のために豊富な3D製品をラインナップしている(図8)。

図8 あらゆるお客様のために

誰でも簡単に3D計測ができる3Dセンサ、プログラム可能なソフトと一体となった3Dスマートカメラ、世界最速で3Dスキャンできる3Dカメラ。どのようなアプリケーションであっても適切な3D計測器を提供できる。

また、デバイスだけでなく、光学系、検査アルゴリズム、アプリケーションソフトウェア、インタフェイスも提供しているため、お客様のリスクを最小にし、導入後の高い稼働率を担保している。

●3Dセンサ
 低価格で誰でも簡単に使えるセンサ。マウスだけで操作でき、付属の専用ソフトウェアで直感的に設定ができる。

●3Dスマートカメラ
 3Dデータ取得と分析、そして結果まですべてこの1台でできる(オールインワン)。インタフェイスにはイーサーネット、シリアル通信、デジタル出力をもっており、容易に PC や PLC に計測データや結果を出力できる。

●3Dカメラ
 世界最速で 3D 画像を取得可能。独自開発のCMOSイメージセンサを搭載し、3D計測だけでなく、カラー画像も同時に取得できる。

食品業界での全数3次元計測検査の要望が高まる中、ジック社は「3Dマシンビジョン」の特設サイトをオープンした(http://www.3Dmachinevision.jp/)(図9)。

図9 3Dマシンビジョン特設サイト

3Dセンサ、3Dカメラ、3Dスマートカメラ、3Dビジョンシステムを中心とした製品ラインナップを掲載している。また、数々の3Dマシンビジョンへの適用事例を紹介している。

3Dマシンビジョンの最新情報と、アプリケーション適用への様々なヒントを得られるようになっている。

4.まとめ

当社では3Dセンサの高速性・機能性・簡便性の向上のみならず、3D計測特有のソフト技術やノウハウを駆使して、トータル的なソリューション開発を行っている。特に食品業界においては、どこよりも先んじて、多くの3D計測を適用してきた。

今後も、誰にでも簡単に使用できるセンサ技術を開発することで、安全で高品質な食品提供に少しでも貢献していきたい。

※映像情報インダストリアル2016年3月号『食品検査」特集より転載

問い合わせ
ジック株式会社
TEL:03-5309-2115
support@sick.jp
http://www.sick.jp
http://www.3Dmachinevision.jp

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