はじめに
高機能材料市場では偏光を用いた検査が盛んに行われている 。近年、より高品質なフィルム・ガラス・樹脂成形品の生産のために、高速、非接触、非破壊、全視野、全数の検査が求められている。
株式会社フォトロン(以下、弊社)は偏光に感度をもつ高速度カメラ「CRYSTA」をコア技術とした、透明高機能材料向け検査・評価システム「KAMAKIRI」を発売し、国内外で多くの実績を重ねている 。
本記事では特にフィルム・樹脂成形品の評価にフォーカスした製品「KAMAKIRI」について、測定事例やその効果について紹介する。
KAMAKIRIへのニーズ
偏光を用いた樹脂成形品の物性評価方法の一つにクロスニコル観察がある。
この観察方法は古くから実施されている官能試験の一つであり、いまなお材料の残留応力または複屈折の二次元分布を評価する代表的な手段として、透明な高機能材料の業界では盛んに用いられている。
この試験方法では熟練者の目視によって、レンズやガラスの品質がランク分けされている。
ところが、近年樹脂成形品に求められる性能が高まるにつれ、官能試験に代わる手段として 客観的な数値を基準とした自動検査装置に対するニーズが高まっている。
また、高機能樹脂成形品は単品として用いられることよりも、固定器具などによって外力が加えられた中で光学的性能を発揮・維持することが求められるため、外力が加わった際の光学特性の動的変化を評価することも重要な評価項目である。
これまで、偏光を用いた計測手法としては、レーザを利用したワークの一点を計測する点計測タイプの装置が主流であった。
ただし、ワーク全体を測定するのに非常に時間がかかるなど全数検査を実施するにはハードルがあった。
これらのニーズおよび問題解決へ応えるために、高速度カメラ技術に新たな偏光感度を付与した偏光高速度カメラ(図1)を開発(株式会社フォトニックラティスとの共同開発)し、また、フィルムや樹脂成形品の検査・評価向けに全視野計測、動的計測が可能な検査システム「KAMAKIRI」(図2、3)を2014年に上市した。
現在においては、液晶ディスプレイ用フィルム、包装フィルム向け用フィルム、レンズ検査に多く採用され、最近では、高機能ガラス製品の検査への導入が進んでいる。
検査事例
1)ガラス基板のひずみ、成形品のアニール効果評価(図4、5)
ガラス基板のゆがみが、基板として後加工された際にそりなどの変形を生じることがある。歪の分布を確認しながら、アニール、割断、穴あけ加工などの条件出しや品質検査を行う。
2)ディスプレイ用光学フィルム、高機能包装フィルムの配向ムラ
高精細ディスプレイ用の光学フィルムでは、数mm単位の形状のムラ欠陥が注目されており、横ダンやスジムラは重要なムラ(図6、7)として可視化、検知が求められている。
二軸延伸にみられるロールの中心から端部に向かって品質の偏り(ボーイング)の制御を行うために、配向方位の可視化・定量化することが求められている(図8)。
おわりに
最近では視野サイズのカスタマイズ要望が多く、数cm程度の成形品の検査から数mサイズ程度までを評価したいなどの声に対応している。
また、電池用セパレータなど光の透過率が悪いものに対しての評価要望も高まっており、専用の画像処理アルゴリズムの開発および提供を行うことで評価を実現している。
さまざまな業界からの多くの評価ニーズが寄せられているが、年々ワークが複雑化、高度化することで、評価の技術的ハードルが高くなってきている。
弊社は、このようなニーズを大事にしながら挑戦的に取り組んでいる。本記事で紹介した製品が新しいモノづくりに活用いただければ幸甚である。
最後に、本記事において詳細な仕様の説明は省略しているため、ぜひ一度カタログを弊社ホームページから参照されたい。
また、これまで計測が困難であきらめているワークや課題があれば、当社のテストサイトでの初回無償評価サービスをぜひ利用してほしい。
株式会社フォトロン
システムソリューション事業本部 光学計測部
TEL : 03-3518-6271
E-mail: polarizing-camera@photron.co.jp
https://www.photron.co.jp/products/polarizing-cam/
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