USB3 Vision AOC

株式会社フジクラ(以下当社)は、5Gbit/sの高速信号を長距離伝送することが可能であるUSB3 Vision規格に準拠したUSB3 Visionアクティブ光ケーブルを開発した。

メタルケーブルに対し、耐屈曲性、耐ノイズ性、配線等の取り扱いのしやすさの点でも優れており、最長50mまでのカメラへのバスパワー給電に対応している。

高解像度カメラの採用が見込まれる部品実装検査装置をはじめとする各種外観検査装置をはじめ、交通・医療・セキュリティなど各種映像監視・制御システムへの適用が期待される。

背景

マシンビジョン市場では、位置決め用途や人間の目視検査の代替として多くの産業用カメラが使われ、画像処理により所望の情報を抽出することで、生産性や検査品質の厳しい要求に対応している。

産業用カメラのインタフェイス規格にはカメラリンク(CameraLink)、USB、GigE、IEEE1394などが存在し、世界的にはGigEの普及比率が高いが、日本国内ではカメラリンクが7割程度を占めている。

カメラリンクでの長距離接続および高速なクロックでの安定した伝送のニーズに応えるため、当社ではこれまでにカメラリンク規格に準拠した“光カメラリンクケーブル”を開発し、販売している。

今後、カメラの小型化やカメラの高精細高画素化が進むことで、高速・大容量での伝送需要が高まることが予想される。5Gbit/sの最大伝送速度を有しながらPCの汎用USB3.0ポートに接続して使用可能である等から、USB3.0(現 USB3.1 Gen.1)インタフェイスを有するカメラの採用が増加すると考えられる。

USB3.0インタフェイスを採用したマシンビジョン向け規格として、AIA(Automated Imaging Association)によりUSB3 Visionが制定されている。USB3 Visionは5Gbit/sの最大伝送速度を有する一方、メタルケーブルによる伝送距離規格が3mと短い。

このため長い配線が必要なシステムを実現するためには、リピータを使いメタルケーブルを多段接続する必要があり、システム構成が複雑となっていた。

リピータを使わずにケーブル1本での長距離配線を実現するため、当社は光カメラリンクケーブル開発で培った小型光実装技術を発展させ、耐屈曲性を有する、USB3 Vision アクティブ光ケーブル(USB3 Vision AOC)を開発した(図1)。

図1 USB3 Vision AOC外観

技術概要

マシンビジョン用途向けに制定された規格であるUSB3 Visionは、カメラとPCを接続し、ケーブル内は信号速度5Gbit/sの双方向伝送が可能である。PC側コネクタから出力される5Vのバスパワーをカメラに供給し動作させることができるため、カメラへは別途電源を供給する必要がなく配線を減らすことができる。

当社のUSB3 Vision AOCは、5Gbit/sの伝送信号に対応する光電気変換の回路を電気コネクタ部に一体化しており、ユーザは光伝送にともなう光コネクタの取り扱い上の注意点等を意識することなく、メタルケーブルと同じ取扱いやすさでカメラとPCに接続することが可能である。

コネクタはPC側がスタンダードAコネクタ、カメラ側がスクリューロックネジ付マイクロBコネクタである。ケーブル部は光ファイバ・メタル線の複合構造になっており、光信号伝送とカメラへのバスパワー給電に対応している。

ケーブル内部には石英光ファイバが2本、電源線が2本含まれ、ケーブル構造を工夫することで優れた耐屈曲性を実現している。本ケーブルのブロック図を図2に、USB3 Vision AOCの主な仕様を表1に示す。

図2 USB3 Vision AOCブロック図

表1 USB3 Vision AOCの主な仕様

メタルケーブルに対する優位性

当社のUSB3 Vision AOCは、メタルケーブルに対し次の点で優位である。

➀伝送距離:50mまで映像伝送が可能
➁バスパワー給電:50mまでカメラへのバスパワー給電に対応している
➂耐ノイズ性:光ファイバで通信するため外来ノイズの影響を受けにくい
➃配線のしやすさ:長尺ケーブルでありながら、外径がφ6mmと細く柔らかい

従来、USB3.1 Gen.1規格対応のメタルケーブルでは実力で数メートルの伝送が限界であり、カメラを可動して使う用途では、ケーブルベアに配線する都合上カメラとPCを近づけられずケーブル長が不足することがあった。

当社USB3 Vision AOCの最大のケーブル長である50mの伝送時の特性と、メタルケーブル(長さ5m)の伝送時の特性との比較として、画像処理ソフトを用いた評価の1例を図3に示す。カメラのフレームレート設定は 125fps である。

USB3 Vision AOCはエラーの発生もなく(図3中のErrorカウントが0)、カメラで設定したフレームレートが確保されている一方で、メタルケーブルのほうはエラーが発生し、フレームレートが57fpsに低下している。

このようにUSB3 Vision AOCは長いケーブル長でも安定した伝送特性を有し、ケーブルベアを介しての配線等で特に長距離伝送することが必要なユーザにメリットをもたらす。

図3 USB3 Vision AOCとメタルケーブルの特性比較の1例

応用例とメリット

USB3 Vision AOCは、マシンビジョン業界で必要な接続距離をケーブル1本で配線でき、5Gbit/sという高速な伝送速度を有するため、高解像度の画像処理が要求される部品実装検査装置をはじめとする各種外観検査装置や製造装置での位置決め用途への展開が期待される。

USB3インタフェイスでの接続は、一般的には配線長が数mと短いと思われがちであるが、当社USB3 Vision AOCを使用することで、長距離接続に際しリピータによるケーブルの多段接続の必要がなくなるため、装置内の配線に要するスペースの削減、工場内での装置レイアウトの自由度が向上するとともに、レイアウト設計に要する時間や付随する工事が削減できることからコスト低減も期待できる。

今後の展開

2017年3月よりお客様向けに評価サンプルの貸出を開始しており、8月より量産を開始する予定である。長距離配線が可能なUSB3 Vision AOCは、外観検査装置や製造装置だけでなく、交通・医療・セキュリティなど各種映像監視・制御システムへの適用が期待される。

※映像情報インダストリアル2017年5月号より転載

問い合わせ先
株式会社フジクラ
TEL. 03-5606-1477
FAX. 03-5606-1598
http://www.fujikura.co.jp/

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