近赤外線InGaAsカメラと ソリューション

可視光領域ではない赤外線領域に感度をもつカメラでは、人間の目や一般的なCCDカメラ、CMOSカメラでは撮影が困難なものを可視化することができる。

アートレイではこのようなニーズに応えるべく、近赤外線領域に高い感度を有するInGaAsイメージセンサを採用したARTCAM-TNIRシリーズおよび、InGaAsSbイメージセンサを採用したARTCAM-SWIRシリーズ、CMOSブラックシリコンを採用したARTCAM-130XQE-WOM、ARTCAM-092XQE-WOMシリーズを開発、販売を行っている。

本稿では、これらの製品について紹介する。

InGaAs近赤外線カメラ「ARTCAM-TNIRシリーズ」の特長

ARTCAM-032TNIR/ARTCAM-009TNIR(写真1)およびARTCAM-0016TNIR(写真2)は、950~1,700nmの近赤外線領域に高い感度を有するInGaAsセンサを採用している。

ARTCAM-032TNIRおよびARTCAM-0016TNIRの分光感度特性は図1、2のとおりである。

ARTCAM-032TNIRの解像度はInGaAsセンサ、VGAサイズで、62fpsで画像を出力できる。ARTCAM-009TNIRの解像度は320×256画素となり、228fpsと高速での画像出力が可能である。

ARTCAM-0016TNIR では 128 × 128 画素のInGaAsセンサを採用しており、258fpsの高フレームレートを実現している。インタフェイスにPCとの親和性の高い USB3.0(ARTCAM-032TNIR、ARTCAM-009TNIR)を採用している。

VBSビデオ出力を標準実装しておりオプションにてカメラリンク出力も可能である。ARTCAM-0016TNIRはInGaAsカメラとしては非常にローコストな価格帯にて、従来のモデルでは採用が難しかった用途でもご検討いただけるだろう。

また、新商品である高画素130万画素に対応したARTCAM-130SWIR(写真3)では30fpsにて高解像度の取り込みが可能である。VGAサイズで高フレームレート300fpsを実現したARTCAM-131TNIRも上市している。

写真3 ARTCAM-130SWIR

InGaAsSb(インジウムガリウム砒素アンチモン)センサを採用したARTCAM-2350SWIR、ARTCAM-2500SWIR(写真4)はそれぞれ波長帯域を1,000~2,350nm、1,000~2,500nmまでのばしたQVGAサイズの近赤外カメラである。

写真4 ARTCAM-2350SWIR/ARTCAM-2500SWIR

インタフェイスはカメラリンク出力で、近赤外分光カメラ、ハイパースペクトルカメラ等の用途に使われている。分光感度特性は図3、4のとおりである。

ラインセンサ InGaAs カメラには ARTCAM-L1024DBTNIR(1,024画素)、ARTCAM-L512TNIR(512画素)、ARTCAM-L256TNIR(256画素)、(写真5)がある。

写真5 ARTCAM-L1024DBTNIR/ARTCAM-
L512TNIR/ARTCAM-L256TNIR

また、2,048画素品ARTCAM-L2048TNIRラインセンサカメラは受注生産品である。標準で専用のビューアソフトを付属しているので、容易に近赤外線画像を取得することが可能である。レンズマウントには産業用カメラでは標準的なCマウントを採用した。

InGaAsカメラ用ビューアソフト

標準で付属する専用ビューアソフトでは、画質改善機能のほか、ゲイン設定、露光時間設定、ソフトウェアによる画像調整機能がある。また、簡易的な2次元計測機能および静止画、動画保存機能により、計測、検査のニーズにも対応できる。

主なアプリケーション

近赤外線では、その波長によりシリコンを透過する特性をもち、シリコンウェハの内部検査などの用途が可能である。また、水は赤外線を吸収する特性があり、このことから物体の水分の有無を観察する際に有利である。

天体観測や、超長距離望遠レンズを用いた撮影では、近赤外線領域では可視光に比べ、空気の揺らぎなどの影響を受けにくい特長がある。

光学フィルタ(干渉フィルタ、バンドパスフィルタ)などを用いることで、特定の波長域のみの画像を取得することも可能である。これらの特長から、主なアプリケーションとして以下が挙げられる。

・太陽電池の検査
・シリコンウェハの検査
・レーザービームの位置合わせ
・プラスチック内部の検査
・水分や水蒸気の検出
・天体観測
・果実の選別

撮影例1~5のような画像の取得が可能である。

撮影例5 プラスチック容器内の水

InGaAsカメラの主な仕様

ARTCAM-130SWIR/131TNIRの主な仕様は表1、ARTCAM-032TNIR/009TNIR/0016TNIRの主な仕様は表2、ARTCAM-2350SWIR/2500SWIRの主な仕様は表3のとおりである。

表1 ARTCAM-130SWIR/131TNIR仕様

表2 ARTCAM-032TNIR/009TNIR/0016TNIR仕様

表3 ARTCAM-2350SWIR/2500SWIR仕様

USB2.0 CMOS近赤外線カメラ「ARTCAM-130XQE-WOM、ARTCAM-092XQE-WOM」の特長

ARTCAM-130XQE-WOM、ARTAM-092XQE-WOM(写真6)は、ブラックシリコンCMOSセンサを採用した近赤外線カメラである。

写真6 ARTCAM-130XQE-WOM/ARTAM-092XQE-WOM

400~1,200nmと可視光から近赤外線に感度がある。分光感度特性は図5、6のとおりである。ARTCAM-130XQE-WOMの解像度は、1,280×1,024でフレームレートは30fpsである。

イメージサイズ1インチで感度は40V/Lux-secと高感度であり、ソーラーパネル等のEL発光の観察に使用可能である(写真7)。映像出力のインタフェイスにはPCとの親和性の高いUSB2.0を採用している。

写真7

ARTCAM-092XQE-WOMは1/2インチサイズ、解像度1,280×720、感度は14.99V/Lux-secとなる。ビューアソフトが付属し、容易に近赤外線画像を取得することが可能である。レンズマウントには産業用カメラでは標準的なCマウントを採用した。

CMOS近赤外線カメラの主な仕様

ARTCAM-130XQE-WOM、092XQE-WOMの主な仕様は表4のとおりである。

表4 ARTCAM-130XQE-WOM、092XQE-WOM仕様

CMOS近赤外線ダイレクトモニタ出力カメラ「ARTCAM-130XQE-HD3」の特長

ARTCAM-130XQE-HD3(写真8)は、ブラックシリコンCMOSセンサを採用した近赤外線ダイレクトモニタ出力カメラである。400~1,200nmと可視光から近赤外線に感度があり、分光感度特性は図7のとおりである。

写真8 ARTCAM-130XQE-HD3(リモコン付属)

図7 ARTCAM-130XQE-HD3の分光感度特性

ARTCAM-130XQE-HD3の解像度は、1,280×1,024でフレームレートは30fpsである。出力はHD-SDI、VBSアナログ信号、デジタルモニタ出力が標準実装されており、各種設定はIRリモコンユニットよりOSD機能を使い行うことができる。
※別途、動画レコーディングユニットも用意あり

さいごに

弊社ではあらゆる波長域に対応するべく、可視光カメラのほか、近赤外線カメラ、紫外線カメラ、赤外線サーモグラフィ等を製品化してきた。今後も非破壊検査などのニーズに対応する製品を、ユーザーが利用しやすいインタフェイスで開発、製品化していく所存である。

※映像情報インダストリアル2019年7・8月号より転載

問い合わせ
株式会社アートレイ
TEL:03-3389-5488
E-mail:artray@artray.co.jp
http://www.artray.co.jp/

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