USB 3.0のさまざまな データ伝送方法

市場に登場してから4年が経ち、今やマシンビジョン業界において確固たる地位を築いているUSB 3.0インタフェイス(別名:USB 3.1 Gen1) 。その成功の過程においては、USB3 Vision規格が重要な役割を果たした。USB3 Vision規格では、USB 3.0ケーブルに関して、プラグの機械的な仕様しか定めていない。USB 3.0の最大ケーブル長は、リリース当初より3mが限界であると言われていたため、その悪い印象が今でも残っている。しかし、このような制限は一般的なUSB規格に完全準拠して設計されたパッシブケーブルにのみ当てはまるものであり、マシンビジョン業界にとっては厳しすぎる仕様といえる。実際のところ、USB 3.0の場合は、パッシブケーブルの最大ケーブル長を8mにすることができる。また、USB 3.0はデータの光伝送やアクティブ伝送にも対応しており、ケーブル長をさらに伸ばすことも可能である。本稿では、USB 3.0の様々なデータ伝送方法を解説するとともに、用途に応じた方法を提案する。
※ USB 3.0とUSB 3.1 Gen1はまったく同じものを指すため、本稿ではわかりやすいように「USB 3.0」と表記する。

データのパッシブ伝送

 USB 3.0用のパッシブケーブルは、特別なシールドが施されたデータ伝送・電力供給用の銅芯で作られており、増幅回路などの能動素子は内蔵していない。産業用途に使用されるパッシブケーブルには、ツイストペアケーブルやTwinaxケーブルがある。両者はデータ線の質と配線に違いがあり、ツイストペアケーブルのほうが不具合は少ない一方で、Twinaxケーブルは長距離伝送に適しているという特長がある。また、Twinaxケーブルは処理の質こそ高いものの、その分コストがかさむため、あまり普及していない。USB 3.0データケーブルを産業用途で使用するには、伝送信号の共振を最小限に抑えたり、信号が確実にホストに到達するように各芯のランタイムの差を低減したりするなど、データの伝送品質に影響する様々な要素を排除する必要がある。

また、ケーブル材にプラグを取り付ける際には、伝送部分のインピーダンス不連続性を抑制することが重要になるほか、十分な太さの導体を使用しなければならない。電源は5V・900mAを安定して供給することが求められる。ケーブルの太さについては、最低でもAWG24、可能ならAWG22以上であれば、USB 3.0によるデータ伝送における銅芯のコストパフォーマンスを向上させることができる。最後に、芯材に汚れがないかどうかも確認したい。
上記の事項はいずれも、画像処理を行ううえで非常に重要である。これらをおろそかにすると、USB 3.0の仕様上の性能を最大限まで発揮できなくなるばかりか、システムの安定性が失われ、画像損失などにつながる恐れもある。

【芯の太さとデータ伝送時の共振の関係性について】
パッシブケーブルは芯材を太くすればするほど、データ伝送時の共振が少なくなると誤解されがちである。しかし、これは必ずしも正しいとは限らない。伝送周波数が高くなると、周波数に応じて導体に流れる電流が変化する表皮効果と呼ばれる現象が起こる。この現象では、周波数が高くなるにつれて導体表面の電流密度が高くなるため、ある一定の周波数を超えたあたりから、電流がケーブルの周辺に集中するようになる。表皮効果が起こると、たとえケーブルが太くても、芯中心部の伝導性が十分に活用されない。

データのアクティブ伝送

USB 3.0用のアクティブケーブルでは、異なる方法でデータ伝送を行うことができる。アクティブケーブルには、パッシブケーブルと同じケーブル材以外に、別途信号を制御するための回路が組み込まれている(図1)。

USB3-Schema_Connection_EN

図1 一般的なカメラの接続例

性能の高いアクティブケーブルには、リドライバが使用されている。リドライバは、信号を3段階に分けて生成するようになっており、まず受け取った信号をイコライザで補償し、次に増幅させてプリディストーションを行う。そして、最後に新たな出力レベルを設定した後、元の信号と同じような状態に戻して伝送できるようにする。リドライバのメリットは、プロトコルに依存せずに動作するという点にあり、信号を完全に物理レベルで処理する。そのため、コンピュータはリドライバをカメラとホストの間にある伝送回路として検知せず、その信号生成作業を追加の変換処理として認識しない。電気信号の電圧を人工的に上昇させるブーストコンバータをリドライバと併せて組み込むことも可能だが、ブーストコンバータは追加で電力を消費するため、別途5V電源を準備する必要がある。とはいえ、現在市場に出回っているアクティブケーブル製品は、設計上まだ十分ではないため、リドライバの使用をおすすめできるのはケーブルが筐体を通り抜ける構造になっており、どうしても干渉が起きる場合などに限られる。

データの光伝送

USB 3.0用の光ケーブルは、データ伝送を行う光ファイバケーブルで作られており、別途電源線が付いているものもある。光ケーブルでは、コンバータで電気信号を光信号に変換した後に光ファイバで伝送し、伝送の最終段階で光信号を電気信号に戻す。電源線がある場合についても、2つのコンバータで制御を行い、長距離伝送を行うために電力が増幅される。電圧を大きくし、細いパッシブタイプの芯を使用すれば、電力供給を行う場合でも、大きな損失を発生させることなく伝送距離をさらに伸ばすことができる。別の方法として、光ファイバケーブルの伝送距離を最大限まで引き出すために、光ケーブルの伝送路の先端で個別に電源を供給することも可能である。また、1本のケーブルでデータの光伝送と電力のパッシブ伝送を同時に行うハイブリッドケーブルというものもある(図2)。


図2 USB 3.0ハイブリッド延長ケーブル
別途パッシブケーブルのほか、ホスト側の2 番目のUSBポートに追加の電源入力が必要。

光ファイバケーブルによる伝送は損失が非常に低く、周波数の影響も受けないため、光ケーブルには伝送路と帯域幅に関する制限がほとんどないというメリットがある。

【光ファイバケーブルの堅牢性について】
一般的な認識とは異なり、光ファイバケーブルには適切な保護が施されており、曲がりにくく、EMC対策もされている。そのため、固定用途の場合は、銅製のパッシブケーブルと同じ条件で使用できる。また、適切に設計すれば、移動用途にも対応可能。

使用上の注意

USB 3.0データケーブル(固定用途の場合)の伝送方法別の推奨ケーブル長を表1に示す。これまでの状況を見ると、USBケーブルの能動素子は、画像処理におけるデータ伝送を行えるほど技術的に成熟しているとはいえず、合計でも2本のパッシブタイプのUSB 3.0データケーブル(ケーブル長4m)の接続を確保するのが限界である。そのため、USB 3.0データケーブルの使用がおすすめできるのは、ケーブルの干渉が防止できず、きちんと設計されたリドライバがあり、パッシブタイプのTwinaxケーブルを使用しない場合に限られる。Baslerでは、8m以下の長さのパッシブケーブルから20mのスクリュー式ハイブリッドケーブルに至るまで、ケーブルに試験と認定を行ったうえで自社ブランドのアクセサリ製品ラインナップに加えている。


表1 USB 3.0データケーブル

USB 3.0、ギガビットイーサネット、CameraLink

USB3 Vision規格の登場に伴い、USB 3.0はギガビットイーサネットやCameraLinkと並ぶ重要なインタフェイスとして認識されるようになった。特にケーブル選びの観点から見ると、USB 3.0はギガビットイーサネットとCameraLinkの中間的存在となっている。USB 3.0 には、最大帯域幅380MB/秒、プラグアンドプレイ対応で導入コストが低い、伝送方法によってはケーブル長を8m以上に伸ばすことも可能といった特長がある。画像処理の世界において、CameraLinkは最大850MB/秒という広い帯域幅を誇っているが、セットアップが複雑でケーブルやフレームグラバなどのアクセサリ類も高価であるため、導入コストがかさんでしまう。これとは対照的に、ギガビットイーサネットは複数のカメラを接続することができるほか、ケーブル長も最大100mまで伸ばすことが可能だが、最大帯域幅は100MB/秒と低くなっている(表2)。


表2 ケーブル選びの観点から見るインタフェイス

一方、USB 3. 0ケーブルは伝送品質が低く、「画像が消失しました」、「カメラとホストとの接続が完全に失われました」といったエラーメッセージが表示されることもあることから、システムの信頼性や安定性が低いという印象を持たれがちである。そのため、カメラシステムを不具合なく運用するには、認証を受けた高品質なアクセサリが必要不可欠なのである。

まとめ

USB 3.0インタフェイスには、パッシブ伝送、アクティブ伝送、光伝送など、様々なデータ伝送方法がある。どの伝送方法を使用するかは、必要となるケーブル長によって異なってくる。適切なケーブルとUSB 3.0対応のアクセサリがあれば、データのパッシブ伝送距離を8mまで伸ばすことができる。また、データ伝送距離が8mを大幅に超える場合については、光ケーブルとハイブリッドケーブルが適している。USB 3.0は、今やマシンビジョン業界において必要不可欠なインタフェイスとなっており、その導入のしやすさ、広い帯域幅、コストパフォーマンスの高さにより、繰り返しになるがギガビットイーサネットとCameraLinkの中間的存在としての役割を果たしている。

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