自動車産業向けに開発した 次世代ハイスピードカメラ3機種と 新発想モーションキャプチャシステム

自動車開発現場では、ハイスピードカメラを使った撮影、計測が必要不可欠になっているが、昨今、複雑・高度化する開発環境の中で、より高精度で、より効率的な計測ができるシステムへの対応が求められている。

そのようなニーズに応えるべく、株式会社フォトロン(以下、当社)で新たに開発したハイスピードカメラとモーションキャプチャシステムの特長を紹介する。

超高感度ハイエンドハイスピードカメラ

低炭素社会の実現に向けて世界各地で排ガス規制が強化される中、自動車エンジンの熱効率向上を目指す研究が進められている。

特に、エンジン燃焼の解析にはハイスピードカメラは必要不可欠となっており、より高感度で高速・高解像度に撮影できるカメラのニーズが高まっていた。

そこで開発した新製品のハイスピードカメラ「FASTCAM Nova」(写真1)は超希薄燃焼の撮影に耐えうるモノクロISO 64,000、カラーISO 16,000 という超高感度性能と、100万画素で12,800コマ/秒の高速撮影性能を併せ持ち、さらに従来同等性能の旧モデルより筐体体積を約1/3、質量を約1/4というコンパクトサイズを実現した(写真2)。

写真1 FASTCAM Nova S12

写真2 120×120×217.2mm、3.3㎏のコンパクトサイズ

これにより、これまで撮影が難しかった希薄燃焼のデータ取得に加えて、解析に掛かる手間や時間を削減することがでるため、燃焼解析分野で広く採用が進んでいる。※ISO 12232 Ssat Standard

衝突安全試験用ハイスピードカメラ

乗員保護や歩行者保護などの安全基準が強化される中、カーテンエアバッグやセンターエアバッグの研究開発が重要視されている。

衝突安全試験でのカーテンエアバッグ展開時は、車室内からダミーの挙動を鮮明に撮影する必要があるが、高解像度のカメラは筐体が大きいため設置が困難で、小型のカメラは解像度が低くて鮮明に撮れないという課題があった。

また、ヨーロッパで実施されている自動車安全テスト「Euro NCAP」の「ファーサイドの側突試験」では、スレッド上に6式のハイスピードカメラ設置が規定されているため、多数のカメラの設置や制御の利便性向上が求められていた。

当社では、このようなニーズに応えるべく、新開発した268万画素(1,920×1,400画素)の高速高解像度イメージセンサを搭載した超小型のカメラヘッドを開発し、さらに1台のメインユニットに最大6ヘッド接続して完全同期撮影できる画期的なハイスピードカメラ「FASTCAM MH6」(写真3)を開発した。

写真3 FASTCAM MH6

カメラヘッドはシートの下など狭い箇所にも設置可能な35×35.4×35.4mmの超小型サイズで、カメラケーブルはφ5mm、最少曲げR50mmの高屈曲仕様で、最長10mまで延長できるのでフレキシブルな設置が可能となっており、レンズとカメラヘッドを固定する耐Gブラケットも標準添付されている(写真4)。

写真4 耐Gブラケットを装着したカメラヘッド

また、多くの作業と費用が掛かる衝突安全試験での貴重な撮影データを確実に保護するため、撮影データを内蔵SSDへ自動保存する機能と、万一の電源遮断時でもキャパシタから電力が供給され不揮発性メモリに自動コピーされる2重バックアップ構造でデータを保護できるようになっている(写真5)。

写真5 電源遮断時のデータフロー

新開発のハイスピードカメラ「FASTCAM Mini CX」(写真6)は耐衝撃性能を有した小型筐体にもかかわらず、Wi-Fi無線機能や、内蔵バッテリー、CFastカードスロットを搭載したユニークな多機能モデルとなっている。

写真6 FASTCAM Mini CX

撮影性能はFASTCAM MH6と同様の高速高解像度センサを搭載しており、FULL HD解像度で1,000コマ/秒の撮影可能である(写真7)。

写真7 FULL HD解像度

こちらは1台のカメラでオンボード、オフボード撮影を行いたい場合や、遠隔無線コントロールによる天吊り撮影などに有効で、FASTCAM MH6と組み合わせることで、撮影の利便性がさらに向上する。

新発想モーションキャプチャシステム

ハイスピードによる撮影に加えて、オフセット衝突時においてはダミーの動きが回転を伴うため、3次元、あるいは6自由度での解析ニーズが高まっている。

また、人間工学の観点から、自動運転でドライバーが快適に運転できるかを計測するニーズも増加している。そこで開発したのがカメラ1つ、マーカ1つから6自由度の位置・姿勢計測が可能なモーションキャプチャシステム「6D-MARKER」(写真8)である。

写真8 6D-MARKER

このマーカには上下左右に特殊な加工が施されており、従来のARマーカ技術と比較すると正面撮影時では10倍以上の高精度の値を出すことができる。

また、マーカは挙動計測点だけでなく、座標原点に用いることも可能なため、カメラが振動などで揺れてしまっても、座標原点のマーカが視野に収まっていれば計測することが可能だ。

省スペースで簡易にダミーやドライバー、各自動車パーツの挙動を計測したいシーンでの活躍が期待されている(写真9)。

写真9 ドライバーの挙動解析

まとめ

多様化する自動車の開発現場において、ハイスピードカメラを使った可視化と計測は今後もより一層の性能アップが期待されている。

当社では、今後もより高いレベルでの計測システムの開発を進めていき、より安全な車社会に貢献できるよう尽力していく所存である。

※映像情報インダストリアル2019年7・8月号より転載

問い合わせ
株式会社フォトロン
TEL:03-3518-6271
E-mail:image@photron.co.jp
https://www.photron.co.jp/

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