偏光高速度イメージング装置「CRYSTA」の優位性と具体的事例

比較的新しい光の要素に「偏光」がある。

偏光センサが発売されて以来、多くのメーカが偏光カメラを組み上げ販売していることは周知の事実だろう。

しかし、その具体的な優位性や応用事例はあまり知られておらず「偏光カメラは具体的にどのような活用ができるのか?」という問いを抱いた方は多いのではないのだろうか。

いや、そもそも興味が湧かない方もいるかもしれないが、本稿の都合上そういうことにして話を進めたい。

ここでは、偏光を高速度カメラと組み合わせた場合の優位性と最新の応用事例を紹介する。

優位性

高速度カメラをはじめとする一般的なCMOSセンサ は「目視に類した絵が見える」という点で非常にわかりやすい。使用する光源も、得られる絵も、直感的に理解しやすく単純な情報が簡便に得られる。

一方、偏光センサは、そのままでは有意な情報が得られない。

センサから取得される輝度情報がどのような意味を持つのか、光源から出射する光の特性とセンサへ入射する光の特性との差異として得られた情報に指向性を与える必要がある。

つまり、光源の特性を理解し、センサへ入射するまでにどのように変化するのか、を光学的に理解していないと使いこなす事が難しい 。

そこで、カメラと計測用ソフトウェアを使いやすくパッケージ化することで、「目視や一般的なCMOSセンサでは絶対に得られない」情報を容易に取得することができる。

CRYSTA StressViewer アクリルをハンマーで叩いた瞬間の内部応力伝搬の様子位相差カラーマップ、主応力方位フローマップ等を分かりやすく表示(撮影条件30,000フレーム/秒)

本稿では、弊社偏光高速度イメージング装置「CRYSTA」の優位性として「応力」と「内部構造」の2つの解析能力を紹介する。前者は「精密加工」、後者は「配向・流動異方性」という具体的な事例に応用されている。

精密加工(ご協力:長岡技術科学大学 磯部先生)

精密加工には数ミクロンから数十ミクロン程度の高い加工精度が要求され、工作機械やエンジンなどの高信頼性・高品質部品へ適用されている。

したがって、高度なものづくりにおける根幹となる技術であり、古くから理論的・解析的および実験的に検証が行われている。

実際の加工では、加工状態、すなわち応力にビビリや破壊の挙動は動的に変化する。特に、ガラスなどの脆性材料加工時には、瞬間的に亀裂の発生・進展が生ずるため、より高速度な現象となる。

一般的に、このような加工状態を測定する方法には、工具動力計が用いられる。

これは刃物台や被削材固定台と工作機械の間に設置し加工抵抗を測定するものであるが、個々の切れ刃や砥粒が、どのように応力を発生させ、被削材を加工しているかはわからない。

特に、ダイヤモンド電着砥石を用いたガラス加工における加工条件の最適化は、試行錯誤によるところが多い。

その理由は、工具動力計の計測では、いつ、どの砥粒が、どのように欠損を生じさせたかがわからなく、発生する現象も偶発的であるためだ。

一方で、このような現象に偏光を組み合わせると、破壊に伴う材料内部の応力分布を可視化し、場合によっては実験的にその応力値やその方向を定量化することが可能になる。

具体的には「光弾性則」と呼ばれる理論を用いる。

解析が可能な材料は、ガラスやアクリル樹脂といった透明材料に限定されるが、対象とする構造物のモデルをそのような材料で作製することで、同一形状における応力集中点やその分布を検討することが可能になる。

偏光高速度カメラによる加工応力の可視化(長岡技術科学大学 磯部先生ご提供)

株式会社フォトロンは、1秒間に数万~数十万コマという高速度での偏光計測が可能なカメラを製造・販売している。

光源、レンズ、解析ソフトウェアに独自のノウハウが存在しており、優れた トリガ入出力機能を駆使することによって、超音波加工の同期撮影にも成功している※1

加工現象における破壊特性(破壊靭性値や応力伝搬速度など)の理解のために 、応力の強さに比例する「位相差」と、その方向を示す「主応力方位」を高速かつ連続的に記録することが必要であるが、弊社の製品ではこの難題を高速度カメラに独自の 偏光センサを研究開発および 搭載することで解決している。

国内トップシェアメーカとして培った高速度撮影の技術やノウハウを踏まえ、新たなアプリケーションの確立に向けて開発を進めている。

※1 H. Isobe and K. Hara, “Visualization of fluctuations in internal stress distribution of workpiece during ultrasonic vibration-assisted cutting”, Precision Engineering 48, 331-337 (2017)

■本製品の詳細と「配向・流動異方性」は以下よりご覧いただける。
https://www.photron.co.jp/products/polarizing-cam/crysta-series/about/case.html

問い合わせ
株式会社フォトロン 
システムソリューション事業本部 光学計測部
TEL : 03-3518-6271
E-mail: polarizing-camera@photron.co.jp
https://www.photron.co.jp/products/polarizing-cam/

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