モリテックスでは、マシンビジョンカメラのCMOS化に合わせて、高精細化されたセンサに対応した2.2μmクラスのML-XR/URシリーズ、従来の3.5μm/4.5μmクラスのSR/HRシリーズ、さらには、特定アプリケーションに特化したML-Gシリーズや交通インフラ向けのML-Tなどをリリースしている。
本稿では、多様化したイメージセンサに対応した汎用レンズ、ロボットビジョン、3D計測、交通インフラなどさまざまなアプリケーションに対応したモリテックスの最新FAレンズについて紹介する。
開発の経緯
近年、マシンビジョン用カメラはCMOS化が急速に進んでいる。CMOS化によりカメラセンサのピクセルピッチの高精細化が可能となり、高解像度化および高速化が同時に進んでいる。
最新のセンサトレンドでは、センササイズ1/1.8型でありながらピクセルピッチ2.4μm(6MPカメラ相当)や1型でピクセルピッチ2.4μm(20MPカメラ相当)などのピクセルピッチが3μmを下回る微細な素子をもつカメラが市場で多く使用され始めている。
高画素カメラでありながら、ピクセルサイズが微細化されているため、センササイズが従来と変わらない。そのため、カメラ筺体は29mm角が各社からリリースされ、レンズには高解像度でありながら、従来と同等サイズであることが求められている。
これらの要求に対してモリテックスでは、高解像度化・小型化をメインコンセプトとして各センサに合わせた汎用FAレンズおよびアプリケーションニーズに合わせたFAレンズを開発した(図1)。
センササイズは1.1型および従来の2/3型に対応し、6シリーズ全35機種のラインナップとなっている。それぞれのセンサの最上位として、1.1型ではML-MC-XRシリーズ、2/3型としてはML-M-URシリーズが高い解像力性能を実現しており、次世代のソニー社製センサ(Pregius S 第四世代)のピクセルピッチ2.74μmにも対応可能となっている(表1)。
また、すべてのシリーズが耐振性に優れた機構設計を採用しており、さらに可視光から近赤外光(波長:1,100nm)までのワイドレンジARコーティングを施している。
最新FAレンズの特長
1)高解像度と高コントラスト
モリテックスでは、200lp/mm以上の解像力をもつFAレンズとしてML-M-URシリーズ(図2)とML-MC-XRシリーズ(図3)をリリースしている。
センササイズはそれぞれ2/3型、1.1型に対応している。図4、5はそれぞれの画面位置(像高)に対するコントラスト(MTF)を示したグラフである。
レンズ中心から周辺部までのコントラストを示しており、周辺部まで解像力の低下が少なくコントラストの高い鮮明でシャープな画像が得られる。
ML-M-URは、WD500mm程度で最適な解像力が得られる汎用的なレンズであるのに対し、ML-MC-XRは、部品の精密検査やアライメントなどの近距離撮影(WD300以下)に適したレンズとなっている。
図6は極小の2Dバーコードを配列したサンプルチャートを 1 型センサ、ピクセルピッチ 2.4μm(20MP)のカメラで撮影した際の最周辺部の領域を切り出した画像である。比較画像として従来からの9MP対応レンズで撮影した画像を図7に示す。
周辺においても十分な解像力が得られていることがこれらの画像から読み取ることができる。中心から周辺まで劣化の少ない画像が撮影でき、画像計測によるアライメントや精密検査に適した設計となっている。
2)コンパクト設計
最新のCMOSセンサは、小型フォーマットサイズでありながら、ピクセルピッチの高精細化により高解像度を実現しており、高画素化に対してカメラ筺体サイズは大きく変わらない。
そのため、顧客のレンズに対するサイズ要求も従来どおりの大きさとなり、小型化を維持しなければならない。モリテックスでは、独自の光学設計と機構設計技術を凝縮し、高解像力と小型化を実現したレンズを開発した。
従来から多くのカメラメーカーがリリースしている29mm角の筐体サイズに合わせ、ML-M-URとML-M-HRシリーズでは、レンズ外径をΦ29.5mmに抑えた設計となっている。これにより、小型・高性能が要求される検査装置や、従来サイズからの切替など組込みの自由度が確保される(図8)。
3)耐振性
一般的なマシンビジョンレンズは複数の機構部品から構成され耐振性についても5G以下となっていることが多く、振動環境下では撮影時に問題が発生することがある。
最新のFAレンズ ML-M-UR/HR・ML-MC-XR・ML-Tシリーズでは、独自の機構構造を採用し、シンプルな構造とすることで耐振性10Gを実現した(図9)。表2は弊社で実施した耐振環境条件を示す。
図10に示す試験前後でのMTFの測定結果から10G振動環境下でも安定した画像計測が可能になることがわかる。なお、10Gの振動環境下では、製品に付属した止めネジで2ヵ所を固定後、ネジロックによる接着を推奨している。
ロボット3Dビジョン用FAレンズ
ロボット3Dビジョン・精密計測のアプリケーションでは、外部の振動や衝撃によって発生する光学レンズの微小な変位が検査精度の低下やキャリブレーションのズレをもたらす要因となることが多い。
モリテックスでは、これらの特殊なアプリケーションに向けたFAレンズ ML-MC-Gシリーズを開発した(図11)。
ML-MC-Gシリーズ最大の特徴は、耐振環境15G・1.1型の高画素カメラ(12Mピクセル相当)に対応し、振動や衝撃で発生するピクセルシフトを1ピクセル以内に抑えた専用設計となっている。
光学仕様は、近距離撮影(WD500mm付近)に適した設計となっており、振動や衝撃による光学レンズの微小な変位を防止するためにすべてのレンズを接着固定し、フォーカス機構部の緩みを防止するためダブルナット方式を採用している。
図12は従来構造と本構造のレンズに対して衝撃を与えた場合のピクセルシフト量を比較した結果である。
スライドテーブルに載せたカメラ・レンズおよび十字チャートにx方向の衝撃をかけ、30回の衝撃に対して十字チャートの中心位置を画像処理にて計測し、プロットとしたものである。本構造において0.3ピクセル以下のシフト量に抑えることが確認できる。
ITS(高度交通システム)用FAレンズ
自動車や鉄道などの交通インフラ・自動運転システム・ドローンのアプリケーションでは、遠距離での撮影だけではなく、日中・夜間での利用を目的に可視光と近赤外光での撮影が求められる。
モリテックスでは、これらのアプリケーションに対してML-Tシリーズの開発・販売を行っている(図13)。ML-Tシリーズは、これまで説明してきた耐振環境10Gに対応やΦ32mm小型設計に加え、可視光と近赤外光のフォーカスシフト量を補正した専用光学設計を採用している(図14)。
おわりに
近年、電子部品(エレクトロニクス分野)だけではなく、交通インフラ(ITS分野)、自動運転、ドローンなどのさまざまなアプリケーションで高画素・高解像度レンズの要求が高まってきている。
モリテックスではこれまで培ってきた独自のマシンビジョンレンズ技術を活用し、お客様のニーズにあわせたレンズの開発を進めていく。
■問い合わせ
株式会社モリテックス
TEL:048-218-2532
E-mail:moritex.sales@moritex.com
https://www.moritex.co.jp/
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