株式会社Rist(以下Rist)は、外観検査装置組み込み専用のAI開発ツール「RPipe-Image」の最新バージョン「RPipe-Image ver.2.0」を、2023年6月1日(木)より提供開始する。
「RPipe-Image」は、外観検査装置に組み込むことを前提に開発された、画像AIモデルの学習・評価・推論を行うソフトウェア・ツールである。近年、製造業の業界内、特に国内の検査機器メーカにおいて、外観検査装置への組み込みAI開発の内製化が活発になっている。
創業当時から製造業における外観検査AIに多数の導入実績を持つRistは、上記を背景に、これまでの技術と知見を活かして「RPipe-Image」を開発し、2022年5月にベータ版、10月に正式版のリリースを行った。
「RPipe-Image」の最新バージョン「RPipe-Image ver.2.0」には、従来の機能に加え、細かい調整を要するチューニング作業の省略が実現できる高精度パラメータセット「Preset(高精度チューニング)」や、検査機への組み込みを容易にする「ONNX出力機能」など、企業によって異なる開発環境や開発条件を想定した機能が追加されている。
これらの機能を活用することで、企業の開発者はより迅速に正確な機械学習モデルを構築することができる。
RPipe-Image ver.2.0のアップデート内容
1.複数の撮像画像から判定する「マルチイメージ機能(分類)」の追加
2.未知の不良にも対応する「Deep Metric Learning機能」の追加
3.高精度なAIモデルを学習できる「Preset(高精度チューニング)」の追加
4.著作権問題を回避する「独自ベースモデル(大規模事前学習済モデル)」の追加
5.検査機への組み込みを容易にする「ONNX出力機能」の追加
上記機能に加えて、今後さらにアップデートを行っていく予定である。
今回のアップデートの詳細については「RPipe-Image」サービスページを参照。
画像AI学習における著作権保護の問題について
現在の日本の著作権法には、情報解析を目的とした著作物利用を認める内容が記載されているが、近年、AI学習に利用する画像データの権利確認や、プライバシー保護の重要性が高まっている。
また、日本国外の国や地域によっては、日本より著作物利用に関する法規制や見解がより厳格な場合もある。つまり、日本で作られた外観検査装置を海外で販売・利用する際に問題が出てくる可能性があると言える。
独自のベースモデル開発に株式会社アマナイメージズが提供する画像データ100万枚を使用
上記の課題への一つのアプローチとして、Ristはストック素材事業国内最大手企業で、ビジュアル権利の総合カンパニーとして活動する株式会社アマナイメージズが取り扱う著作権・肖像権などの権利確認処理済の画像データを100万枚使用。
安心・安全なAI教師データによる「RPipe-Image ver.2.0」のベースモデル(大規模事前学習済モデル)を独自開発し、今回のアップデートに組み込んだ。
一般的に画像AIのモデルは、「1000カテゴリ・100万枚以上の画像データを学習済のデータセット」や、「オープン化されている大規模事前学習済モデル」を活用して開発することで、画像学習にかかる時間やコストを大幅に削減している。
しかし前述のように、これらのデータセットや大規模事前学習済モデルには、AI学習に利用する画像データの権利確認やプライバシー保護についての問題が指摘されることもある。
そこで、「RPipe-Image ver.2.0」では、株式会社アマナイメージズが取り扱う画像のみを使用し、すべての画像を一から学習した独自のベースモデル(大規模事前学習済モデル)を開発した。
Ristには、世界最大級のデータ分析プラットフォームKaggleのコンペティションで優秀な成績を収めている世界最高クラスのAIエンジニアやデータサイエンティストが多数在籍しており、今回のベースモデル(大規模事前学習済モデル)の開発に携わっている。
膨大な画像データの学習には、「NVIDIA A100」を8基搭載したハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)を使用した。高い技術を持ったAIエンジニアと、高い処理能力を持ったサーバを使うことで、Rist独自の高性能なベースモデル(大規模事前学習済モデル)の開発を実現した。
今後の展望
Ristは、「RPipe-Image ver.2.0」の提供を通じて、工場へのAI外観検査装置導入の動きを促進し、お客様の品質向上・生産性向上を支援する。また、今後も顧客のニーズに合わせた機能追加や、課題を解決するためのAI技術の開発に力を入れていく予定である。
■問い合わせ
株式会社Rist
https://www.rist.co.jp
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